Access Agilent 2015年9月号

ICP-MS による乳児用調製粉乳および原材料の元素分析

John Lee
アジレント食品市場マネージャ

業界では、乳児用調製粉乳および成人用栄養食品の AOAC International 試験メソッドの確立に向けた動きが活発化しています。現在、その多くはマルチラボバリデーションおよび Official Method検討のFinal Actionという承認の過程にあります。

この活動は、Abbott Nutrition(アボット)、Fonterra(フォンテラ)、Mead Johnson(アーメッド・ジョンソン)、Nestle(ネスレ)、および Perrigo(ペリゴ) の各社をメンバーとする Infant Nutrition Council of America (INCA) (旧 International Formula Council (IFC)) から資金援助を受けています。

この資金援助により、分析メソッドのスタンダードメソッド性能要件 (SMPR) の策定プロセスに携わる専門家評価パネル (ERP) の組織が運営されます。SMPR は十分な科学的根拠に基づき、ガイドラインおよび承認のための枠組みです。業界は、SMPR準拠したメソッドの提案および要求される性能データを提出することができます。

食品分析には感度および真度の高い試験方法が不可欠

ここ数年、業界から多くのメソッドが申請され、ERP により First Action Status (試験法検討の第一段階) として承認されています。これらのメソッドの情報はすべて AOAC から公開されています。マルチラボ試験 (MLT) は、関連する AOAC 専門家パネルで高く評価されたメソッドでMLTが実施され、その一部の結果もすでに公開されています。

業界の専門家には、実用性の高いメソッドを提案すること、またそれを評価する ERP に参加することが求められます。Abbott Nutrition 社グローバルリサーチサービス、分析リサーチ & 食品安全性部門シニアリサーチサイエンティストである Lawrence Pacquette 博士は、この専門家パネルの 1 人です。

Pacquette 博士のラボが開発したメソッドは、すでにマルチラボバリデーションを実施し、良好な結果が得られました。その結果から、このメソッドは、AOAC Official Method (AOAC 法) のFinal Actionした初のメソッドの 1 つになりました。

このメソッドは、AOAC の関連 ERP により、裁判等での分析に利用できる候補メソッドとしても推奨されています。

このメソッド (AOAC Final Action Status 2011.19) は、ICP-MS による乳児用調製粉乳および成人/小児用栄養調製粉乳中のクロム、セレン、およびモリブデンの測定に関するものです。摂取推奨量と耐容上限量が大きく離れていないことから、これらの必須超微量元素による栄養強化食品の含有量の測定には、感度、真度、および精度の高い信頼性の分析メソッドが必要です。

MLT による実験結果は近々公開予定です。この記事では、Abbott 社独自のデータを表 1 に示します。この新たなリファレンスメソッド (2011.19) を用いて Pacquette 博士のラボおよび Abbott 社の他の国際ラボで分析した結果は良好に一致しています。

金属

地域ラボ (n=30)

国際ラボ (n=12)

差異 (%)

濃度(ng/g)

RSD (%)

濃度(ng/g)

RSD (%)

Cr

1053.0

1.6

1059.0

2.3

-0.6

Se

814.0

1.8

815.0

3

-0.1

Mo

1696.0

1.6

1645.0

1.7

3.0

NIST SRM 1849 (認証値付き粉乳標準試料) リファレンスサンプルの参照値 (mg/kg): Cr 1.09 ± 0.21、Se 0.889 ± 0.057、Mo 1.6 ± 0.15

表 1. 栄養補助食品中の金属 3 種類の分析に関する真度、精度、および分析ラボ間比較(異なる機関、異なる装置を用いた評価)

詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-5865JAJP およびPacquette 博士によるウェビナーをご覧ください。

ICP-MS は、製造された栄養補助食品を評価する QC ラボの多様な分析に適用できる、食品分析に最適な分析機器と分析法です。Pacquette 博士はウェビナーで、最終製品中のトータルヨウ素添加量、原材料中の As、Cd、Hg、および Pb の調査など、ICP-MS を用いた他のメソッドについても紹介しています。原材料中の金属の調査では、超微量濃度で存在する、非常に毒性の強い As、Cd、Hg、および Pb を検出できる高感度な性能が求められます (表 2)。

金属成分

内部標準

装置 LoQa (ng/mL)

直線性下限値 PLoQb (ng/mL)

サンプル PLoQ

液体 (ng/g)c

粉末 (ng/g)d

As

Te

0.016

0.02

0.5

2.5

Cd

Rh

0.009

0.02

0.5

2.5

Hg

Ir

0.011

0.02

0.5

2.5

Pb

Bi

0.015

0.02

0.5

2.5

a: 10 日間にわたるブランク SD 値から計算
b: 検量線の直線性下限と同等
c: 希釈係数 25 による PLoQ
d: 希釈係数 125 による PLoQ

表 2. 原材料中の重金属の分析結果

Pacquette 博士のラボでは、クロム、セレン、およびモリブデンを含む多元素分析メソッドも新たに開発しました。その新たな分析メソッドによる、 3 種類の金属と、比較的濃度の高い 9 種類の元素の分析結果を示します (表 3)。先駆的なサイエンティストらによる、QC ラボの生産性と信頼性向上を目指した活動における ICP-MS システムの可能性はまだ終わりではありません。

金属

NIST SRM 1849a

NIST SRM 1849b

認証値 (mg/kg)

n

全体平均 (mg/kg)

認証値 (mg/kg)

n

全体平均 (mg/kg)

Na

4150 ± 140

2

4235 ± 165

4265 ± 83

13

4324 ± 91

Mg

1578 ± 69

2

1617 ± 31

1648 ± 36

18

1640 ± 23

P

3782 ± 36

2

3990 ± 136

3990 ± 140

16

4065 ± 106

K

8860 ± 130

2

9377 ± 122

9220 ± 110

14

9458 ± 142

Ca

4900 ± 130

2

5341 ± 53

5253 ± 51

16

5352 ± 80

Cr

1.09 ± 0.21

2

1.032 ± 0.013

1.072 ± 0.032

11

1.052 ± 0.015

Mn

51.00 ± 0.53

2

48.76 ± 0.63

49.59 ± 0.97

18

48.70 ± 0.73

Fe

177.13.3 ±

2

176.14.2 ±

175.62.9 ±

17

173.52.8 ±

Cu

20.29 ± 0.43

2

19.1 ± 0.86

19.78 ± 0.26

18

19.70 ± 0.55

Zn

152.35.1 ±

2

148 ± 2.1

151.05.6 ±

15

150.82.4 ±

Se

0.889 ± 0.057

2

0.821 ± 0.023

0.812 ± 0.029

10

0.827 ± 0.015

Mo

1.62 ± 0.15

2

1.63 ± 0.003

1.707 ± 0.040

15

1.653 ± 0.020

a: 乳児/成人用栄養調製粉乳 (ラボ対照サンプルとしても使用) – 後継 SRM は 1849a
b: 乳児/成人用栄養調製粉乳 (ラボ対照サンプル)

表 3. 真度および精度の評価

アジレントの優れた高性能金属分析ソリューション

Abbot 社のラボには、7700 および 7900 ICP-MS プラットフォームを含む幅広い Agilent ICP-MS 装置が導入されています。この記事で紹介した結果に高い選択性と信頼性が表れています。それを実現しているのは、Agilent オクタポールリアクションシステム (ORS) のコリジョンセルがたらした優れた性能です。幅広いダイナミックレンジと直線性の高いレスポンスは、粉末の分析において、多数の元素でも何回も測定する必要はありません。

アジレントは、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (4200 MP-AES)、5100 ICP-OES7800 ICP-MS7900 ICP-MS8800 トリプル四重極 ICP-MS など、金属分析のための技術とメソッドを幅広く提供しています。そして、最先端のサンプル前処理製品およびソフトウェアによるサポートも提供しています。総合的な金属の測定では有機種と無機種を区別を求められる分析も生じます。そのようなケースでも、LC-ICP-MS および GC-ICP-MS ソリューションなど、アジレントのハイフネートシステムで分析できます。ぜひ、アジレントの金属分析ソリューションをご覧ください。