Access Agilent 2015年9月号

Agilent 1290 Infinity II マルチサンプラで 食品保存料をすばやく簡単に分析

Sonja Schneider, Melanie Metzlaff
アジレントアプリケーションサイエンティスト

過去数十年にわたり、食品安全性の確保に向けた食品の高速スクリーニングの必要性が着実に高まってきています。近年、飲料や食品、腐敗した肉に混入するおそれのあるフタル酸エステル類による健康への悪影響の可能性が指摘されており、これらの有害物質から消費者を守ることが課題となっています。食品のモニタリングには、従来型の高速液体クロマトグラフィー (HPLC) メソッドが、最も信頼性と堅牢性に優れた分析法として日常的に使用されています。

粒子径が 2 µm 以下 (STM) のカラムを使用する UHPLC システムにより新たな可能性がもたらされ、分析時間 1 分未満の超高速分離が可能になりました。一般に、UHPLC のサイクル時間は、サンプル注入、グラジエント、カラム洗浄、および平衡化からなります。UHPLC に自動カラム再生を組み合わせれば、カラムの洗浄と平衡化にかかる時間を節約し、全体的なサイクル時間をさらに短縮できます。自動カラム再生は 2 ポンプ構成で機能するため、一方のカラムを再生している間に、もう一方のカラムで化合物を分析することが可能です。

図 1. 1290 Infinity II マルチサンプラのポンプ移送概念図

図 1. 1290 Infinity II マルチサンプラのポンプ移送概念図(図を拡大)

1290 Infinity II マルチサンプラのポンプ移送概念図

図 1. 1290 Infinity II マルチサンプラのポンプ移送概念図

Agilent 1290 Infinity II LC のデュアルニードルオプションがスループットを向上

新たなAgilent 1290 Infinity II マルチサンプラが、分析のさらなる高速化を求める声に応えます。デュアルニードルオプションを用いて第 2 の注入ニードルを装着することで、分析時間の大幅な短縮を図ることができます。第 1 の流路で化合物を分析し、それと並列して第 2 の流路でサンプルを吸引して次の分析に備えます。これは「スマートオーバーラップ」と呼ばれます。

図 1 に、Agilent 1290 Infinity II マルチサンプラの流路図を示します。この図は、ハイスループット分析用に最適化された食品保存料の超高速分析の構成です。カラムを交互に再生するカラム再生機能と、新たな Agilent 1290 Infinity II マルチサンプラに装着された第 2 のニードルにより並列して注入を行う「スマートオーバーラップ」を組み合わせることで、分析時間を格段に短縮できます。

図 2. デュアルニードルと自動カラム再生を用いて 14 回連続して分析したクロマトグラムの重ね表示

図 2. デュアルニードルと自動カラム再生を用いて 14 回連続して分析したクロマトグラムの重ね表示(図を拡大)

図 2. デュアルニードルと自動カラム再生を用いて 14 回連続して分析したクロマトグラムの重ね表示

 

ハイスループット – ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、
2.1 x 50 mm、1.8 µm

移動相

A: 水 + 20 mM ギ酸アンモニウム、pH 4.4、B: アセトニトリル

流量

1.5 mL/min

グラジエントポンプ

0 分: B3 %、0.5 分: B60 %、0.6 分:B80 %
0.65 分:B95 %、0.7 分:B3 %

平衡化ポンプ

0 分:B3 %、0.05 分:B95 %、0.2 分:B95 %、0.3 分:B3 %

両ポンプのストップタイム

1.1 分

ニードル洗浄モード

標準洗浄

注入量

1.00 µL

ニードル選択

交互

スマートオーバーラップ

有効

スマートオーバーラップ
待機時間

0.70 分

カラム温度

40 °C

検出

260/40 nm、参照 380/100 nm、データレート 160 Hz

図 2. デュアルニードルと自動カラム再生を用いて 14 回連続して分析したクロマトグラムの重ね表示

カラム再生と並列注入によりサイクル時間を 60 % 以上短縮

デュアルニードルの高速性と堅牢性を示すために、7 種類の化合物を含む保存料標準液を用いて実験を実施しました。分析には Agilent 1290 Infinity II LC システムを使用し、カラムの平衡化と分析を並行して行いました。また、比較のため、2 本の同一カラムと第 2 のポンプを使用しました。

個々のニードル (ニードル内精度)、両方のニードルの組み合わせ (ニードル間精度)、および 2 本のカラムを交互に用いた自動カラム再生を含む構成全体について、リテンションタイムと面積精度を検証しました。図 2 は、保存料標準液を 14 回連続して分離した結果を重ね合わせたものです。リテンションタイム (RT) がほぼ一致しています。

 

カラム 1、
ニードル 1

カラム 1、
ニードル 2

カラム 1、
デュアル
ニードル

カラム 2、
デュアル
ニードル

デュアルニードルと
自動カラム再生

物質

RT
(分)

RSD
RT
(%)

RSD
面積
(%)

RSD
RT
(%)

RSD
面積
(%)

RSD
RT
(%)

RSD
面積
(%)

RSD
RT
(%)

RSD
面積
(%)

RSD
RT
(%)

RSD
面積
(%)

安息香酸

0.394

0.11

0.395

0.11

0.347

0.159

0.406

0.18

0.44

0.132

0.234

ソルビン酸

0.428

0.08

0.287

0.08

0.377

0.245

0.35

0.125

0.427

0.093

0.312

メチル-4-HB

0.476

0.09

0.283

0.052

0.361

0.15

0.377

0.077

0.427

0.074

0.273

エチル-4-HB

0.544

0.046

0.304

0.037

0.375

0.071

0.358

0.043

0.429

0.044

0.568

プロピル-4-HB

0.610

0.015

0.288

0.02

0.356

0.042

0.351

0.017

0.408

0.041

0.257

ブチル-4-HB

0.670

0.013

0.304

0.015

0.379

0.027

0.367

0.016

0.445

0.027

0.554

ブチルヒドロキシ
アニソール

0.702

0.016

0.306

0.011

0.309

0.02

0.357

0.014

0.491

0.049

0.815

表 1. さまざまな構成の精度値の詳細

表 1 は、ニードル内精度 (カラム 1 と ニードル 1、カラム 1 とニードル 2)、ニードル間精度 (カラム 1 とデュアルニードル、カラム 2 とデュアルニードル)、および構成全体の精度 (デュアルニードルと自動カラム再生) の相対標準偏差 (RSD) の計算値です。カラム 1 を用いた実験では、ニードル内面積精度の RSD は、どちらのニードルも 0.4 % 未満でした。ニードル間精度についても良好な結果が得られ、RSD は 0.45 % 未満でした。2 つの注入および流路を含む構成全体では、2 本のニードルを使用し、2 本のカラムを交互に用いるためばらつきが生じます。このばらつきを考慮しても、面積精度の RSD は、最後のピークの 0.815 % を除いてすべて 0.57 % 未満で、優れた結果が得られました。リテンションタイムの RSD は、溶出の早い化合物で 0.25 % 未満、溶出の遅い化合物ではさらに低い 0.08 % 未満となり、いずれも満足できるものでした。

図 3. 100 回注入時の時間短縮による超ハイスループットの実現

図 3. 100 回注入時の時間短縮による超ハイスループットの実現(図を拡大)

図 3. 100 回注入時の時間短縮による超ハイスループットの実現

図 3. 100 回注入時の時間短縮による超ハイスループットの実現

次のサンプルの並列注入と並列カラム再生により、全体的なサイクル時間は 60 % 以上短縮されました。図 3 に示すように、100 回の注入で、サイクル時間を 260 分 (連続分析) から 110 分 (オーバーヘッド時間を含まない) まで短縮できました。実際の分析時間には、検出器の平衡化、データの保存、およびソフトウェアに関連するその他のプロセスによるオーバーヘッド時間が加算されます。これらのオーバーヘッド時間を考慮しても、全体的な時間短縮の割合は変わらず、全体で 60 %を超える時間短縮が実現されています。

幅広い高性能 LC、HPLC、および UHPLC ソリューションポートフォリオが
食品分析をサポート

食品保存料の分析に関する今回の実験結果から、カラム再生の切り換えと、第 2 のニードルによる並列注入を用いることにより、全体的な分析時間を 60 % 以上短縮できることがわかりました。リテンションタイムと、特に面積精度は、インジェクタの品質指標となる重要なパラメータです。これらのパラメータについて、ニードル内とニードル間、およびカラム内とカラム間で優れた分析結果が得られました。今回の実験で使用した、Agilent 1290 Infinity II マルチサンプラでデュアルニードルオプションを用いた構成は、食品のモニタリング実験のハイスループット分析に最適で、高い信頼性も備えています。アジレントでは、食品分析のあらゆるニーズにお応えできる液体クロマトグラフィー、HPLC、および UHPLC ソリューションを幅広く取り揃えています。詳細については、アジレントの担当者にお問い合わせください。