合成オリゴヌクレオチドは、ウィルス感染症や癌など、さまざまな疾病の将来性のある治療薬として新たに使用されるようになりました。治療への応用に向け、研究者は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉 RNA (siRNA)、アプタマなどのいくつかの核酸に注目しています。
ただし、さまざまな不純物 (出発物質内の製品関連不純物、および連結反応時の不完全なキャッピングにより生じる不純物) を同定して除去し、また合成後処理をモニタリングする必要もあります。そのため、オリゴヌクレオチド治療薬の開発および製造において、不純物の分離と同定が可能な分析メソッドの確立が重要な課題となります。
オリゴヌクレオチドの LC 分離に適した方法の探究
トリチルオンオリゴのイオンペア逆相分離は、比較的簡単に実行できます。このメソッドでは、dMT 基が結合したままの全長ターゲットオリゴを、脱保護された不完全配列から分離します。得られる分析情報が限られているため、一般には精製メソッドとして考えられています。
代わりに実行できるトリチルオフの脱保護オリゴのイオン交換分離メソッドでは、オリゴの主鎖上の負電荷を利用して分離を促進します。短鎖オリゴは良好に分離しますが、鎖長が長くなるにつれて分離能は低下します。また、この手法では水溶性溶離液を使用しますが、オリゴは高帯電性であり、カラムからの溶出に高濃度の塩を必要とするため、LC/MS には適していません。
最後に、トリチルオフの脱保護オリゴのイオンペア逆相分離は、有機溶媒と、TEAA (酢酸トリエチルアンモニウム) または TEA-HFIP (トリエチルアミンとヘキサフルオロイソプロパノール) などの移動相添加物を利用して、オリゴヌクレオチドの負帯電性リン酸ジエステル主鎖とのイオンペアを形成します。高性能カラムを使用すれば、非常に明確な分離が可能です。また、移動相に TEA-HFIP などの揮発性成分を用いるメソッドは LC/MS に適しており、オリゴヌクレオチドの構造および配列の特性解析に有効な情報が得られます。
表 1 に、液体クロマトグラフィーによるオリゴヌクレオチド分析の方法の一部をまとめています。
分析手法 |
オリゴ |
備考 |
---|---|---|
イオンペア逆相 |
トリチルオン |
不純物の分離能は限られているが優れた生成手法 |
イオン交換 |
トリチルオフ、脱保護 |
短鎖オリゴは良好に分離、MS との互換性なし |
イオンペア逆相 |
トリチルオフ、脱保護 |
不純物を良好に分離、MS との互換性がある。高性能カラムが必要。 |
表 1.オリゴヌクレオチドの LC 分離のオプション
Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムは、TEAA または TEA-HFIP のいずれかの移動相を使用するトリチルオフの脱保護オリゴのイオンペア逆相分離向けに設計され、前述の課題に対応しています。
優れた分離能と長寿命に対するニーズに応えるカラム
トリチルオフの脱保護オリゴのイオンペア逆相分離には、分離能が高く、比較的過酷な分析条件にも十分耐えられる堅牢性を備えたカラムが必要です。十分な分離能がないと、測定の真度と精度が低下し、信頼性の低い分析結果につながります。また、堅牢性に劣るカラムは寿命が短いため、頻繁に交換する必要があります。交換のたびにワークフローを中断しなければならないうえ、コストもかさむことになります。
図 1. Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムが N/N-1 のオリゴヌクレオチドに対してシャープなピークと高分解能を示す
(図を拡大)
アジレントのオリゴヌクレオチド分離能標準で最高の性能を実現
Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムは、高効率の 2.7 µm 表面多孔質 Poroshell 粒子を採用しています。この粒子は、アジレント独自の技術により化学修飾されており、高 pH の移動相に対してもきわめて高い耐性を示します。また、エンドキャップ処理された C18 結合相を持ち、オリゴヌクレオチドに対して優れた選択性を実現します。AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムで高い分離能を確保するために、すべてのバッチに対して、アジレントオリゴヌクレオチド分離能標準試料を用いた試験を実施しています。
正確な特性解析を行うには、ヌクレオチドが 1 つ異なるオリゴヌクレオチドを分離できることが重要になります。図 1 では、AdvanceBio の 2.1 x 50 mm のオリゴヌクレオチドカラムは N/N-1 のオリゴヌクレオチドを分離しており、シャープなピークと良好な選択性を示しています。
図 2. TEAA 移動相を使用した注入が 400 回にわたっても Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムが安定している
(図を拡大)
一貫した分析結果とカラムの安定性の実現
カラムの安定性は、 Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムのもうひとつの重要な特徴です。図 2 では、TEAA 移動相を使用した注入が約 400 回にわたっても、AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムが安定性を維持している様子を示しています。
MS 互換性を使用したオリゴヌクレオチドの構造と配列の特性分析
LC/MS は、オリゴヌクレオチドの構造および配列の特性分析に役立つ有用な情報を提供します。AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムは、HFIP-TEA 移動相を使用して、高いクロマトグラフィー分離能と MS 感度を実現します。図 2 および図 3 に示すように、Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムと精密質量 MS を組み合わせることにより、オリゴヌクレオチドの構造と配列の特性分析を行えます。
図 3. Agilent AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムと精密質量 MS の組み合わせによる、オリゴヌクレオチドの構造および配列の特性分析(図を拡大)
ピーク |
レスポンス |
% |
---|---|---|
FLP |
5089897 |
44.33% |
FLP-1 |
1656225 |
14.42% |
FLP-2 |
304129 |
2.65% |
FLP-3 |
303848 |
2.65% |
FLP-4 |
218243 |
1.90% |
FLP-5 |
113062 |
0.98% |
FLP-6 |
104555 |
0.91% |
FLP-7 |
110327 |
0.96% |
FLP-8 |
134341 |
1.17% |
FLP-9 |
134080 |
1.17% |
FLP-10 |
186947 |
1.63% |
FLP-11 |
358833 |
3.12% |
FLP-12 |
251690 |
2.19% |
FLP-13 |
272844 |
2.38% |
FLP-14 |
416306 |
3.63% |
FLP-15 |
238205 |
2.07% |
FLP-16 |
304333 |
2.65% |
FLP-17 |
403038 |
3.51% |
FLP-18 |
459344 |
4.00% |
FLP-19 |
422518 |
3.68% |
合計 |
11482765 |
100% |
表 2.オリゴヌクレオチドの不純物のプロファイル
オリゴヌクレオチド分析のニーズに対応するアジレントのバイオカラムファミリー
ここまで、AdvanceBio オリゴヌクレオチドカラムが、トリチルオフ脱保護オリゴのイオンペア逆相分離のためにどのように使用されるかを説明してきました。このカラムは、移動相に揮発性成分を用いて優れた分離能とメソッドを提供するもので、LC/MS での使用に適しています。また、オリゴヌクレオチドの構造および配列の特性分析に役立つ有用な情報を提供します。トリチルオンオリゴヌクレオチドのイオンペア逆相分離/精製を使用してオリゴを生成する場合は、Agilent PLRP-S for Biomolecules が適しています。トリチルオフ脱保護オリゴヌクレオチドのイオン交換分離の際には、Agilent PL-SAX for Biomolecules が短鎖オリゴを良好に分離します。生体分子分析のニーズがどのようなものであっても、アジレントのバイオカラムファミリーの中から、ニーズを満たすソリューションを見つけることができます。