Access Agilent 2015年3月号

Agilent FTIR 顕微イメージングシステムを使用した 迅速なポリマー内の異物分析

Kevin Grant、Mustafa Kansiz
Agilent FTIR 顕微鏡およびイメージング製品

ポリマーメーカーは現在、生産サイクル期間を短縮して、生産性を高めるという厳しい要求に直面しています。そのためには、高速で信頼性の高い品質管理およびトラブルシューティングメカニズムが必要です。製造時に少しでも問題が発生すると、下流工程に重大な影響を与える場合があり、財務上においても多大な負担を抱え込む可能性があります。さらに、最近の産業プロセスの急激な高速化、工業製品の多様化と複雑化、さらに法規制の目的に適したオーディットトレイルに対するニーズという要因が、すでに高いレベルに達している品質管理への要求を一層高める結果になっています。

フーリエ変換型赤外分光光度計 (FTIR) は、ポリマー業界ではすでに確立されている分光技術です。この装置は、ポリマー材料の構造、組成、および純度に関する詳細情報を提供します。

次に示すのは、Agilent Cary 620 FTIR 顕微イメージングシステムを使用して、お客様のサンプルを分析した例です。620 FTIR の非破壊技術により、高感度で空間分解能の高い結果を短時間で取得し、サンプルを受け取ったままの状態で同定分析することができます。オペレータに必要なのは、最低限の経験とトレーニングだけです。

ポリマーフィルムの赤外メージとスペクトル。1a.アクリロイドに由来する吸収強度の強い領域を、暖色で強調しています。1b.バルクポリマーに由来する吸収強度の強い領域を暖色で、弱い領域を寒色で表示しています。

図 1. ポリマーフィルムの赤外メージとスペクトル。1a.アクリロイドに由来する吸収強度の強い領域を、暖色で強調しています。1b.バルクポリマーに由来する吸収強度の強い領域を暖色で、弱い領域を寒色で表示しています。(図を拡大)

ポリマーフィルムの赤外メージとスペクトル。1a.アクリロイドに由来する吸収強度の強い領域を、暖色で強調しています。1b.バルクポリマーに由来する吸収強度の強い領域を暖色で、弱い領域を寒色で表示しています。

図 1.ポリマーフィルムの赤外メージとスペクトル。1a.アクリロイドに由来する吸収強度の強い領域を、暖色で強調しています。
1b.バルクポリマーに由来する吸収強度の強い領域を暖色で、弱い領域を寒色で表示しています。

ポリマーフィルム内の迅速な異物同定

620 FTIR 顕微鏡と Cary 660 FTIR 分光光度計を組み合わせることにより、お客様のポリマーフィルムを受け取ったままの状態で分析しました。このサンプルをマイクロバイスに垂直に固定し、異物を露出させるためにレーザーブレードで切片を作成して、顕微鏡ステージの上に設置しました。サンプルに必要な前処理はこれだけです。モーター駆動のステージを走査しながらサンプルを観察することにより、異物を簡単かつ正確に Ge Micro- ATR (減衰全反射) アクセサリの下に合わせることができます。

1 回の測定に要する時間は約 90 秒で、ポリマー内の異物を正確に検出され、この結果から生産サイクルに与える影響についても評価しました (図 1)。また、スペクトルを抽出して、Agilent Resolutions Pro FTIR ソフトウェアによりライブラリの登録データと自動的に比較することにより、異物の正確な同定を行いました。その結果、異物は一般的に衝撃改質剤としてポリマーに添加されている、アクリロイド類であることが分かりました。

以上の結果から、異物は、均一化が不十分な製品を押し出して成形したことにより生じたものであると結論付けました。このような不均一化は、前駆体の溶融が不十分であることを示しています。今回の分析の詳細については、無償で提供されているアジレント資料 5991-5294EN をご覧ください。

合成ゴム内の異物の可視画像は、Cary 620 FTIR 顕微鏡の 15 倍可視/赤外用対物鏡を使用して撮影されました。スケールバー = 200 µm。

図 2. 合成ゴム内の異物の可視画像は、Cary 620 FTIR 顕微鏡の 15 倍可視/赤外用対物鏡を使用して撮影されました。スケールバー = 200 µm。(図を拡大)

合成ゴム内の異物の可視画像は、Cary 620 FTIR 顕微鏡の 15 倍可視/赤外用対物鏡を使用して撮影されました。スケールバー = 200 µm。

図 2.合成ゴム内の異物の可視画像は、Cary 620 FTIR 顕微鏡の 15 倍可視/赤外用対物鏡を使用して撮影されました。スケールバー = 200 µm。

合成ゴム内の迅速な複合汚染物質の同定

合成ゴム内の異物分析で使用したサンプルは非常に変形しやすく、測定対象物の形状や寸法が異なっているため、非常に複雑でした(図 2)。このため、今回は多面的な分析手法を使用しました。サンプルに関する前処理は必要ありません。

ポリマー表面で最も簡単に判別できた異物は、直径が 50 ~ 100 µm の球形状の白色物でした (図 2a)。単素子検出器を使用した顕微 ATR により、60 秒未満でライブラリに登録されているポリアミド (バルクポリマーの固有成分) と同定できる十分な品質のデータを取得できました。

ただし、赤色の繊維状の異物 (図 2b) は直径が 10 µm 未満で、異物のサイズに合わせてアパーチャでマスクをすると検出することができなかったため、単素子検出器を使用した顕微分析は適切ではありませんでした。このため、検出器を 64 x 64 素子の二次元アレイに切り替えました。この装置は、1 回の測定で分析領域全体から同時に、4,096 個のフルレンジスペクトルを収集します。ライブラリ照合により、即座に赤色の異物はセルロース類であると同定されました。環境に由来する綿繊維の可能性が高いと考えられます。

最終的に、このバルクポリマーは、かなり不均一であることがわかりました (図 2c)。Ge Micro-ATR スライドオンアクセサリを使用して 60 秒未満で取得した 1 枚の赤外イメージ中に、ポリエチレン、ナイロン、炭酸塩、および天然ゴム基質のイソプレンという 4 種類の異なる化学成分が検出されました (図 3)。

これらの包括的な分析の詳細については、アジレント資料 5991-5224JAJP をご覧ください。

可視画像 (a) および異物の不均一な分布を示す赤外イメージ。スペクトルライブラリ検索の結果、異物は、b) ポリエチレン、c) ナイロン、d) 炭酸塩、e) イソプレン (ラバー) と同定されました。

図 3. 可視画像 (a) および異物の不均一な分布を示す赤外イメージ。スペクトルライブラリ検索の結果、異物は、b) ポリエチレン、c) ナイロン、d) 炭酸塩、e) イソプレン (ラバー) と同定されました。(図を拡大)

可視画像 (a) および異物の不均一な分布を示す赤外イメージ。スペクトルライブラリ検索の結果、異物は、b) ポリエチレン、c) ナイロン、d) 炭酸塩、e) イソプレン (ラバー) と同定されました。

図 3.可視画像 (a) および異物の不均一な分布を示す赤外イメージ。
スペクトルライブラリ検索の結果、異物は、b) ポリエチレン、c) ナイロン、d) 炭酸塩、e) イソプレン (ラバー) と同定されました。

効率的なポリマー分析用のアジレントシステム

ポリマー製造材料の分析を高い信頼性で行う場合は、機器の性能を確認することが重要になります。アジレントでは、ポリマー特性分析に対応する信頼性と堅牢性に優れた機器を幅広く提供しています。これらの製品を使えば、ポリマーや複合材料の組成や反応に関する実用的な情報が迅速に得られます。Agilent FTIR システムでは、ルーチン測定から最先端アプリケーションのトラブルシューティングまで、分析上のあらゆる難問を解決することが可能です。

バルク構造と詳細な構造の両方、および可搬型分析ソリューションの情報ついては、アジレントのラボ用ベンチトップ FTIR、赤外顕微システム、および赤外顕微イメージングシステムの詳細をご確認ください。Agilent 4300 ハンドヘルド FTIR 分光光度計などのハンドヘルド機器は、あらゆる場所で即座に優れた品質情報を提供してくれます。

また、Agilent GPC/SEC ポートフォリオにより、ポリマーの特性に適した、市場をリードする機器、カラム、標準、およびデータ分析ソフトウェアも提供されています。正確な分子量情報を取得して、バッチ試験における判断を円滑化する必要がある場合は、業界をリードするアジレントの HPLC システムの詳細についてご確認ください。