Access Agilent 2014年10月号

医薬品製造において元素不純物を測定するためのQuality by Designメソッドに対応した ICP-MS

Ed McCurdy
アジレント ICP-MS 製品マーケティング

世界にまたがる医薬品製造および販売システム全体で品質の一貫性を確保するには、製造と分析の厳格なプロセスが不可欠です。近年、医薬品業界では、製品の品質と安全性を確保するため、信頼性、一貫性、正確性に優れたメソッドの開発をより重視するようになっています。欧州医薬品庁 (EMA) や米国食品医薬品局 (U.S. FDA) をはじめとする規制機関も、同様の目的に対応するための分析システムの設計および手法の開発の調整に取り組んでいます。

触媒の残留物、毒性微量元素、およびその他の金属の潜在的な影響に関する理解が深まるにつれて、医薬品に含まれる無機汚染物質の管理に対する関心も高まっています。医薬品規制調和国際会議 (ICH) は、医薬品の元素に含まれる不純物の管理に関するガイドライン (ICH-Q3D) を公開しています。それと並行して、米国薬局方協会 (USP) では、これまでの USP (重金属限界試験) が製品の品質と安全性評価にはもはや適さないとの判断を下し、それに代わる規制として新しい総則 および を導入しようとしています。USP では、主観的な色の比較を基盤としているため、結果にばらつきが生じます。また、このメソッドでは、元素ごとの具体的な定量結果も触媒の残留物に関する情報も得られない上、サンプル前処理法には、水銀 (Hg) などの揮発性元素の回収率が低いという問題点もあります。

FDA が最近発表した分析手順およびメソッドバリデーションに関するガイドライン草案 [1] でも、継続的な改善のプロセスの一部として現在の手法や分析機器の評価を行い、新技術によってデータの品質に改善をもたらす最新手法に置き換えることを推奨しています。クオリティ・バイ・デザイン (QbD) は、ばらつきの要因を特定して理解した上で管理することにより、製造プロセス、分析手法、製品、または手順における一貫性の確保を目指すアプローチで、その原則はいまや医薬品業界全体で広く適用されるようになってきています。QbD を取り入れることで、コンプライアンスと製造品質管理を補完することができます。

医薬品における「4 大」毒性微量元素の特異的な定量分析の検量線

図 1. 医薬品における「4 大」毒性微量元素の特異的な定量分析の検量線(図を拡大)
 

医薬品における「4 大」毒性微量元素の特異的な定量分析の検量線

図 1. 医薬品における「4 大」毒性微量元素の特異的な定量分析の検量線

一貫した操作を実現する自動最適化および自動メソッド作成機能を備えた ICP-MS

USP や ICH により提案された新たな手法では、最新のサンプル前処理手順 (マイクロ波分解) に加え、誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) と誘導結合プラズマ発光分光分析法 (ICP-OES) の 2 つの機器分析法が使用されています。これらの手法により、製造時の品質管理と製品の安全性のいずれにも関連のあるすべての元素について、具体的かつ正確で、トレーサブルな定量的データが提供されます。

Agilent 7900 ICP-MS は、さまざまな医薬品に含まれている規制対象元素すべての定量的測定を正確に行えるようにすることで、QbD の原則に対応しています。ICP イオン源は温度が極めて高いため、ICP-MS では、優れたイオン化効率 (結果として高感度) を実現するとともに、マトリックス効果を大幅に抑えることでき、幅広いサンプルマトリックスに対し、シンプルに合成した標準液に基づく直線性の高い検量線を使用することができます (図 1)。ICP-MS MassHunter ソフトウェアには、メソッドの開発を簡素化し、特定のサンプルタイプに合わせ信頼性の高いメソッドを容易に開発できる自動メソッド作成機能が搭載されています。この機能を使用することで、メソッドの設定とルーチン分析が簡単になるだけでなく、異なる経験レベルのユーザが一貫した操作を行えるようにできます。メソッドの堅牢性 (実行する日付や、機器、オペレータなどが異なる場合のバッチ間の結果の一貫性) は、USP で定義されている性能試験の鍵となる部分であり、QbD の中心的な原則です。

ICP-MS による、市販の制酸剤サンプルの全質量スペクトル取り込み

図 2. ICP-MS による、市販の制酸剤サンプルの全質量スペクトル取り込み(図を拡大)
 

ICP-MS による、市販の制酸剤サンプルの全質量スペクトル取り込み

図 2. ICP-MS による、市販の制酸剤サンプルの全質量スペクトル取り込み

確実な同定の実現

現在、無機質量分析法に匹敵する信頼度を持つ手法は、ほとんどありません。インジウム (In) を除き、自然に発生するすべての元素には、他の元素の同位体により干渉されない同位体が少なくとも 1 つ存在するため、対象元素を確実に同定することができます。干渉が発生する場合は通常、多原子による干渉です。つまり、複数の原子が組み合わさって、通常は分析対象成分と同じ質量の二原子の分子イオンとなります。これらの多原子イオンは、コリジョン/リアクションセル技術を使用することで、分析対象成分から簡単に分離することができます。1 つの分析対象として複数の同位体を使用できる場合、定量結果の算出を 2 つ (またはそれ以上) の同位体に基づいて個別に行うことが可能となるため、二次イオン、すなわち「クォリファイア」イオンの結果に基づいて成分の同定や濃度を確実に裏付けることができます。また、ICP-MS のシンプルな質量スペクトルは、メソッド開発時および調査時のスクリーニング分析としても理想的です (図 2)。1 回の測定はサンプル 1 つにつき 3 分もかからないため、ほぼすべての元素を明瞭に識別し、概略濃度を計算することができます。QbD を支援するアジレントのソリューションの詳細については、先ごろ公開された入門書 (5991-2166JAJP) をご覧ください [2]。

References

  1. U. S. Food and Drug Administration/Center for Drug Evaluation and Research/Center for Biologics Evaluation and Research、『Analytical Procedures and Methods Validation for Drugs and Biologics:Draft Guidance for Industry』、ワシントン D.C. (2014年)
  2. 信頼性の向上医薬品開発における Quality-by-Design 実施のためのアジレントのソリューション、入門書

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