Access Agilent 2014年6月号

適切なサンプル前処理テクニックの選択により、 食品分析における分析対象物の回収率を向上

Derick Lucas、Limian Zhao、Daniela Daniel
アジレントサンプル前処理アプリケーション

食品サンプルの分析は、サンプルの種類が多く、マトリクスが複雑で、ラボが遵守すべき基準値が厳しいため、きわめて大きな困難が伴います。どんな食品分析も、なんらかの形のサンプル前処理を実施することから始まります。このサンプル前処理が、その後の分析の成功に大きな影響を与えます。試験対象となる食品サンプルの効率的な前処理は、マトリクスや分析対象成分の性質によって大きく異なるため、すべての分析プロセスで効率と精度を維持するのはきわめて困難です。サンプル前処理手順の効率をわかりやすくテストできる手法が、回収率の評価です。この記事では、3つのサンプル前処理法をとりあげ、それぞれを比較します。いずれの手法も、良好な回収率が得られました。

メソッド 1: QuEChERS による牛乳からの抗寄生虫薬の抽出

ブラジルにある Food Technology Institute の Regina Fulani 氏のチームは、Agilent QuEChERS キットを用いたサンプル前処理に続いて LC/MS/MS を行う手法で、牛乳中に残留する抗寄生虫薬を分析する高速かつ簡単なメソッドを開発しました (アジレント技術資料 5991-3948EN 参照)。このチームが開発およびバリデーションしたメソッドは、イベルメクチン、アバメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、ジフルベンズロンの各残留物を同時に分析するためのものです。定量下限は、すべての化合物で 2.5 µg/L 未満で、回収率は 75~122 %、RSD は 8.0 % 未満でした (表 1 参照)Agilent 1290 Infinity LC と 6460 シリーズトリプル四重極 LC/MSAgilent ZORBAX Eclipse Plus C18 カラムを使えば、このメソッドの所要時間は 5 分未満になります。

分析対象成分

濃度 (µg/L)

回収率 (%)

相対標準偏差 (%)

検出下限 (µg/L)

定量下限 (µg/L)

ジフロベンズロン

10.0
15.0
20.0

104
101
87

0.3
1
1

0.8
 
 

2.5
 
 

エプリノメクチン

1.0
5.0
10.0

122
86
75

7
4
4

0.08
 
 

0.3
 
 

アバメクチン

1.0
5.0
10.0

116
98
98

3
4
2

0.2
 
 

0.7
 
 

ドラメクチン

1.0
5.0
10.0

94
99
102

5
2
8

0.1
 
 

0.4
 
 

モキシデクチン

50.0
25.0
50.0

100
97
94

6
3
7

0.6
 
 

1.9
 
 

イベルメクチン

1.0
5.0
10.0

102
102
98

2
6
2

0.1
 
 

0.4
 
 

表 1. 牛乳中抗寄生虫薬の 3 つの添加濃度における回収率 (%)

Agilent QuEChERS、ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、1290 Infinity LC および 6410 シリーズトリプル四重極 LC/MS を用いた 176 種類の農薬の回収率範囲。

図 1. Agilent QuEChERS、ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、1290 Infinity LC および 6410 シリーズトリプル四重極 LC/MS を用いた 176 種類の農薬の回収率範囲。
(図を拡大)
 

Agilent QuEChERS、ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、1290 Infinity LC および 6410 シリーズトリプル四重極 LC/MS を用いた 176 種類の農薬の回収率範囲。

図 1. Agilent QuEChERS、ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、1290 Infinity LC および 6410 シリーズトリプル四重極 LC/MS を用いた 176 種類の農薬の回収率範囲。

メソッド 2:QuEChERS キットによるハーブティーからの農薬の抽出

米国にあるアジレントのサンプル前処理試験ラボの Derick Lucas 氏は、LC カラムおよび機器と QuEChERS キットを用いて、 ハーブティー中の残留農薬を分析しました。ただし、このケースでは、QuEChERS ステップでグラファイトカーボンブラック (GCB) 充填剤と 1 級-2 級アミンを使用しました。お茶などの色素の多いサンプルからの抽出では、GCB の使用がきわめて重要となっていますが、平面構造を持つ化合物などの分析対象成分が除去されてしまうのを防ぐために、細心の注意を払う必要があります。この最適化されたメソッドは、緑茶および紅茶マトリックス中の 176 種類のほとんどの農薬について優れた回収率と再現性を提供しました。緑茶サンプルでは、10 ppb での農薬回収率が 82 %、100 ppb での農薬回収率が 92 % で、いずれも 70 % から 120 % の範囲に収まりました。紅茶サンプルでは、10 ppb での農薬回収率が 76%、100 ppb での農薬回収率が 88% で、いずれも 70 % から 120 % の範囲に収まりました。50 % を下回る回収率を示した農薬は比較的少なく、検出されなかった農薬もいくつかありました (図 1)。

メソッド 3: シリンジろ過による飲料からの食品添加物の抽出

米国にあるアジレントサンプル前処理アプリケーション部門の Limian Zhao 氏は、通常の 400 bar HPLCシステムにおける シリンジろ過を用いたサンプル前処理 と Agilent Poroshell 120 EC-C18 LC カラム の使用について調査しました。この手法の最大の懸念は、ろ過によるサンプルのロスです。サンプルのロスは、フィルタメンブランと分析対象成分との不要な相互作用から生じます。また、サンプル溶液中の可溶性の低い分析対象成分により、フィルタが詰まることもあります。従って、フィルタメンブランの選択は、サンプル溶液や、メンブランとサンプルとの相互作用に左右されます。水性および水性/有機性サンプル溶液のいずれにおいても、再生セルロースを用いた Agilent Captiva プレミアムシリンジフィルタ で、全体として最高の回収率が得られました (表 2)。

飲料

サンプル前処理

検出された添加物

相対ろ過回収率(%)の平均値、
n=3

凍結濃縮果汁

室温で解凍、水で 10 倍に希釈

アスコルビン酸

103.4

サッカリン

103.1

ストロベリーアイス

室温で解凍、MeOHで 2倍に希釈し、
ボルテックス

N/A

N/A

野菜ジュース

水で 10 倍に希釈し、ボルテックス

アスコルビン酸

99.4

スポーツドリンク

直接分析

アスコルビン酸

97.0

アセスルファム K

99.3

アルラレッド

94.6

エナジードリンク

直接分析

N/A

N/A

フルーツパンチ

直接分析

アスコルビン酸

100.8

アセスルファム K

100.2

安息香酸

100.2

保存果実 (果汁のみ分析)

水で 10 倍に希釈し、ボルテックス

アスコルビン酸

98.6

アイスコーヒー

アセトニトリルで 3 倍に希釈し、
ボルテックス

カフェイン

101.6

ダイエットコーク

直接使用

カフェイン

99.1

安息香酸

99.4

アスパルテーム

99.2

マウスウォッシュ

水で 50 倍に希釈し、ボルテックス

サッカリン

101.4

安息香酸

101.4

オレンジソーダ

直接使用

アルラレッド

96.2

安息香酸

99.2

Skinny スポーツドリンク

直接使用

アセスルファム K

99.9

乳飲料

MeOHで2 倍に希釈し、ボルテックス

安息香酸

99.9

ラスベリーレモネード

水で 5 倍に希釈し、ボルテックス

アスコルビン酸

100.1

オレンジジュース

水で 5 倍に希釈し、ボルテックス

アスコルビン酸

90.9

乾燥フルーツティ

粉末茶 1 袋を 50 mL の水に溶解し、
水で 10 倍に希釈し、ボルテックス

アスコルビン酸

100.5

アセスルファム K

100.0

表 2.Agilent Captiva プレミアムシリンジフィルタを用いた飲料からの食品添加物の回収率

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