Access Agilent 2014年6月号

堅牢な LC メソッドを短時間で実現する Quality-by-Designプロセス

Syed Salman Lateef
アジレントアプリケーションサイエンティスト

従来の分析メソッド開発アプローチでは、パラメータを 1 つずつ最適化していく必要があります。このアプローチで開発されたメソッドは、メソッドの重要なパラメータ間の相互作用がわからないので、結局失敗してしまう可能性があります。リスクマネジメントを重視するQuality-by-Design (QbD) 式のメソッド開発アプローチなら、より堅牢で確実なメソッドを開発することができます。この記事では、QbD に関する最近の成功事例をまとめています。

一貫した性能のメソッドを開発するQbDアプローチ

QbD アプローチは、目的をあらかじめ定義することからはじまります。その際、科学的な手法とリスクマネジメント手法が用いられます。初期リスク評価に続いて、多変数実験を実施します。多変数実験は実験デザイン (DoE) をもとに設計し、結果をモデル化します。多変数実験により、デザインスペースの堅牢な領域が明らかになります。堅牢な領域とは、メソッド変数を意図的に変化させてもメソッド性能に影響が出ない領域を指します。この体系的なアプローチにより、メソッド開発失敗のリスクが排除され、メソッドの耐久性と堅牢性が向上します。また、QbD アプローチでは、既存のメソッドに関する理解を高めることができるため、重要なメソッドパラメータに関する管理戦略を効率的に導入することが可能です。

アジレントは先ごろ、Agilent 1290 Infinity シリーズメソッド開発ソリューションと Fusion AE 自動メソッド開発ソフトウェア (S-Matrix) を用いた QbD アプローチ活用して、医薬品リナグリプチンに関する安定性試験メソッドを開発する実証研究を行いました。この研究の目的は、分解させたサンプル中の医薬品有効成分 (API) の分解能が 1.5 を上回る堅牢なメソッドを開発することです。

各 pH に対する有機溶媒濃度のプロット図。四角の囲みは、最適な性能が得られる領域を示しています。

図 1. 各 pH に対する有機溶媒濃度のプロット図。四角の囲みは、最適な性能が得られる領域を示しています。(図を拡大)

各 pH に対する有機溶媒濃度のプロット図。四角の囲みは、最適な性能が得られる領域を示しています。

図 1. 各 pH に対する有機溶媒濃度のプロット図。四角の囲みは、最適な性能が得られる領域を示しています。

デザインスペースの中央と四隅の条件から得られたクロマトグラム。デザインスペース内でパラメータを変化させても、メソッドの堅牢性に影響を与えません。

図 2. デザインスペースの中央と四隅の条件から得られたクロマトグラム。デザインスペース内でパラメータを変化させても、メソッドの堅牢性に影響を与えません。
(図を拡大)

デザインスペースの中央と四隅の条件から得られたクロマトグラム。デザインスペース内でパラメータを変化させても、メソッドの堅牢性に影響を与えません。

図 2. デザインスペースの中央と四隅の条件から得られたクロマトグラム。デザインスペース内でパラメータを変化させても、メソッドの堅牢性に影響を与えません。

この目的を達成するために、 Agilent 1290 Infinity バイナリポンプ を、12 ポジション/13 ポートバルブを備えた Agilent 1290 Infinity バルブドライブに接続しました。これにより、1 つのバルブドライブで、最大 12 種類の溶媒をスクリーニングできます。2 つの Agilent 1290 Infinity カラムコンパートメント (TCC) をクラスタ化して構成しました。2 つの 8 ポジション/9‑ポートバルブを使うことで、最大 8 つの 50-mm カラムが接続できます。この研究の詳細については、アジレント技術資料 5991-3834EN をご覧ください。

最小限の実験でメソッドを最適化

カラムおよび溶媒の種類、移動相の有機溶媒濃度、pH、カラム温度といった複数の重要なメソッドパラメータの多変数解析により、最高の性能と最終的なデザインスペースを決定しました (図 1)。図の白い領域は、カラム温度を45 °C で固定した場合における有機溶媒濃度と移動相の pH に対するデザインスペースです。四角の囲みは、最適なメソッド性能を得るうえで許容されるパラメータの領域を示しています。

カラム温度 45 °C、有機溶媒濃度 90.5 % ± 1.5、pH 7.7 ± 0.1 で堅牢な最終メソッドが得られました。許容範囲内でパラメータを意図的に変化させましたが、 1.5 以上という目標の分離能は変わりませんでした (図 2)。

メソッド開発と移管の失敗を低減

QbD アプローチのメソッド開発を活用すれば、メソッドパラメータに対する理解を深め、メソッドのバリデーションや移管の際の失敗の可能性を低減することができます。手作業でのメソッド開発と比べて、この自動メソッド開発アプローチでは、短い時間でより高性能かつ堅牢性に優れたメソッドが得られる可能性が高くなります。

より迅速にメソッドを開発し、堅牢で信頼性の高い分離条件を得る方法に関しては、アジレント技術資料 5991-3834EN で QbD の詳細をご確認ください。

References

  1. Gain Greater Confidence. Agilent Solutions for Quality-by-Design Implementation in Pharmaceutical Development, Agilent Primer, 5991-2166EN.
  2. International Conference on Harmonization (ICH) Q8(R2): Pharmaceutical Development. (August 2009).