Access Agilent 2014年6月号

バイオ分析の信頼性を向上させる Agilent 1260 Infinity Bio-MDS

Graham Cleaver
アジレントビジネス開発マネージャ

Sonja Schneider
アジレントアプリケーションサイエンティスト

Agilent 1260 Infinity マルチ検出器 Bio‑SEC ソリューション

図 1. Agilent 1260 Infinity マルチ検出器 Bio‑SEC ソリューション(図を拡大)
 

Agilent 1260 Infinity マルチ検出器 Bio‑SEC ソリューション

図 1.Agilent 1260 Infinity マルチ検出器 Bio‑SEC ソリューション

モノクローナル抗体 (MAb) は、癌との闘いにおける科学的な進歩の成果です。特定の種類の MAb は、免疫系を活性化させて悪性細胞を攻撃したり、細胞分裂の引き金になるシグナルを遮断したり、攻撃された細胞に治療薬を運んだりします。サイズ排除クロマトグラフィー (SEC) は、バイオ医薬品としてのタンパク質、ペプチド、ワクチンに存在する単量体、二量体、凝集体、賦形剤の同定および定量に用いられる標準的なメソッドです。また、SECは規制当局の承認を受ける一般的な要件でもあります。 Agilent 1260 Infinity マルチ検出器 Bio‑SEC ソリューション ( 図 1 参照) は、Agilent 1260 Infinity Bio-inert LC システムと 1260 Infinity Bio-MDS システムで構成されています。1260 Infinity Bio-MDS システムは、前述したタンパク質ベースのバイオ医薬品およびバイオシミラーに対して、再現性の高い高度な分析が可能になるように全面的に最適化されています。専門性の高い研究とルーチン的な分析の両方に対応するため、様々な機器、カラム、スタンダード、ソフトウェアを開発しています。これにより、SEC やゲルろ過クロマトグラフィー (GFC) の経験レベルにかかわらず、再現性の高い正確な分析が容易に実現します。

チログロブリン単量体、オリゴノマー、凝集体の光散乱検出。

図 2. チログロブリン単量体、オリゴノマー、凝集体の光散乱検出。(図を拡大)

チログロブリン単量体、オリゴノマー、凝集体の光散乱検出。

図 2. チログロブリン単量体、オリゴノマー、凝集体の光散乱検出。

オボアルブミンの特性分析。ピーク 1 は単量体、ピーク 2 は二量体、ピーク 3 は凝集体。

図 3. オボアルブミンの特性分析。ピーク 1 は単量体、ピーク 2 は二量体、ピーク 3 は凝集体。(図を拡大)

オボアルブミンの特性分析。ピーク 1 は単量体、ピーク 2 は二量体、ピーク 3 は凝集体。

図 3. オボアルブミンの特性分析。ピーク 1 は単量体、ピーク 2 は二量体、ピーク 3 は凝集体。

パワフルで使いやすい、専用の Bio-SEC ソフトウェア

どの部屋でも、どの機器を使用しても同じ結果が得られると確信するためには、繰り返し精度と再現性が重要です。Agilent Bio-SEC ソフトウェアなら、マウスを 1 回クリックするだけで、ベースラインおよび積分範囲を素早く簡単に定義できます。テンプレートの設定や保存が可能なので、優れた繰り返し精度が確保されます。

分子量や分子サイズの測定は、生体分子の特性分析においては特に重要です。凝集体が存在すると、効能や安全性に大きな影響が出る可能性があります。図 2 に示すように、チログロブリンとその凝集体のモニタリングには、光散乱検出器が役立ちます。図2にある表を見ると、ピーク 1 のモル質量が四量体の 10 倍であることがわかります。この結果は、ピーク 1 が確実に凝集体であることを裏づけています。UV 検出器のシグナルから算出される面積 % は、オリゴマーと凝集体の相対濃度を表しています。

Agilent 1260 Bio-MDS ではタンパク質の特性分析が簡単に

Agilent 1260 Infinity Bio-MDS システムでは、UV やフォトダイオードアレイに加えて、静的光散乱検出と動的光散乱検出が利用できるため、タンパク質の特性分析において究極のツールが実現します。カラムのキャリブレーションを行わずに絶対分子量を測定することが可能です。動的光散乱では、溶液中での分子サイズや形状に関する情報が得られます。きわめて低濃度のタンパク質凝集体でも、組成や存在の有無を簡単にモニタリングできます (図 3)。光散乱のフローセルは低用量のため、最高の感度と正確性を約束します。温度制御カラムコンパートメントと検出器フローセルにより、最小限の平衡化時間で優れたベースライン安定性を実現します。詳細については、アジレント技術資料をご覧ください(5991-3955EN)。

真のバイオイナート流路系

バイオ医薬品の開発および製造の際には、製品安定性のモニタリングが不可欠です。タンパク質医薬品では、凝集体の存在が低濃度であったとしても、生理作用に悪影響が出る可能性があります。

このシステムを用いる分析では、サンプルは金属表面に一切接触しません。タンパク質のような大きな生体分子は、金属表面との非特異的な相互作用やシステムからの金属イオン流出の影響を受けやすく、それが再現性の低下やピークテーリング、分離能の低下につながります。また、SEC では一般的に高塩濃度が用いられますが、それが腐食の進行、堅牢性の低下、装置ダウンタイムの増大につながることもあります。多くの場合、こうした問題には特別のメンテナンスいや面倒な不活性化作業が求められます。完全なバイオイナート流路を備えたアジレントのシステムなら、このような手順が不要になり、バイオ分析のサンプルスループットや効率が向上します。

従来の SEC 分析カラムキャリブレーション (A) と、90°での光散乱分析 (B) の比較。

図 4. 従来の SEC 分析カラムキャリブレーション (A) と、 90°での光散乱分析 (B) の比較。(図を拡大)
 

従来の SEC 分析カラムキャリブレーション (A) と、 90°での光散乱分析 (B) の比較。

図 4.従来の SEC 分析カラムキャリブレーション (A) と、
90°での光散乱分析 (B) の比較。

モノクローナル抗体において光散乱検出器を使う利点

ここの例では、MW、Rh、および凝集体の分析という観点から、MAb の特性を説明します。MAb 凝集体の分析における光散乱 (LS) 検出器の利点を、UV 検出器のみを用いる場合と比較しています。LS 検出器では、サンプルの注入量に関係なく、信頼性の高い MW 測定が実現します。高感度 DAD 検出器と組み合わせれば、さらに詳しい凝集体の分析が可能になります。

どちらのクロマトグラムでも、3 つのピークがはっきりと見てとれます (図 4)。従来の SEC 分析を用いた場合では、最初のピークの分子量が 145,000 Da、第 2 のピークおよび第 3 のピークの分子量がそれぞれ 1,000 Da および 100 Da です。それに対して、90°での光散乱分析では、観察されている 3 つのピークすべての分子量が約 150,000 であることがわかります。3 つのピークはどれも同じ抗体を表すものですが、抗体とカラムとの間に非特異的な相互作用があるために、一部が異なるリテンションタイムで溶出しています。この結果は、第 3 のピークの平均 Rh が 5.23 nm (文献値 5.29 nm) という DLS 分析により裏づけられています。カラムキャリブレーションによれば、この分子サイズなら 10 分前後 (anti-c-Myc 抗体の最初のピークが溶出する領域) で溶出するはずです。したがって、anti-c-Myc 抗体は、おそらくカラムへ吸着するために、予想どおりに溶出していないと考えられます。このような異常な溶出を説明する他の可能性としては、変性や異なる折り畳み過程 (非球状など) に起因する構造変化が挙げられます。この例は、光散乱検出が生化学分析の貴重なツールになることを示しています。この研究例の詳細については、アジレント技術資料 5991-3954EN をご覧ください。

アジレントの提供する幅広い液体クロマトグラフィーソリューション

アジレントでは、生体分子分析の性能、信頼性、堅牢性の新たな基準を打ち立てる Agilent 1260 Infinity Bio-inert LC をはじめ、生化学分析用の幅広い液体クロマトグラフィーツールおよびソリューションを提供しています。1200 Infinity シリーズ液体クロマトグラフの定評ある技術をベースにした 1260 Infinity Bio-inert  LC なら、タンパク質分析やバイオ医薬品分析で一般に用いられる厳しい移動相条件にも簡単に対応できるほか、生体高分子分析によく見られる金属などとの相互作用から生じる問題も軽減できます。アジレントの液体クロマトグラフィーソリューションに関する情報満載のビデオ をご覧ください。