Access Agilent 2014年4月号

生体分子のイオン交換クロマトグラフィーの向上

By Linda Lloyd
Agilent Product Manager, Biocolumns

イオン交換クロマトグラフィー (IEX) は、イオン電荷の違いをもとに生体分子を分離する一般的なテクニックです。穏やかな非変性的テクニックで、有機溶媒を必要としないため、ネイティブ型や活性型のタンパク質の特性分析や精製に頻繁に用いられます。この記事では、IEX メソッド開発の際に考慮すべきいくつかの重要点を説明します。アジレントの新しい「Ion-Exchange Chromatography for Biomolecule Analysis: a “How to” Guide (イオン交換クロマトグラフィーによる生体分子分析:ハウツーガイド)」では、さらに詳しく説明しています。

タンパク質の正味電荷に与える pH の影響。

図 1.タンパク質の正味電荷に与える pH の影響。(図を拡大)

タンパク質の正味電荷に与える pH の影響。
 

図 1.タンパク質の正味電荷に与える pH の影響。

効果的なイオン交換メソッドの開発

イオン交換のテクニックは、等電点の異なるタンパク質の分離に適していますが、単一タンパク質の電荷イソ型の分離にも同じくらい有効です。しかし、留意すべき重要な点は、モノクローナル抗体などのタンパク質がきわめて複雑であることです。一般的な mAb は、1300 種類以上のアミノ酸で構成されています。そのうち、おそらく 130 種類ほどには酸性残基があり、180 種類ほどには塩基性残基があります。モノクローナル抗体は中性 pH で正味の正電荷を持つ可能性が高いため、カチオン交換カラムを用いて分離する必要があります (図 1)。しかし、そうした分子の実際の等電点 (pI) を予測するのは困難であるため、メソッドの開発または最適化が必要となることが予想されます。

サンプル前処理

IEX のサンプル前処理は、他のタンパク質分析とそれほど変わりません。もっとも重要な点は、サンプルを溶媒に溶解させる必要がある点です。できれば移動相そのものに溶解させるのが理想的です。カラムを損傷から保護するために、使用前にサンプルをろ過し、粒子を除去する必要があります。ただし、ろ過ではサンプルの溶解性の低さを補うことはできません。溶解性が低い場合は、別の溶媒を使用する必要があるでしょう。また、新鮮なサンプルを作成し、できるだけすぐに分析する必要があります。冷凍すればサンプルの耐用期間を延ばし、細菌の繁殖を遅らせることができます。冷凍しない場合、バッファ溶液中で急速に細菌が繁殖することもあります。

カラム充填剤の選択

IEX カラムにはさまざまな種類があります。イオン交換の場合、最初に考えるべきなのは、「アニオン交換か、カチオン交換か?」という点です。強イオン交換または弱イオン交換のいずれかを選択する必要もあります。たいていの場合、まずは強イオン交換カラムからはじめ、必要に応じて弱イオン交換カラムに切り替え、異なる選択性を得る方法が最適です。アニオンおよびカチオン交換のいずれを選択するかは、分析対象タンパク質の等電点により異なります。

Agilent Bio WCX カラムを用いたタンパク質の分離。小さい粒子サイズと短いカラムにより、分析時間が短縮されています。サンプル溶出時間は、長いカラムでは 17 分ですが、短いカラムではわずか 12 分です。

図 2.Agilent Bio WCX カラムを用いたタンパク質の分離。小さい粒子サイズと短いカラムにより、分析時間が短縮されています。サンプル溶出時間は、長いカラムでは 17 分ですが、短いカラムではわずか 12 分です。(図を拡大)

Agilent Bio WCX カラムを用いたタンパク質の分離。小さい粒子サイズと短いカラムにより、分析時間が短縮されています。サンプル溶出時間は、長いカラムでは 17 分ですが、短いカラムではわずか 12 分です。
 

図 2. Agilent Bio WCX カラムを用いたタンパク質の分離。
小さい粒子サイズと短いカラムにより、分析時間が短縮されています。
サンプル溶出時間は、長いカラムでは 17 分ですが、短いカラムではわずか 12 分です。

自動混合クォータナリグラジエントを用いて 3 種類のタンパク質混合物を分離した pH スカウティング。

図 3.自動混合クォータナリグラジエントを用いて 3 種類のタンパク質混合物を分離した pH スカウティング。(図を拡大)

自動混合クォータナリグラジエントを用いて 3 種類のタンパク質混合物を分離した pH スカウティング。
 

図 3. 自動混合クォータナリグラジエントを用いて 3 種類のタンパク質混合物を分離した pH スカウティング。

カラムの選択

生体分子の場合、粒子が自由に浸透できるようにする必要があります。カラムローディング性能がそれほど問題ではない場合は、非多孔性球形粒子でもっとも高い分離能が得られます。粒子サイズを考慮する際のポイントとしては、小さい粒子を使えば、分離能は高くなります。ただしこの場合、背圧が高くなります。短い 50 mm カラムを使えば、特に粒子サイズが小さい場合には、分離を高速化することができます。長い 250 mm カラムでは、分離能が高くなります (図 2)。内径の小さいカラムでは、溶媒消費量が少なくなります。また、サンプル量に制約がある場合は、注入量を少なくしたほうがよいでしょう。

流量

内径 4.6 mm のカラムの一般的な流量は 0.5~1.0 mL/min ですが、一部のアプリケーションでは、分析スピードが重要となることもあります。短いカラムを使えば (一般的な 150 mm または 250 mm カラムの代わりに 50 mm カラムなど)、分析時間を短縮することができます。流量を高めたり、高流量と短いカラムの両方を用いたりする方法もあります (カラムの圧力上限を超えないように注意してください)。

移動相

望みの分析 pH を維持するために、バッファを移動相とする必要があります。一般的には 20 mM 程度です。バッファの pH およびイオン強度は、弱イオン交換分離に影響を与える可能性があるため、最適な条件を実験により特定する必要があります (図 3)。移動相に NaCl を添加すると pH が変化するため、必要に応じて再調整してください。

カラムのコンディショニングと平衡化

IEX で再現性を得るためには、カラムの平衡化およびグラジエントのクリーンアップ工程が重要です。イオン強度を高めるか、溶媒の pH を変化させるか、あるいはその両方の手段を用いれば、タンパク質を溶離させることができます。そのため、各分析の最後に、カラムを平衡化して、イオン強度や pH を最初の条件に戻す必要があります。そうしないと、タンパク質とカラムの相互作用が変化し、次のカラム使用時に異なるプロファイルが生じてしまいます。

ワークフローを簡単にするソフトウェア

Agilent Buffer Advisor ソフトウェアは、バッファ前処理、バッファ混合、pH スカウティングといった面倒でエラーの生じがちなメソッド開発手順を排除することで、ワークフローを簡単にします。Agilent 1260 Infinity Bio-inert クオータナリポンプのミキシング原理を活用した Buffer Advisor ソフトウェアは、わずか 4 つの原液から溶媒を自動で調製します。これにより、バイオ分析のワークフローを簡略化し、バッファ調製に要する時間を大幅に短縮することが可能です。また、バッファがより正確に調製されるため、他のラボへのメソッド移管の頑健性も高まります。

増え続ける課題に対応するためには優れたソリューションが必要です。

アジレントのソリューションを使用すれば、革新的な疾病研究、創薬の加速化、開発および製造の信頼性向上が可能になります。メソッドの開発の詳細については、アジレントの新しい「Ion-Exchange Chromatography for Biomolecule Analysis: a “How to” Guide (イオン交換クロマトグラフィーによる生体分子分析:ハウツーガイド)」をご覧ください。IEX メソッドを簡単に既存のワークフローに統合できることがわかるはずです。また、アジレントの幅広い BioHPLC カラムや、ゲノム研究、自動化、分離、検出技術などの幅広いソリューションの詳細もご確認ください。これらのアジレント製品は、効果の高い医薬品を市場に送り出すうえで、お客様が必要な答えを得られるように支援するものです。