Access Agilent 2013年8月号

Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラを連結した 7890G GC/5977A MSD による、堅牢で感度と再現性に優れた USP <467> 残留溶媒分析

Craig Marvin
アジレント GPD ソリューションズビジネスマネージャ

医薬品原料 (API) 、賦形剤、薬剤の製造元は、純度の向上、特性の開発、収率の向上のために多くの化学溶媒を使用します。こうした溶媒には毒性と環境有害性があり、最終製品からの除去が非常に難しい場合があります。そのため、日米EU医薬品規制調和国際会議 (ICH)、米国薬局方 (USP)、および欧州薬局方 (EP) といった規制機関はいずれも、医薬品製剤中の残留溶媒の規制値を定めています。

ヒトの健康へのリスクに基づき、USP <467> は、残留溶媒を下記 3 クラスに分類しています [1]。

クラス 1 残留溶媒:避けるべき溶媒

  • ヒトにおける発がん性が知られている溶媒
  • ヒトにおける発がん性が強く疑われる溶媒
  • 環境に有害な溶媒

クラス 2 残留溶媒:残留量を規制すべき溶媒

  • 遺伝毒性は示さないが動物における発がん性を示した溶媒、または神経毒性などの不可逆的な毒性を引き起こすおそれのある薬剤
  • その他の重大ではあるが可逆的な毒性が疑われる溶媒

クラス 3 残留溶媒:低毒性の溶媒

  • ヒトに対して低毒性と考えられる溶媒。健康上の理由からは曝露限度値の設定は不要

Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラAgilent 7890B ガスクロマトグラフ および 5977A 質量分析装置 と組み合わせると、USP <467> に準拠した クラス 1、クラス 2A、クラス 2B の有機揮発性不純物 (OVI) について、正確で信頼性の高い分析を行うことができます。

再現性は USP <467> 限界濃度要件に適合

このアナライザの USP <467>への 適合性評価を行うため、クラス 1、クラス 2A およびクラス 2B の残留溶媒を純水で前処理して規制値の濃度に調製しました (図 1~図 3)。カラム、分配係数(k)、速度、容量、使いやすさなどのバランスを考えて構成したAgilent 7697A HS/7890B GC/5977A MSDシステムを使用して、USP <467> 手順 A (同定および検出限界試験) に準拠した分析を行いました。

クラス 1 残留溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

図 1.クラス 1 残留溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。(図を拡大)

クラス 1 残留溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

図 1.クラス 1 残留溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

図 2. クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。(図を拡大)

クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

図 2. クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC)。

クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC) の拡大図 (ピーク番号については図 2 を参照)。

図 3. クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC) の拡大図 (ピーク番号については図 2 を参照)。(図を拡大)

クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC) の拡大図 (ピーク番号については図 2 を参照)。

図 3. クラス 2A 溶媒の全イオンクロマトグラム (TIC) の拡大図 (ピーク番号については図 2 を参照)。

ヘッドスペース内では電子制御 (EPC) によってサンプリングを制御するため、キャリーオーバーを最小限に抑えられた正確で再現性の高いサンプリングを実現することができます。Agilent 7697Aはベント圧力も制御されているため、高い柔軟性や再現性、および感度 (各々の規制化合物の電子制御 (EPC) の k (分配係数)値によって異なります) が向上します。

アジレントが行った分析 [6]では、マルチモード注入口からスプリット比を 20 : 1 にして注入することで良好な感度と再現性が得られました。スプリット注入を行うと、サンプルループにあるサンプルを一気にカラムに移動するのに十分なガス流量が得られました。分離にはAgilent VF-624MSを使用し、データ解析にはAgilent MassHunter Workstation ソフトウェアを使用しました。

表 1 に、すべての溶媒クラスのスキャン RSD(相対標準偏差) と、クラス 2A 溶媒の選択イオンモニタリング (SIM) RSD をまとめています。このシステムは、大部分の化合物で RSD 2.5% 未満という優れた再現性を示しました。分配係数k の値が低い化合物は、概してサンプル前処理によるばらつきが原因で、さらに高い RSD を示しました。一般的にサンプルをジメチルスルホキシド (DMSO)やジメチルアセトアミド (DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI) などの溶媒、または DMSO/水の混合溶媒で調整すると、ピーク強度が変化することがあります。しかし、これらの溶媒系で前処理したサンプルの分析再現性は、本研究で使用した水系希釈サンプルと同等か、または良好な RSD 値を示します。

化合物

USP 規制値値 (ppm)

スキャン RSD (%)

SIM RSD (%)

クラス 1

n=8

1,1-ジクロロエテン

8

0.9

 

1,1,1-トリクロロエタン

1500

1.9

 

四塩化炭素

4

1.5

 

ベンゼン

2

0.7

 

1,2-ジクロロエタン

5

0.9

 

クラス 2A

n=10

メタノール

3000

2.8

2.4

アセトニトリル

410

3.3

2.3

ジクロロメタン

600

2.5

2.2

trans1,2-ジクロロエテン

1870

2.4

2.2

cis1,2-ジクロロエテン

1870

2.1

2.1

テトラヒドロフラン

720

3.0

2.2

シクロヘキセン

3880

2.7

1.3

メチルシクロヘキサン

1180

4.3

1.6

1,4-ジオキサン

380

2.6

2.3

トルエン

890

0.7

2.0

クロロベンゼン

360

1.9

2.1

エチルベンゼン

2170

1.9

2.1

m- キシレン、p- キシレン

2170

2.1

1.8

o- キシレン

2170

2.1

1.8

クラス 2B

n=9

ヘキサン

290

3.2

 

ニトロメタン

50

3.8

 

クロロホルム

60

2.5

 

1,2-ジメトキシエタン

100

2.7

 

トリクロロエテン

80

2.5

 

ピリジン

200

3.9

 

2-ヘキサノン

50

2.4

 

テトラリン

100

2.5

 

表 1. 残留溶媒 クラス 1、クラス 2A、およびクラス 2B の再現性。(すべてのクラスのスキャンデータとクラス 2A の SIM データを示します。水系希釈溶液中の規制濃度に調製しました。)

Agilent 7697A HS/7890B GC/5977A MSD で構成した残留溶媒アナライザは、USP <467> 準拠の残留溶媒分析において驚くべき再現性を示します。MSD を組み込んだことで、API、賦形剤および医薬品に含まれる有機揮発性不純物 (OVI) の分析、とりわけ創薬の際に未知残留物を同定したり生産規模の拡大を図るときに、強力なツールとなります。

Agilent 7697A HS/7890B GC/5977A MSD の構成は、未知残留物の同定が重要になる創薬や工程の規模拡大時には特に有用です。本項で説明したメソッドは残留溶媒分析の内部手順開発の基礎となります。

 

  1. USP 32-NF 27, General Chapter USP <467> Organic volatile impurities, United States Pharmacopeia. Pharmacopoeia Convention Inc., Rockville, MD, 8/2009
  2. Albert E Gudat and Roger L.Firor, “Improved Retention Time, Area Repeatability, and Sensitivity for Analysis of Residual Solvents”, Agilent Application Note 5989-6079EN
    日本語:残留溶媒分析におけるリテンションタイム、ピーク面積再現性および感度の向上 5989-6079JAJP
  3. Roger L. Firor, “Analysis of USP<467> Residual Solvents with Improved Repeatability Using the Agilent 7697A Headspace Sampler”, Agilent Application Note 5990-7625EN
    日本語:ヘッドスペースサンプラ再現性に優れた USP <467> 残留溶媒分析 5990-7625JAJP
  4. Bart Tienpont, Frank David, Pat Sandra, and Roger L. Firor, “Analysis of USP<467> Residual Solvents using the Agilent 7697A Headspace Sampler with the Agilent 7890B Gas Chromatograph”, Agilent Application Note 5991-1834EN
  5. Roger L. Firor, “Optimizing Vial Pressurization Parameters for the Analysis of USP<467> Residual Solvents Using the 7697A Headspace Sampler”, Agilent Application Note 5990-9106EN
  6. Roger L. Firor and Mke Szelewski, “Applying the Agilent 5977A MSD to the Analysis of USP<467> Residual Solvents with the 7697A Headspace Sampler and 7890B GC”, Agilent Application Note 5991-2079EN
    日本語:USP<467> 残留溶媒の分析 5991-2079JAJP