Access Agilent 2013年7月号

医薬品不純物同定のメソッド開発を軽減する 2D-LC/MS のハートカッティングアプローチ

Siji Joseph
アジレントアプリケーションサイエンティスト

医薬品有効成分 (API) に含まれる不純物の検出と同定は、製薬企業において重要な分析です。このような分析には、LC/MSが広く用いられています。多くの場合、UVなど一般的なLCの検出器を用いて開発したメソッドを、LC/MS 用のメソッドに変換します。その際、注意しなければならないのは、MS では揮発性移動相しか使用できないことです。そのため、初期に開発したLC 用メソッドで不揮発性移動相が用いられている場合は、問題が生じることになります。解決策の 1 つとして、ハートカッティングによる2D-LCを用いて、第 2 のカラムに不純物ピークを移したときにMS 分析用の揮発性移動相を使用することです。

先日、ハートカッティング 2D-LC/MS を用いて、リテンションタイムの近い不純物を分離する実験をおこないました。この実験には、バイナリポンプを1台追加した Agilent 1260 Infinity バイナリ LC システムと、Agilent 6540 Q-TOF LC/MS システムを使用しました。

 ハートカッティングアプローチを用いた不純物同定のワークフロー。2D-LC/MS 分析における一次元目のLCメソッドには、UVなど一般的なLCの検出器を用いて開発したものと同じ LC メソッドを使用しています。

図 1. ハートカッティングアプローチを用いた不純物同定のワークフロー。2D-LC/MS 分析における一次元目のLCメソッドには、UVなど一般的なLCの検出器を用いて開発したものと同じ LC メソッドを使用しています。(図を拡大)

 ハートカッティングアプローチを用いた不純物同定のワークフロー。2D-LC/MS 分析における一次元目のLCメソッドには、UVなど一般的なLCの検出器を用いて開発したものと同じ LC メソッドを使用しています。
 

図 1. ハートカッティングアプローチを用いた不純物同定の
ワークフロー。2D-LC/MS 分析における一次元目のLCメソッドには、
UVなど一般的なLCの検出器を用いて開発したものと同じ LC メソッドを
使用しています。

データ処理には、不純物同定および構造解析に対応する高度なアルゴリズムを使用しました。このアルゴリズムは定性解析ソフトAgilent MassHunterに標準装備される、Molecular Feature Extraction (MFE)、Molecular Formula Generation (MFG) のほか、MassHunter Molecular Structure Correlator (MSC) があります。ここでは、デュロキセチン製剤原料で検出された不純物を同定し、ワークフロー全体の有効性を実証しました。

MS 対応メソッドの開発が不要に

文献に記載されているバリデーション済みの MS 非対応液体クロマトグラフィーのメソッドを用いて、デュロキセチン API の不純物分析を実施したところ、メインピークの末端付近で未知不純物が溶出しました。一次元目の分離用ポンプ 1 では、Agilent ZORBAX Eclipse Plus C-18、4.6 × 250 mm、5.0 µm カラムを使用しました。2 ポジション/6 ポートの切り替えバルブにより、この不純物を第 2 の LC カラムへ流しました。その後、二次元目のポンプに MS に対応した移動相を用いて、この不純物を分離しました。

このアプローチにより、MS 対応 LC メソッドを開発する必要がなくなりました。Agilent 6540 Q-TOF を用いて、不純物の精密質量 MS および MS/MS データを採取しました。Agilent MassHunter Workstation および Agilent Molecular Structure Correlator (MSC) 機能を用いたデータ処理により、未知不純物を迅速に同定することができました。図 1 に、実験のワークフローを示しています。

この実験では、Agilent Jet Stream イオン源を搭載する Agilent 6540 Q-TOF LC/MS と、Agilent 1260 Infinity バイナリ LC システムを使用しました。使用したモジュールとカラムは以下のとおりです。

  • Agilent 1260 Infinity デガッサ、一次元目および二次元目用
  • Agilent 1260 Infinity バイナリポンプ 2 台、一次元目および二次元目用
  • Agilent 1260 Infinity 高性能オートサンプラ
  • Agilent 1260 Infinity カラムコンパートメント、
    2 ポジション/6 ポート切り替えバルブ搭載
  • Agilent 1290 Infinity ダイオードアレイ検出器、Max-Light フローセル搭載
    (容量 4.0 µL、光路長 60 mm)
  • カラム 1:Agilent ZORBAX Eclipse Plus C-18、4.6 × 250 mm、5.0 µm
  • カラム 2:Agilent ZORBAX Eclipse Plus C-18、4.6 × 75 mm、3.5 µm
 ハートカッティングプロセスの前、最中、後のバルブポジション。赤は MS 非対応移動相のフローパス (1)、緑は MS 対応移動相のフローパス  (2) を示しています。

図 2. ハートカッティングプロセスの前、最中、後のバルブポジション。赤は MS 非対応移動相のフローパス (1)、緑は MS 対応移動相のフローパス  (2) を示しています。
(図を拡大)

 ハートカッティングプロセスの前、最中、後のバルブポジション。赤は MS 非対応移動相のフローパス (1)、緑は MS 対応移動相のフローパス  (2) を示しています。
 

図 2. ハートカッティングプロセスの前、最中、後のバルブポジション。
赤は MS 非対応移動相のフローパス (1)、
緑は MS 対応移動相のフローパス (2) を示しています。

ハートカッティング 2D-LC/MSを容易にする 2 ポジション/6 ポート切り替えバルブ

図 2 では、ハートカッティング 2D-LC/MSを適用する際のバルブポジションを示しています。初期に開発した LC 用メソッド 1 により、8.7 分でカラム 1 から不純物が溶出することを確認しました。その後の 2D-LC/MS によるハートカッティング分析では、8.2~9.0 分にかけてバルブポジションを切り替え、未知不純物をカラム 2 へ移しました。詳細については、アジレントアプリケーションノート 5991-1873EN で紹介しています。

Agilent MassHunter Molecular Structure Correlator (MSC) を用いた不純物同定

MassHunter Qualitative Analysis の MFE および MFG アルゴリズムを用いて、データ解析を実施しました。MFE アルゴリズムにより、すべてのサンプル成分について、高分解能精密質量スペクトルを抽出しました。採取したデータから、298.1257 および 312.1416 という m/z 値をもつ 2 つの候補化合物がリストアップされました。

MFG アルゴリズムにより、各候補化合物の分子式が一覧化され、それぞれが相対的確率に応じてランク付けされます。2 つの候補化合物のプレカーサおよびフラグメントイオンの精密質量情報を MSC 機能にアップロードし、ChemSpider データベースで候補となるすべての構造を検索しました。この検索により、m/z 298.1257 がデュロキセチン API に対応し、未知不純物はデュロキセチンのメチル誘導体であることが確認されました。

詳細をご確認ください

その他の分析結果や詳細については、アジレントアプリケーションノート 5991-1873EN でご覧いただけます。医薬品中の未知不純物の同定に必要な製品をお求めの場合は、アジレント代理店に詳細をお問い合わせください。また、ハートカッティング 2D-LC アプリケーションや包括的 2D-LC アプリケーションを容易にする業界最高クラスの Agilent 1290 Infinity 2D-LC ソリューションの詳細もご確認ください。