Access Agilent 2013年7月号

Agilent 4100 マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (MP-AES) を用いた牛乳の直接分析

Daniela Schiavo
アジレント分光分析アプリケーションエンジニア

George L. Donati、Renata S. Amais、Joaquim A. Nóbrega
サンカルロス連邦大学化学部、ブラジル

Leonel S. Teixeira、Letícia M. Costa
ミナスジェライス連邦大学化学部、ブラジル

多数の複雑なサンプルを低コスト元素測定するという困難な分析に対応するためには、シンプルで効果的なメソッドが求められます。最新のアジレントアプリケーションノート (5991-2071EN) では、シンプルな希釈メソッドで牛乳を分析し、Al、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Zn といった元素を測定する方法を紹介しています。Agilent 4100 マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (MP-AES) を用いて、希釈牛乳サンプルを分析することができます。

サンプル導入には、Agilent OneNeb ネブライザを使用します。Agilent MP Expert ソフトウェアを用いた自動バックグラウンド補正により、マトリックス効果とバックグラウンド発光を最小限に抑え、感度と精度を高めることができます。MP-AES は分析コストやメンテナンスコストが安いことに加え、フレーム原子吸光分光分析 (FAAS) よりも大幅に優れた誘導結合プラズマ発光分光分析 (ICP-OES) に匹敵する検出下限が得られます。

正確性と精度を高めるメソッド

牛乳の直接分析は、牛乳の水溶性が比較的高いことから、一見すると魅力的なサンプル前処理手法のように思われます。しかし、牛乳は脂肪乳剤、カゼインミセル粒子、水性層などの性質の異なる成分からなる、複雑なコロイド系です。一部の分析対象物は、そうした各相に異なる比率で分布します。また、サンプルの噴霧化に伴う問題により、牛乳水溶液の直接分析における精度と正確性が損なわれることがあります。

そうした問題のいくつかを解消する興味深い手法が、第 3 アミン混合物によるサンプルの希釈です。今回の牛乳分析では、10 % v/v の第 3 アミン混合物を含む pH 8.0 の水性溶液を使用しました。この混合物を使えば、カゼインミセルを分離し、水性相に存在するカチオンを安定化させることができます。

精度と正確性を向上させるもう 1 つのアプローチが、効率的なネブライザの使用です。最近の研究で、Agilent OneNeb ネブライザを使えば、より微細で分布域の狭いエアロゾルを生成でき、感度と精度、正確性が向上することが明らかになっています。

手法の精度を評価するために、米国標準技術局 (NIST) から入手した無脂肪粉ミルク (SRM 1549) の標準参照物質を分析しました。粉ミルク約 0.1 g を pH 8.0 で 10 % v/v CFA-C に溶解し、最終体積を 10 mL としました (CFA-C は第 3 アミンの水溶性混合物で、ニューヨーク州ウォリックの Spectrasol から入手しました)。2 分間攪拌し、溶液を比較的透明な状態にしました。

また、市販の無脂肪牛乳サンプルも分析しました。サンプル 0.5 mL を pH 8.0 で 10 % v/v CFA-C により希釈し、最終体積を 10 mL としました。添加実験により手順の精度を確認しました。

元素

LODa (µg/L)

LOQa (µg/L)

液体牛乳サンプル中の LODb (µg/L)

Al

1.4

4.5

28

Cr

0.8

2.8

16

Cu

2.4

7.9

48

Fe

0.4

1.5

8.0

Mg

76

250

1500

Mn

3.8

13

76

Zn

28

95

560

a 機器検出下限および機器定量下限
b サンプル希釈を考慮した検出下限 (CFA-C 10 % v/v 中で牛乳 1:20 v/v、pH 8.0)

表 1. MP-AES の優れた検出下限と定量下限

フレーム原子吸光(FAAS) の 10 倍の感度

ブランク測定をもとに、検出下限 (LOD) と定量下限 (LOQ) を算出しました。表 1 に、すべての分析対象元素の値を示しています。この結果から、4100 MP‑AES の優れた検出力が裏づけられました。マイクロ波プラズマは、FAAS などの手法と比べると、特に大きな利点があります。FAAS では、Cr および Al の測定に亜酸化窒素などの酸化ガスが必要となります。また、4100 MP‑AES で得られた LOD は、FAAS で一般的に得られる値よりも 1 桁近く低くなっています。

マトリックス干渉の排除による優れた精度

メソッドの精度を評価するために、無脂肪粉ミルク (NIST SRM 1549) の標準参照物質を分析しました。Al および Mg について、それぞれ 100 % および 108 % の回収率が得られました。この SRM 中の Cr、Cu、Fe、Mn、Zn の濃度は LOD 未満でした。そのため、無脂肪牛乳サンプルを用いて、添加実験も実施しました。Cu、Fe、Mg については、妥当な精度が得られました。外部較正では、Al、Cr、Mn、Zn の回収率が低くなりました。このことは、これらの元素でマトリックス干渉が生じていることを示しています (外部較正は、マトリックス適合をおこなわずに実施)。これらの元素については、標準添加手法により、妥当な回収率 (90~112 %) が得られました。

優れた結果が得られる簡単なメソッド

以下の要素を組み合わせれば、牛乳の直接分析が可能になります。

  • CFA-C によるサンプル希釈(第 3 アミン混合物による希釈)
  • Agilent OneNeb ネブライザ
  • Agilent 4100 MP-AES による測定

このシンプルで効果的な手法は、ルーチン分析に容易に導入することができます。分析およびメンテナンスのコストが比較的安いことに加え、4100 MP-AES の検出力は ICP‑OES に匹敵し、FAAS 手法を大きく上回ります。

この分析の詳細については、アジレントアプリケーションノート 5991-2071EN をご覧ください。合わせて、Agilent 4100 MP-AES のウェブページもご覧ください。