Access Agilent 2013年6月号

FTIRによる牛乳中混和物濃度のコスト効率の良いオンサイト測定

Alan Rein
アジレント市場開発および戦略マネージャ、モバイル FTIR

Luis Rodriguez-Saona 教授
食品科学技術部、オハイオ州立大学

牛乳は不純物混和による品質低下がおこなわれることの多い食品で、生産者と消費者双方にとって懸念材料となっています。一般的な牛乳混和物としては、水、乳清、水酸化ナトリウム、尿素、メラミン、その他の有害物質などがあります。牛乳への不純物混和は、人工的に嵩を増したり、品質の悪さを隠したりすることで、経済的な利益を得る目的でおこなわれます。

そのため生産者は、牛乳混和物を検出し、濃度を測定することのできる使いやすい分析手法を必要としています。Agilent Cary 630 FTIR 分光光度計を用いて牛乳中の混和物を測定した最近の文献 [1] では、こうした分析にはFTIR システムが適していることが示されています。

近年、使いやすい専用 FTIR アナライザが発売されたことで、牛乳中混和物のスクリーニングや特定の汚染物質の濃度測定が、従来の分析手法を用いた場合よりも簡単になり、高速化されています。こうした FTIR アナライザは、経験の浅い人でも現地でオンサイト測定ができるように設計されています。これにより、酪農業界の生産性を高めることが可能になっています。

gilent Cary 630 FTIRは、ルーチン QA/QC およびメソッド開発に最適です。Agilent 5500 FTIR アナライザは、オンサイト生産ラボでのメソッド導入に適しています。

図 1. Agilent Cary 630 FTIRは、ルーチン QA/QC およびメソッド開発に最適です。Agilent 5500 FTIR アナライザは、
オンサイト生産ラボでのメソッド導入に適しています。

メソッド開発および配備に適したコンパクトなオンサイト FTIR システム

アジレントは、超コンパクトな FTIR およびアナライザファミリー (図 1) を発表しました。これらの機器では、従来のシステムと同じ光学系、ソフトウェア、サンプリング技術が用いられています。多目的メソッド開発および QA/QC には、Agilent Cary 630 FTIR が最適です。特定の FTIR ベースのソリューションを配備する場合、Agilent 5500 FTIR アナライザがオンサイトでのルーチン分析に最適なプラットフォームとなります。どちらのシステムでも、ダイヤモンドATRと、液体牛乳サンプル分析に適したアジレント独自の DialPathが用いられています。

以下の 2 種類のメソッドを用いて、牛乳中の混和物を測定しました。

  • 混和物の有無を検出するスクリーニングメソッド、
    DialPath搭載 Agilent FTIR アナライザを使用
  • 具体的な混和物の同定および測定、
    ダイヤモンド ATR 搭載した Agilent FTIR アナライザを使用

スクリーニングメソッドでは、サンプル前処理なしで牛乳を直接測定することができるため、超高速分析が実現します。専用の Agilent 5500 または 4500 可搬型 FTIR でこのテクニックを用いれば、製品受け渡し地点で効果的にスクリーニングをおこなうことが可能です。

簡単なサンプル前処理手順を用いた第 2 のメソッドでは、混和物を正確に同定および測定することができます。このテクニックを使えば、従来の分析手法に代わって、牛乳中汚染物質の濃度を迅速に測定することが可能です。

希釈牛乳の MIR スペクトルは、水に起因する影響を受けています。30 ミクロン光路長の使用により、 MIR フィンガープリント領域のスペクトル情報を分析に使用することができます。

図 2. 希釈牛乳の MIR スペクトルは、水に起因する影響を受けています。30 ミクロン光路長の使用により、
MIR フィンガープリント領域のスペクトル情報を分析に使用することができます。
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希釈牛乳の MIR スペクトルは、水に起因する影響を受けています。30 ミクロン光路長の使用により、 MIR フィンガープリント領域のスペクトル情報を分析に使用することができます。

図 2. 希釈牛乳の MIR スペクトルは、水に起因する影響を受けています。
30 ミクロン光路長の使用により、MIR フィンガープリント領域のスペクトル情報を
分析に使用することができます。

活性の高い有機リン農薬を用いたこのピーク形状の比較では、標準ゴールドおよび Siltek シールを用いた場合と比べて、ウルトライナートゴールドシールのほうが優れたピーク形状が得られることがわかります。

図 3. 単反射 ATR を用いた FTIR分光光度計で記録した粉ミルクフィルムのスペクトルにより、違いが明らかになっています。
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単反射 ATR を用いた FTIR 分光光度計で記録した粉ミルクフィルムのスペクトルにより、違いが明らかになっています。
 

図 3. 単反射 ATR を用いた FTIR 分光光度計で記録した粉ミルクフィルムのスペクトル
により、違いが明らかになっています。

数分で結果が得られるスクリーニングメソッド

図 2に示すように、牛乳サンプルのスペクトルは、水に起因する強い吸光度の影響を受けています。3300 cm-1 を中心とする O-H 帯域では、中赤外 (MIR) 光が完全に吸収されていますが、2000~800 cm-1 の情報量の多いフィンガープリント領域には、利用可能な情報が含まれています。

全体的な希釈レベルをもとに部分最小二乗法モデルを開発したところ、赤外推定濃度と、添加プロセスにより得られた希釈レベルとのあいだで、良好な相関性が見られました。

DialPath では、ウィンドウを拭くだけでクリーニングし、次の牛乳サンプルに備えることができます。この効率的なスクリーニングメソッドなら、サンプル導入からクリーンアップまでが 2 分未満で完了します。牛乳サンプルが希釈されている場合には、Agilent Microlab FTIR ソフトウェアが色分けされたアラートにより通知します。

牛乳中の特定の汚染物質を識別

粉ミルクのフィルムでは、対照サンプルと添加サンプルの大きな違いが示されています。たとえば、乳清を添加した牛乳では、1635 cm-1 および 1530 cm-1のタンパク質アミド I および II バンドに関連する 2 つの強い吸光領域が見られます。尿素、合成乳、尿を添加したサンプルでは、1615 cm-1 および 1454 cm-1 で C=O および NH4+ 吸光に起因する強いバンドが見られます。

時間の短縮とコストの削減

DialPathを搭載した Agilent FTIR アナライザにより、希釈率 3 % v/v という低濃度で不純物を混和した牛乳サンプルのスクリーニングに対応できる、導入の容易な高速メソッドが実現します。ダイヤモンドATRを搭載したこれらのシステムを使えば、粉ミルクフィルムに含まれる一般的な混和物を測定することが可能です。乳製品処理施設にあるラボでこの技術と手法を組み合わせれば、従来のメソッドよりも時間とコストを節約できる牛乳分析メソッドが実現します。
 

謝辞

メソッド、データ、有益な考察を提供してくださったオハイオ州立大学食品科学技術部の Luis Rodriguez-Saona 教授の研究グループに感謝します。

References

  1. 1.P. M. Santos, E. R. Pereira-Filho, L. E. Rodriguez-Saona, “Application of handheld and portable infrared spectrometers in bovine milk analysis” J. Agric. Food Chem., 2013, 61 (6), 1205–1211.