食品工業界では、食品に用いられる原材料と成分の分析、認証、および特性評価を行うことに力を注いでいます。製造業者は、製造工程で生じてはならないとされる規格はずれ、不純物混入、あるいは誤った成分表示が無い事を確認しなければなりません。理想的な検査場所としては、発送センター、トラックストップあるいは、鉄道車両があげられます。製造業者は、ラボにおける品質分析だけでなく、経験の浅い作業者がサンプル採集地の近くで使用できるよう十分に頑丈で直観的な新しい分析ツールを必要としています。アジレント FTIR システムは、その必要を満たします。
最近のアプリケーションノートのシリーズでは、小型で頑丈なラボ FTIR の Agilent Cary 630 FTIR分光光度計が、食品に用いられる原材料と成分の分析、特性評価、および検査に効果的である実例を紹介しました。アジレントは、4500 シリーズ携帯型 FTIR 分光光度計および 5500 シリーズ小型 FTIR 分光光度計を用い、オンサイトにおける食品アプリケーションに FTIR の能力を利用しています。それらの分光光度計は、Cary 630 と同じ光学系および革新的な ATR (Attenuated Total Reflectance) サンプリング技術を用い、その上、サンプル採集地の近くでの測定が必要なアプリケーション用に設計されています。
図 1. Cary 630 FTIR 分光光度計 –
QA/QC ラボ用
図 2. 4500 FTIR アナライザ – バッテリー電源、
発送センター、貨車あるいは、他の遠隔地での
分析用
図 3. 5500 FTIR アナライザ – ラボにおける分析用
これらの Agilent FTIR 分光光度計は、食品工業界で用いられている原材料と成分の分析に大変適しています。以下の理由があげられます。
30 秒以内に食品成分を測定します。 – 必要とされるならば、どこでも
Agilent FTIR アナライザは、生産担当者がスポットで合否判定を行うことができ、食品製造の品質および生産性を改善します。
種々の粉末ミルクプロテイン、砂糖、小麦粉、およびコーヒーを測定するため、一回反射ダイアモンド ATR サンプリング技術を備えた Agilent FTIR アナライザを使用しました。この文献では、砂糖についての結果を示します。すべてのケースで、Agilent Microlab FTIR スペクトルライブラリビルダーを用い、代表的な紛体のデータベースを構築しました。その次に、異なった多くの紛体のスペクトルを測定し、それらを未知物として見なしました。未知物のスペクトルは、未知物の同定およびマッチ品質を表す数値を提供する Microlab 自動スペクトルマッチングアルゴリズムで処理されました。
図 4. 一回反射ダイアモンド ATR によって測定された砂糖の赤外スペクトル(図を拡大)
図 5.未知の砂糖サンプルのスペクトルとオンボードライブラリのリファレンススペクトルとの自動マッチングが行われ、未知の砂糖サンプルが同定されました。(図を拡大)
複数の砂糖のスペクトルが、明らかに同一であることを示します。
種々の砂糖を化学的に識別することは、視覚的に、ほとんど不可能です。これまでのところ多くの製造業者は、製品に正しい砂糖が使用されていることを確認するため、クロマトグラフ法を使用しています。この方法は、時間がかかり、ラボ環境の外で使用することができません。その一方、種々の砂糖 (図 4) のスペクトルは、砂糖の識別を明瞭に洞察できることを示しており、Agilent FTIR アナライザのスペクトルライブラリマッチング能力を用いて、数学的に確認されます (図 5)。
迅速で簡単な確認
ATR サンプリング技術を用いている FTIR アナライザは、食品製造業者に、食品工業界に用いられる原材料と成分の同一性、真正性、純度の検証を行うための迅速かつ簡単な方法を提供します。Agilent 4500 および 5500 システムのような十分に持ち運び可能で、現地で使用できる FTIR アナライザは、製造工程の検査場所でサンプルを分析し、確認することができる利点があります。製造工程で生じる規格外の原材料を防ぐことで、製造工程のコストを減らし、食品の安全性および総合的な食品品質を改善することができます。
謝辞
本文献に使用されたデータおよび情報の提供につきましては、McGill 大学の食品科学および農業化学部門の Ashraf Ismail 教授に感謝します。
References