Access Agilent 2013年2月号

Agilent 4100 MP-AES による医薬品用ゼラチンカプセル中クロムの分析

Chunhua Wu、Kun Ouyang
アジレント原子分光分析アプリケーションエンジニア

Zhixu Zhang
アジレントアプリケーションエンジニアマネージャ

2012 年はじめ、中国製の医薬品で用いられる食用ゼラチンカプセルから、過剰な濃度のクロムが検出されました。消費者の安全を守るために、中国国家食品薬品監督管理局 (SFDA) は、2012 年 4 月に警告を公布しました。クロムを過剰に摂取すると、急性および長期的な健康への影響が生じるため、2010 年版の中国薬局方では、ゼラチン中でのクロム摂取の最大許容濃度が 2 mg/kg と定められています。

この研究では、Agilent 4100 マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (MP-AES) を用いた複数の中国製ゼラチンカプセル中のクロム測定を紹介します。以前の記事では、誘導結合プラズマ発光分析 (ICP-OES) を用いた同様の分析を紹介しました。どちらのケースでも、サンプル前処理にあたっては、HNO3 と H2O2 の混合液中でサンプルを200 °Cでマイクロ波加熱分解しました。どちらの分析でも、メソッド検出下限は最大許容濃度の 2 mg/kg を大きく下回りました。

高価な可燃性ガスが不要に

Agilent 4100 MP-AES は、マイクロ波エネルギーを用いて堅牢で安定した窒素プラズマを生成する、革新的かつ迅速分析が可能な原子発光分析装置です。窒素を使うことで、アセチレンなどの高価な可燃性ガスが不要になります。フレーム原子吸光分析 (FAAS) などの従来の元素分析テクニックと比べて使用コストが低く、無人分析が可能になるため、生産性も向上します。

簡単なサンプル前処理

システムの性能を実証するために、5 種類の空のゼラチンカプセルを入手して分析しました。各サンプル 0.5 g を正確に計量してマイクロ波分解容器に入れ、硝酸 8 mL と過酸化水素 4 mL を加えました。

Cr の検量線では、0.99999 という優れた相関係数が得られています。

図 1. Cr の検量線では、0.99999 という優れた相関係数が得られています。(図を拡大)

Cr の検量線では、0.99999 という優れた相関係数が得られています。
 

図 1. Cr の検量線では、0.99999 という優れた相関係数が得られています。

その後、分解容器を密閉し、サンプルをマイクロ波加熱分解しました。分解完了後、分解容器の中味を冷却したのち、25mL 容量フラスコに移し、最大容量になるまで高純度水を加えました。同じ手順で試薬ブランクの前処理もおこないました。

さらに 3 種類のサンプルを作成し、Cr を 50 µg/L添加しました。また、5 % HNO3 中で濃度 5 µg/L~500 µg/L の標準液 6点を作成しました。 1 は、濃度範囲全体にわたって、Cr の検量線で優れた直線性が得られていることを示しています。

優れたメソッド検出下限 (MDL)

MDL は、測定した試薬ブランク濃度 (11 回連続繰り返し分析) の標準偏差の 3 倍 (3σ) と定義されます。定量下限 (LOQ) は通常、3.33 x MDL (または 10σ) と定義されます。得られた MDL は 0.12 mg/kg、LOQ は 0.40 mg/kg でした。これらの値は、中国薬局方(2010 年版) で規定されたゼラチンカプセル中 Cr の許容上限濃度 2 mg/kg に十分に対応できるものです。

優れた添加回収率

5 種類のゼラチンカプセルを無作為に入手し、Cr 含有量を測定しました。分解後のカプセル C、D、E に Cr 2.5 mg/kg (50 µg/L) を添加し、それぞれの回収率を測定しました。回収率は添加値の 10 % 以内でした。この結果は、マトリックスの影響を受けていないことを裏づけています。表 1 に、各種中国製ゼラチンカプセルにおける Cr の添加回収率をまとめています。

サンプル

サンプル中Cr濃度
(mg/kg)

添加サンプル中Cr濃度
(mg/kg)

2.5 mg/kg 添加の添加回収率
(mg/kg および %)

カプセル A 人工牛黄

1.16

---

---

カプセル B ノルフロキサシン

<0.40

---

---

カプセル C アモキシシリン

<0.40

2.43

2.43 (97%)

カプセル D 血行促進鎮痛剤

<0.40

2.30

2.30 (92%)

カプセル E 血行促進鎮痛剤

0.95

3.48*

2.53 (101%)

*サンプル濃度を含む

表 1. 各種中国製ゼラチンカプセルにおける Cr の測定濃度および添加回収率

この研究で紹介した分析では、マイクロ波分解装置を用いて医薬品用ゼラチンカプセルを分解し、Agilent 4100 MP-AES によりクロムを測定することができました。メソッド検出下限は 0.12 mg/kg で、最大許容濃度を 1 桁以上も下回りました。

Agilent 4100 MP-AES の窒素ベースのプラズマは、困難なサンプルマトリックスに対する高い耐性を備えています。また、作業者の安全性が向上し、使用コストも大幅に削減できます。MP-AES は、高価な可燃性ガスを必要とするフレーム原子吸光 などの分析装置に代わる分析手法となります。