Access Agilent 2013年2月号

ピークモデリング (pMod) は糖タンパク質の複雑な違いを識別します

Steve Madden
アジレントソフトウェアソリューションマネージャ

モノクローナル抗体 (mAbs) などの巨大タンパク質の分析には、特別な困難が伴います。高分子量免疫グロブリン (Ig) では、修飾の異なるイソ型が存在することがあり、この様なイソ型は小さな質量差が生じます。異なるイソ型の質量ピークは、ゼロ電荷にデコンボリューションされたスペクトルでは分離されないことがあります。

たとえば、免疫グロブリン G1 (IgG1) と免疫グロブリン G2 (IgG2) は、分子量が 145,000 ダルトン近くになりますが、各 mAb の糖型の 1 つは、分子量の違いがわずか 37 ダルトンです。従来の最大エントロピーデコンボリューション [1] では、IgG などの高分子の多価チャージ質量スペクトルを採取し、異なる電荷状態の m/z ピークを利用してデコンボリューションします。これにより、目的の分子量サイズを質量範囲に含む質量分析計で得られたような、高分子の典型的な質量スペクトル (ゼロ電荷スペクトルと呼ばれます) が生成されます。

幅の広い最大エントロピーピークでは、分子量の近いタンパク質を区別できません。質量144787の広いピークには、IgG1とIgG2から生じた、分離されていない2つのピークが含まれています。

図 1. 幅の広い最大エントロピーピークでは、分子量の近いタンパク質を区別できません。質量144787の広いピークには、IgG1とIgG2から生じた、分離されていない2つのピークが含まれています。(図を拡大)

幅の広い最大エントロピーピークでは、分子量の近いタンパク質を区別できません。質量144787の広いピークには、IgG1とIgG2から生じた、分離されていない2つのピークが含まれています。

図 1. 幅の広い最大エントロピーピークでは、分子量の近いタンパク質を区別できません。
質量 144787 の広いピークには、IgG1 と IgG2 から生じた、分離されていない2つのピークが含まれています。

しかし、従来の最大エントロピーの質量ピークは、幅がやや広く、分子量の近いタンパク質を分離することができません。 1 に示す質量スペクトルは、IgG1 と IgG2 を混合したサンプルのものです。質量 144787 の広いピークには、IgG1 と IgG2 から生じた、分離されていない 2 つのピークが含まれています。

より明確で正確な結果を得られるピークモデリング

アジレントは、ピークモデリング (pMod) と呼ばれる新たなデコンボリューションメソッドを最新版の MassHunter BioConfirm (B.06.00) ソフトウェアに導入し、この問題を解決しました。pMod では、最大エントロピーデコンボリューションをもとに、ピークモデルが作成されます。ソフトウェアのモデルに適合しないデータは、ノイズとして排除されます。このモデリングでは、適合するピークのみがレポートされるため、最大エントロピーデコンボリューションで得られるものよりもずっと明確な結果が得られます。

MassHunter バージョン B.06.00 ソフトウェアに搭載された新たなメソッドでは、アーティファクトがほとんど生じません。これは、ソフトウェアの自動ピークモデリングテクニックだけでなく、複数の拡張機能にもよるものです。たとえば、キャリブレーションエラーと物理原則を適用し、実験ルールに一致する質量のみをレポートする機能などです。これにより、数学的には妥当でもルールに一致しない質量は除外されます。

図 1 のデコンボリューションデータに pMod を適用しています。分離能が向上し、分子量が近い IgG1 と IgG2 のピークの区別が容易になっています。

図 2. 図 1 のデコンボリューションデータに pMod を適用しています。分離能が向上し、分子量が近い IgG1 と IgG2 のピークの区別が容易になっています。(図を拡大)

図 1 のデコンボリューションデータに pMod を適用しています。分離能が向上し、分子量が近い IgG1 と IgG2 のピークの区別が容易になっています。

図 2. 図 1 のデコンボリューションデータに pMod を適用しています。分離能が向上し、分子量が近い IgG1 と IgG2 のピークの区別が容易になっています。

2 は、図 1 と同じデコンボリューションされたデータを示していますが、こちらの図には pMod を適用しています。

pMod 適用後は、質量ピークの幅がずっと狭くなり、分離能も良好になっています。それにより、最大エントロピーに比べてシグナル/ノイズ比が向上しています。また、このピーク幅により、化合物の質量測定の精度が得られています。IgG1 と IgG2 のオーバーラップするピークが良好に分離され、別の化合物として同定することが可能になっています。pMod のピーク面積を用いて相対的な定量分析をおこない、タンパク質濃度を測定することができます。

ピークモデリングを活用して分析結果を向上

アジレントの新しい pMod デコンボリューションメソッドは、複雑なタンパク質サンプルからよりより有益な情報を引き出すことを可能にするものです。pMod を適用すれば、ゼロ電荷質量スペクトルからアーティファクトを排除し、分子量の近いタンパク質を区別することができます。クリーンなスペクトルにより質量測定の標準偏差が得られるため、相対的な定量にも使用可能です。pMod と MassHunter BioConfirm (B.06.00) ソフトウェアの多くの利点の詳細については、アジレントのウェブサイトをご覧ください。その後、質量分析用のピークモデリング電荷デコンボリューションメソッドによるインタクトタンパク質データの拡張および自動解析を説明したポスターをダウンロードしてください

References

  1. Disentangling electrospray spectra with maximum entropy. A. G. Ferrige, M. J. Seddon, B. N. Green, S. A. Jarvis, J. Skilling, J. Staunton, Rapid Communications in Mass Spectrometry, Volume 6, Issue11, Pages 707-711 (1992).