高性能および高感度 LC/MS システムの使用が急速に拡大していることで、食品分析に対応できる堅牢なサンプル前処理の必要性が生じています。アジレントのサンプル前処理製品を使えば、あらゆる分離および検出メソッドに対応できる、干渉のないサンプル抽出物が得られます。カラムや検出器にダメージを与えることもありません。
この記事では、食品サンプル前処理に最適化したメソッドの最新事例 2 つを紹介します。Agilent Bond Elut QuEChERS キットを用いたメソッドと、Agilent モノリシックディスク固相抽出 (SPE) を用いたメソッドです。
ペットの健康を守る
ペットフードの安全性には、ペットフードに含まれる保存料が関わってきます。特に、保存料が癌などの長期的な問題に関連する場合や、アレルギー反応を引き起こす場合は、なおさらです。最近の分析では、ブチル化ヒドロキシトルエン (BHT)、ブチルヒドロキシアニソール (BHA)、エトキシキンというペットフードに含まれる 3 種類の保存料に注目しました。いずれも、脂肪の酸化や酸敗化を遅らせるために一般的に使用されています。
分析では、最適化した Agilent Bond Elut QuEChERS (高速 (Quick)、簡単 (Easy)、低価格 (Cheap)、効果的 (Effective)、堅牢 (Rugged)、安全 (Safe)) サンプル前処理メソッドに、液体クロマトグラフィ/質量分析装置 (LC/MS/MS) を組み合わせて使用しました。このメソッドでは、ペットフードの最終製品に含まれる 3 種類の保存料を確実に同定および定量することができました [1]。
抽出したペットフードを用いて、複数の分散 SPE の組み合わせを試しました。1 つまたはすべてのターゲット保存料が遍在していることから、「ブランク」ペットフードサンプルを決めるのは困難でした。しかし、最終的には、抽出前および抽出後添加ペットフードサンプルをブランクとともに使用しました。これにより、抽出性能を効果的に評価することができました。
ペットフードサンプルの前処理にあたっては、3 種類の保存料を 200、400、600、800、1,000 µg/L の濃度で添加しました。これらは、通常の汚染物質分析からすると比較的高い濃度です。この濃度を採用したのは、米国における動物飼料中のエトキシキンの上限濃度が高く設定 (150 mg/L) されているためです。
表 1 に、BHA、BHT、エトキシキンの精度と相対回収率を示しています。これらの結果から、3 種類の保存料を確実に定量するために必要な精度と抽出効率が得られていることがわかります。
保存料 |
400 µg/L |
600 µg/L |
800 µg/L |
||||||
精度 (%) |
RSD* (%) |
精度 (%) |
RSD (%) |
精度 (%) |
RSD (%) |
||||
エトキシキン |
64 |
4 |
57 |
6.5 |
55 |
5.4 |
|||
BHA |
101 |
1.5 |
100 |
3.6 |
100 |
1.0 |
|||
BHT |
103 |
7.6 |
110 |
6.5 |
130 |
6.9 |
*RSD = 相対標準偏差
表 1. Agilent Bond Elut QuEChERS を用いて最適化したメソッドにより、ペットフード中保存料の分析で精度と正確性が得られています。
図 1. Agilent Bond Elut QuEChERS および Agilent Poroshell 120 SB-C18 カラムを用いて最適化したメソッドによる、ペットフード中保存料の LC/MS/MS 測定
(図を拡大)
図 2. Agilent SPEC MP1 ディスクおよび Agilent Pursuit 3 PFP カラムを用いて最適化したサンプル前処理メソッドによる、ライ麦パン中 4-メチルイミダゾールの LC/MS/MS 測定(図を拡大)
図 3. Agilent SPEC MP1 ディスクおよび Agilent Pursuit 3 PFP カラムを用いて最適化したサンプル前処理メソッドによる、液体カラメル色素中 4-メチルイミダゾールの LC/MS/MS 分析 (所要時間 2 分未満)
(図を拡大)
最適化した QuEChERS サンプル前処理法を用いて、5 種類の市販ペットフードサンプルを分析しました (図 1)。未処理のオーガニックペットフードには、若干の BHT が含まれており、エトキシキンは含まれていませんでした。その他の製品には、高濃度のエトキシキンと、それより低い濃度の BHA か BHT (またはその両方) が含まれていました。
人間の健康を守る
カラメル色素はこげ茶色の液体または固体で、着色添加物として使用されます。カラメル色素の製造プロセスでは、発癌性のおそれがある 4-メチルイミダゾール (4-MEI) など、毒性が疑われる副生成物が生じることがあります。この例では、モノリシック型の材質でできた Agilent SPEC SPE ディスクにより、チャネリングのない一貫したフローが得られました [2]。
この分析では、最適化したサンプル前処理および分析メソッドを開発し、カラメル色素が使用成分として記載されているライ麦パンサンプルを分析しました。パン 2 g から得られた分析結果を図 2 に示しています。10 µg/L 未満の濃度 (算出濃度は 3.9 µg/L) で 4-MEI が検出されました。
その後、最適化したメソッドに従って、5 種類の液体カラメル色素サンプルを抽出および分析しました。4-MEI の濃度は、サンプルにより大きく異なりました (図 3)。しかし、4-MEI の濃度が無視できるレベルのサンプルは 1 つだけでした。また、このサンプル前処理メソッドと LC/MS/MS 検出および定量を組み合わせて、粉末状のカラメル色素を分析した場合でも、同様の結果が得られました。いずれのケースでも、4-MEI の定量結果は、複数の規制当局が定める上限値である 250 µg/L 未満を下回りました。
便利なアジレントのサンプル前処理製品
ここで紹介したのは、アジレントが提供するサンプル前処理製品のなかの 2 つだけです。また、アジレントでは、サンプル前処理の基礎、利点、制約、ワークフローに関して、多くの無料 も実施しています。ヒントやツールも提供しています。
References