Access Agilent 2013年1月号

LC/MS による食品スクリーニングの定量(メソッドの迅速な開発)

Steve Madden
アジレントソフトウェアソリューションマネージャ

食品のターゲットスクリーニングをおこなうための LC/MS 定量メソッドの設定は、時間のかかる作業になることがあります。最近の欧州連合 (EU) 規則 (SANCO/12495/2011) では、LC/MS による化合物同定に用いられる基準が厳格化されています。この規則では、少なくとも 2 つの診断イオン (たとえばプロダクトイオンやフラグメントイオン) が求められています。定量メソッドを設定するためには、各化合物についてこれらのイオンを決定する必要がありますが、化合物は数百や数千種類にのぼることもあります。また、化合物名をソフトウェアに入力する必要もあります。

新しい Agilent All Ions MS/MS テクニックは、データ採取および定量分析のメソッド開発を著しく迅速化するものです。このテクニックでは、以下のことが可能です。

  • LC/TOF または Q-TOF を用いた LC/MS 採取メソッドを簡単に設定
  • Agilent パーソナル化合物データベースおよびライブラリ (PCDL) を用いたプロダクトイオンの特定
  • プロダクトイオンのクロマトグラフィ確認
  • Agilent MassHunter Quantitative Analysis ソフトウェアでの迅速なメソッド設定

図 1. このソフトウェアでは、プレカーサイオン (上) とプロダクトイオン (下) の両方についてスペクトルが採取され、その後、それらを用いてデータ採取メソッドが設定されます。(図を拡大)

図 1. このソフトウェアでは、プレカーサイオン (上) とプロダクトイオン (下) の
両方についてスペクトルが採取され、その後、それらを用いてデータ採取メソッドが
設定されます。

データ採取メソッドを簡単に設定

質量分析用のデータ採取プログラムのなかには、化合物名のほかに、各化合物について選択したイオンやトランジションの入力も求められるものがあります。All Ions MS/MS では、この手順を省略することができます。これは、まず低値のフラグメンター電圧またはコリジョンエネルギーでデータを採取し、その後に高い値で採取するためです。低値ではサンプル中の化合物のプレカーサイオンのみが生成され、高値ではプレカーサイオンに加えてプロダクトイオンが生成されます。

たとえば、 1 の上図では、アボカド抽出液中の除草剤リニュロンのゼロコリジョンエネルギーのスペクトルを示しています。プレカーサイオン 249.0192 m/z が検出されています。下図は、高コリジョンエネルギーの平均スペクトルを示しています。こちらでは大きなフラグメンテーションが生じています。プレカーサイオンに加えて多くのプロダクトイオンが見られます。このように、クロマトグラフィ分析の対象となるすべての化合物について、まずプレカーサイオンが、次いでプロダクトイオンが採取されます。

Agilent MS/MS ライブラリとクロマトグラフィ確認を用いた同定

次に、プロダクトイオンを、その由来となったプレカーサイオンに関連づける必要があります。All Ions MS/MS では、データファイルを MassHunter Qualitative Analysis ソフトウェアへロードすれば、ソフトウェアがプレカーサイオンを選択し、Agilent パーソナル化合物データベースおよびライブラリ (PCDL) で一致するものを検索します。一致するものが見つかったら、MS/MS スペクトルのプロダクトイオンがクロマトグラムとして抽出されます。

Coelution Plot では、フラグメントイオンとプレカーサイオンが高度に共溶出していることがわかります。このことは、すべてのイオンが同一の化合物に属していることを強く示唆しています。

図 2. Coelution Plot では、フラグメントイオンとプレカーサイオンが高度に共溶出していることがわかります。このことは、すべてのイオンが同一の化合物に属していることを強く示唆しています。(図を拡大)

Coelution Plot では、フラグメントイオンとプレカーサイオンが高度に共溶出していることがわかります。このことは、すべてのイオンが同一の化合物に属していることを強く示唆しています。

図 2. Coelution Plot では、フラグメントイオンとプレカーサイオンが高度に共溶出していることがわかります。
このことは、すべてのイオンが同一の化合物に属していることを強く示唆しています。

ソフトウェアがプレカーサイオンとクオリファイアイオンを抽出し、ユーザーの定義した限界値から外れた比率をフラッギングします。

図 3. ソフトウェアがプレカーサイオンとクオリファイアイオンを抽出し、ユーザーの定義した限界値から外れた比率をフラッギングします。 (図を拡大)

ソフトウェアがプレカーサイオンとクオリファイアイオンを抽出し、ユーザーの定義した限界値から外れた比率をフラッギングします。

図 3. ソフトウェアがプレカーサイオンとクオリファイアイオンを抽出し、
ユーザーの定義した限界値から外れた比率をフラッギングします。

2 では、リニュロンのプレカーサイオン 249.0192 と農薬 PCDL で決定されたプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラム (EIC) を重ねて表示しています。下図は、EIC の Coelution Plot (共溶出プロット) です。UV クロマトグラフィの Peak Purity と同様のテクニックを用いて、ソフトウェアがアバンダンス、ピーク形状 (対称性)、ピーク幅、リテンションタイムなどの要素を考慮し、共溶出スコアを算出およびプロットします。Coelution Plot は、プレカーサイオンとプロダクトイオンがすべて 8.138 分の頂点で一致していることを示しています。これにより、化合物がたしかにリニュロンだということをクロマトグラフィで確認できます。共溶出スコアは 0~100 の範囲で、ユーザーが閾値を設定できます。この分析では、デフォルト値の 90 に設定しました。

定量メソッドを迅速に設定

スクリーン上で化合物を確認したら、Compound Exchange Format (CEF) ファイルを Agilent MassHunter Quantitative Analysis ソフトウェアへエクスポートすることができます。CEF ファイルには、化合物名、リテンションタイム、プレカーサイオン、プロダクトイオン (規則で求められるクオリファイア作成のため)、フラグメンター電圧、コリジョンエネルギー、相対アバンダンスなど、定量メソッドの設定に必要なあらゆるデータが含まれています。 3 は、リニュロンと 3 つのクオリファイアイオンの抽出イオンクロマトグラムと、それぞれの比率をプレカーサイオンの 249.0192 に対してプロットした図を示しています。データ処理の際、ユーザーの定義した限界値から外れるクオリファイア比を、Quantitative Analysis ソフトウェアが自動的にフラッギングします。

メソッドを設定したら、サンプルを分析し、定量結果を採取できます。この自動化により、MassHunter Acquisition でデータを採取および定量し、ターゲット化合物に関するレポートを作成することが可能になります。

使いやすさと生産性

新しい Agilent All Ions MS/MS テクニックなら、Agilent LC/TOF または Q-TOF 機器で採取メソッドを簡単に設定することができます。精密質量データにより化合物の同定結果を迅速に確認したのち、数分単位で定量メソッドを設定することが可能で、1 回の分析で数百の化合物を定量できます。プロセスのどの時点でも、化合物名を入力する必要はなく、クオリファイアとしてスペクトルからプロダクトイオンを選択する必要もありません。面倒なメソッド開発に時間をとられず、サンプルの分析に集中することができます。

All Ions MS/MS などのラボの生産性を高めるツールは、Agilent MassHunter WorkstationAgilent TOF LC/MS および Q-TOF LC/MS 機器の詳細をご確認ください。