Access Agilent 2013年1月号

マイクロ波プラズマ原子発光分光分析による ディーゼルおよびバイオディーゼル中ケイ素の測定

Renata S. Amais、George L. Donati、Joaquim A. Nóbrega
サン・カルロス連邦大学、サン・カルロス、ブラジル

Daniela Schiavo
アジレントアプリケーションエンジニア

ケイ素 (Si) 測定は簡単な分析ではありません。特に、粘度が高く、炭素含有量の多い燃料サンプルでは困難です。しかし、アジレントでは、エタノールによる燃料サンプルの希釈と、水系標準溶液を用いた検量線法により、正確な Si 測定を可能にすることができました。

この研究では、Agilent 4100 マイクロ波プラズマ原子発光分析装置 (MP-AES) を用いて、ディーゼルおよびバイオディーゼル中の Si を測定しました。この装置では、磁気的に結合されたマイクロ波エネルギーを用いて、堅牢で安定したプラズマが生成されます。窒素ガスジェネレータにより窒素が供給され、その他のガスソースは不要です。高価なガスが不要なので、使用コストを大幅に削減できます。

複数のサンプル前処理方法を検討しました。また、90 % エタノールで希釈したサンプルを分析して機器の堅牢性を調べました。このマトリックスは通常、常温でプラズマを維持することが困難です。この研究では、水系標準溶液を用いた単純な検量線法だけで十分な回収率が得られました。

分析品質の向上

Agilent 4100 MP-AES のサンプル導入システムは、溶媒耐性チューブ、ダブルパスサイクロニックチャンバ、耐酸、耐アルカリ性OneNeb ネブライザで構成されています。このネブライザは、霧の粒径分布幅の狭い小さな粒子で構成される、均一性の高いエアロゾルを生成します。これにより、試料導入効率と感度が向上します [1]。

外部ガスコントロールモジュール (EGCM) を用いてプラズマに空気を注入し、トーチおよびプレ光学ウィンドウでの炭素析出を防止しました。この装置には、プラズマの安定性を高め、有機サンプル分析におけるバックグラウンド発光を低減する効果もあります。

Agilent MP Expert ソフトウェアを使えば、自動バックグラウンド補正 (Auto) により、精度と正確性を高めることができます。MP Expert ソフトウェアでは、使用する各波長について、ネブライザ圧力とプラズマ観測位置の最適化も実行されます。この研究では、検量線の作成に用いた標準溶液を使って、パラメータを迅速かつ簡単に最適化しました。

次に、3種類のサンプル前処理方法 (マイクロ波分解、n-プロパノールを用いたマイクロエマルジョン前処理、エタノール希釈) を検討しました。マイクロ波分解サンプルと 90 % v/v エタノールで単純希釈したサンプルにおける Si 測定について、1 % v/v HNO3中の水系標準溶液を用いた検量線法によりおこないました。

優れた感度と安定した性能を実現

Si 1.0 mg/L 標準溶液と、各 10 回の連続ブランク測定により得られた標準偏差から、1 % v/v HNO3 溶液とマイクロエマルション溶液での検出下限 (LOD) およびダイナミックレンジ (LDR) を算出しました。1 に LOD と LDR の値を示しています。

 

1% v/v  HNO3溶液

マイクロエマルジョン溶液

LOD (µg/L)

LDRa (桁) RSDb (%)

LOD (µg/L)

LDRa (桁) RSDb (%)

Si (251.611 nm)

20

2.3 1.6

5

2.6 1.6

Si (288.158 nm)

240

0.9 1.3

5

2.5 0.4

a =検出下限からのダイナミックレンジ
b = 2 mg/L Si 溶液の相対標準偏差 (n = 10)
表 1. MP-AES によるケイ素測定の性能

3 つの方法すべてで、品質管理可能な十分な感度が得られました。4100 MP-AES の生成するプラズマは安定性が高く、高濃度の n-プロパノールやエタノールを導入しても消えませんでした。また、数時間の分析後、トーチにもプレ光学ウィンドウにも、炭素析出は観察されませんでした。

精度の高い正確な結果

添加実験により、3 つの方法の回収率を評価しました。水溶液中でそれぞれ 3.0 または 1.0 mg/L の Si を、マイクロ波分解サンプルについては分解後に添加し、マイクロエマルション溶液についてはマイクロエマルション前処理中に直接添加しました。エタノール希釈手順については、2 種類の添加濃度 (有機溶媒中で 0.5 および 1.0 mg/L の Si) を評価しました。回収率はいずれも 80~102 % の範囲内でした。

OneNeb ネブライザにより得られる均一なネブライゼーション、EGCM による効果的なバックグラウンド低減、ソフトウェアの Auto 機能による信頼性の高いバックグラウンド補正という組み合わせにより、炭素含有量の多い試料の分析において精度と正確性が得られました。

この研究は、単純なエタノールによる希釈と水系標準液を用いた検量線法により、ディーゼルおよびバイオディーゼルサンプル中のケイ素を正確に測定できることを示しています。ここで検討したサンプル前処理方法は、有害な溶媒の使用量が少ないため、環境に優しいものです。また、無人のルーチン自動分析により、優れたサンプルスループットが簡単に実現します。Agilent 4100 MP-AES に高炭素含有サンプルをロードした場合でも、炭素析出や性能の低下は見られませんでした。

この機器では、高価なガス、可燃性ガスは必要ありません。そのため、分析コストを削減し、ラボの安全性を向上させることが可能です。コスト、性能、多元素機能という点から考えると、Agilent 4100 MP-AES はフレーム原子吸光法 (AA) に代わる効果的な選択肢となり、今回の分析で使用したような重要な元素で高い性能を発揮します。詳細については、Agilent 4100 MP-AES の最先端技術に関するビデオをご覧ください。

References

  1. Aguirre, M. A., Kovachev, N., Almagro, B., Hidalgo, M. & Canals, A. (2010). Compensation for matrix effects on ICP-OES by on-line calibration methods using a new multi-nebulizer based on Flow Blurring technology. J. Anal. At. Spectrom., 25, 1724–1732.