Access Agilent 2012年11月号

優れた精度と正確性を備えたLCクォータナリポンプ ―分析の流れを簡素化して分析データの品質を向上

Jens Trafkowski
アジレントプロダクトマネージャ、液体クロマトグラフィー部門

(U)HPLCに使用されているポンプは、クォータナリポンプとバイナリポンプでは溶媒混合の原理が異なることから、性能に関する仕様もそれぞれ異なっています。これまでは、クォータナリポンプのほうが柔軟性が高く、バイナリポンプのほうが精度と正確性が高いとされていました。しかしアジレントでは、それぞれのポンプが持つ利点を融合させた新たなLCクォータナリポンプを開発しました。このポンプの新しい機能により、分析の流れを簡略化して分析データの品質を向上させることができます。そのポンプが、新しい Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプです。

クロマトグラフィーでは、リテンションタイムの精度は最も重要なパラメータの1つです。最高の精度があってはじめて、各化合物固有のリテンションタイムをもとに、化合物を正しく同定することができます。リテンションタイムの精度を高めるためには、流量と溶媒組成の正確性と精度を最大限に高める必要があります。ここでは、Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプの特性を解説します。

リテンションタイムの再現性を高める精確な溶媒組成

Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプを用いた水‐メタノールのステップグラジエントでは、設定したグラジエント組成と実際のグラジエント組成が良好に一致しています。

図 1. Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプを用いた水‐メタノールのステップグラジエントでは、設定したグラジエント組成と実際のグラジエント組成が良好に一致しています。 (図を拡大)

Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプを用いた水‐メタノールのステップグラジエントでは、設定したグラジエント組成と実際のグラジエント組成が良好に一致しています。
 

図 1. Agilent 1290 Infinity クォータナリポンプを用いた水‐メタノールのステップグラジエントでは、設定したグラジエント組成と実際のグラジエント組成が良好に一致しています。

糖質コルチコイドのイソクラティック分析では、移動相組成わずかに変動しただけでもリテンションタイムが変わります。

図 2. 糖質コルチコイドのイソクラティック分析では、移動相組成わずかに変動しただけでもリテンションタイムが変わります。
(図を拡大)

糖質コルチコイドのイソクラティック分析では、移動相組成わずかに変動しただけでもリテンションタイムが変わります。
 

図 2. 糖質コルチコイドのイソクラティック分析では、移動相組成わずかに変動しただけでもリテンションタイムが変わります。

移動相組成の精度を測定するため、様々な溶媒の組み合わせ、流量 (0.2~5 mL/min)、圧力 (9~100 MPa) を用いて、図1に示すステップグラジエントを実行しました。図 1 では、設定したグラジエントと実際に実行されたグラジエント挙動を重ねて表示していますが、実際のグラジエント挙動と設定値が極めて良好に一致していることが示されています。

精確で再現性の高いリテンションタイムを得るためには、精確な移動相組成が必須となります。以下の検討では、イソクラティック分析やグラジエント分析において分析者が事前に移動相を調製した場合とポンプに移動相を調製させた場合に、クロマトグラムの挙動がどのように変わるのかを評価しましたイソクラティック。図 2 に示したイソクラティック分析では、移動相組成の変化がリテンションタイムの変動にきわめて大きな影響を与える糖質コルチコイドを選択しました。表 1 に LC 条件を示します。

カラム

Agilent ZORBAX Eclipse Plus C18、
4.6 x 100 mm、5 µm (p/n 959996-902)

移動相

水/アセトニトリル = 30/70

流量

1 mL/min

分析時間

5 min

注入量

3 µL (ニードル洗浄 3 秒)

カラム温度

30 °C

DAD

254/10 nm、(reference 400/80 nm)、20 Hz、スリット 4 nm

表 1. 糖質コルチコイドのイソクラティック分析条件。

イソクラティック分析においては、1人の分析者が6回にわたって移動相を調製した場合(使用したLCポンプのチャンネル数は1)と、それぞれ6つずつの水が入った溶媒ボトルとアセトニトリルが入った溶媒ボトルを用いてポンプで移動相を調製した場合(使用したLCポンプのチャンネル数は2)とで、同じ機器を用いてどちらの手法が優れているかを調べました。

イソクラティック分析の場合、1人の分析者が自身の手で移動相を調製した時のリテンションタイムの変動は0.8% RSDでした。この値は複数の分析者が自身の手で移動相を調製した時のリテンションタイムの変動値 1.0% RSDに近似しています。一方ポンプで移動相を調製した場合には、リテンションタイムの変動は0.2% RSD未満でした(図 4)。

イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

図 3.イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。
(図を拡大)

イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

図 3. イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

イソクラティック分析では、移動相をポンプで調製したほうが、分析者の手で調製した場合よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

図 4. イソクラティック分析では、移動相をポンプで調製したほうが、分析者の手で調製した場合よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。 (図を拡大)

イソクラティック分析では、移動相をポンプで調製したほうが、分析者の手で調製した場合よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

図 4. イソクラティック分析では、移動相をポンプで調製したほうが、分析者の手で調製した場合よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製のリテンションタイム変動の違い。

図 5.イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製のリテンションタイム変動の違い。
(図を拡大)

イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製のリテンションタイム変動の違い。

図 5. イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる
移動相調製のリテンションタイム変動の違い。

グラジエント分析でも再現性の高いリテンションタイムで分析結果の信頼性を向上

グラジエント分析においても、分析者自身による調製とポンプによる調製を比較するために、同様の検討を行いました(図 5)。表 2 に、使用した条件を記載します。この検討では、図6に示すように移動相を調製しました。図 7に示すように、相対的なリテンションタイムの変動は、ポンプで移動相を調製した場合のほうが大幅に小さくなりました (0.015 % と 0.124 %)。

グラジエント分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

図 6. グラジエント分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。
(図を拡大)

グラジエント分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

図 6. グラジエント分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。

グラジエント分析では、ポンプで移動相を調製したほうが、分析者の手で移動相を調製した時よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

図 7. グラジエント分析では、ポンプで移動相を調製したほうが、分析者の手で移動相を調製した時よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。 (図を拡大)

グラジエント分析では、ポンプで移動相を調製したほうが、分析者の手で移動相を調製した時よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

図 7. グラジエント分析では、ポンプで移動相を調製したほうが、
分析者の手で移動相を調製した時よりもリテンションタイムの変動が大幅に小さくなっています。

カラム

Agilent ZORBAX SB-C18、
4.6 x 250 mm、3.5 µm (p/n 884950-567)

移動相 1

A = 水/アセトニトリル (95/5) + 0.1 % TFA
B = 水/アセトニトリル (40/60) + 0.1 % TFA

グラジエント 1

15分で 0 ~100 % B

移動相 2

A = 水 + 0.1 % TFA
B = アセトニトリル + 0.1 % TFA

グラジエント 2

15 分で 5~60 % B

流量

1 mL/min

分析時間

15 min

注入量

1 µL

カラム温度

30 °C

DAD

263/10 nm, (reference 400/80 nm), 10 Hz

表 2. クロピドールのグラジエント分析条件。

Agilent 1290 Infinity クォータナリ LC システムを用いた今回の検討では、分析者自身の手で移動相を調製するよりも、ポンプで移動相を調製したほうが分析結果の信頼性が向上することを示しています。これは、精確なクォータナリポンプを用いた場合にのみ得られる結果です。

新しい 1290 Infinity クォータナリ LC システムと、溶媒を精確に混合する新しいソフトウェアツール BlendAssist を組み合わせることにより、移動相の調製時間を短縮し、ルーチンワークにおける分析の流れが簡略化されるとともに、最高品質の分析データが得られます。

詳細については、以下に記載したアプリケーションノートをご覧ください。
その他として、テクニカルビデオや、1290 Infinity クォータナリポンプの仕様も公開しています。

参考文献

  1. アプリケーションノート5991-0525EN: 「Agilent 1290 Infinityクォータナリポンプによるリテンションタイムの精確性」
  2. アプリケーションノート5991-0098JAJP: 「Agilent 1290 Infinityクォータナリポンプ:アイソクラティック条件の移動相を分析者が事前調製した場合とポンプが調製した場合の比較」