Access Agilent 2012年10月号

有機マトリックスに含まれる S、P、Si の微量定量により ライフサイエンスの研究に新しい可能性をもたらす ICP-QQQ

Emmett Soffey、Bert Woods、Steve Wilbur
アジレント ICP-MS アプリケーションスペシャリスト

2012 年1月、アジレントは世界初のトリプル四重極 ICP-MS、8800 ICP-QQQ を発表しました。このドキュメントでは、MS/MS モードで動作させた 8800 ICP-MS トリプル四重極が従来の四重極 ICP-MS の限界を打ち破り、有機溶媒中のケイ素、リン、硫黄の同時測定を実行できることを示します。これらの 3 つの元素は、いずれも炭素、窒素、および酸素に基づく多原子イオンの強い干渉を受けます。さらに、リンと硫黄は第一イオン化ポテンシャルが高いため、より一般的な ICP-MSの測定成分と比べて感度が低くなります。

ケイ素、リン、硫黄は、半導体製造、炭化水素処理、ライフサイエンス研究、その他の多くのアプリケーションで使用される有機溶媒に含まれる重要な対象化合物です。生体分子のスペシエーション分析では、一般に HPLC による分離の後、ICP-MS を使用した分析を行います。LC 移動相には一般にメタノールが含まれるため、メタノール中の微量 Si、P、および S の測定能力をテストしました。

アジレントでは、20 % メタノール中の S、P、Si を同時に分析できる 8800 ICP-QQQ による多元素測定メソッドを開発しました。3 つの全対象化合物のバックグラウンド相当濃度 (BEC) と検出下限 (DL) を表 1 にまとめます。

元素

モード

m/z
(Q1/Q2)

BEC
(ppb)

DL
(ppb)

ケイ素

H2 MS/MS

28/28

2.17

0.03

リン

H2 MS/MS

31/63

0.41

0.02

硫黄

O2 MS/MS

32/48

3.13

0.10

表 1. ケイ素、リン、硫黄の検出下限 (3 σ) とバックグラウンド相当濃度

図 1. MS/MS モードのケイ素、リン、硫黄の検量線の例 (すべての単位は ppb)

図 1. MS/MS モードのケイ素、リン、硫黄の検量線の例 (すべての単位は ppb)
(図を拡大)。

図 1. MS/MS モードのケイ素、リン、硫黄の検量線の例 (すべての単位は ppb)

図 1. MS/MS モードのケイ素、リン、硫黄の
検量線の例 (すべての単位は ppb)

MS/MS モードによる干渉の排除

m/z (Q1/Q2)」の下に示した2つの質量は、MS/MS モードでそれぞれ四重極1 (Q1) および四重極 2 (Q2) によりモニタした質量です。例えば、硫黄は、リアクションセルガスとしてO2を使用して MS/MS モードでモニタしました。このモードでは、Q1 が m/z 32 に設定されるため、硫黄-32 とオンマス干渉だけがオクタポールリアクションシステム (ORS3) セルに入ることができます。セルの硫黄-32 は酸素セルガスと反応してプロダクトイオン 32S16O+ を生成するため、対象化合物は m/z 48 にシフトします。O2+ 多原子イオン干渉は O2 セルガスと反応しないため、m/z 48 には移動しません。Q2 は Q1 + 16 (m/z = 48) で硫黄反応プロダクトイオンを測定するように設定されているため、SO+ 反応生成物だけが測定され、O2+ 干渉は m/z 32 に留まり、除外されます。

MS/MS モードは、対象化合物がセル内のガスとは反応せずに干渉イオンがガスと反応する場合にも使用できます。この場合は、Q1 と Q2 の両方が、表 1 に示すケイ素の測定の m/z 28 など、同じ質量に設定されます。多原子干渉は緩和されるか、別の質量に移動するため、Q2 により排除されます。

同位体パターンによる同定の確認

32S16O+ プロダクトイオン測定に使用する質量シフト機能は MS/MS モードに固有のもので、対象化合物の同位体パターンが維持されることを示します。これは、32S18O+34S16O+ などの同位体のオーバーラップが発生しないからです。元の同位体パターンの維持は、対象化合物の同定を確認する上で役立ち、同位体希釈法による定量には不可欠です。それぞれを最適なモードで測定した Si、P、S のサンプルキャリブレーションプロットを図 1 に示します。

感度の向上と干渉の減少

まとめると、Agilent 8800 ICP トリプル四重極は、従来の四重極 ICP-MS システムと比べて、有機マトリックス中の分析が困難な元素であるケイ素、リン、硫黄の感度を大幅に上げ、干渉を軽減します。8800 は、MS/MS モードを使用することでこの優れた性能を実現しています。このモードでは、最初の四重極が対象化合物を除くすべての質量と、同じ m/z における干渉イオンを除去します。対象化合物を除くすべての質量を排除することで、セルの反応化学物質が制御され、一貫性が維持されます。その結果、高い効率が得られ、予測可能な干渉が除去されます。Q1 は、セル内で生成される対象化合物のプロダクトイオンとオーバラップする可能性があるすべてのオフマスイオンも拒否するため、質量シフトを使用するリアクションガスモードの精度と信頼性が大幅に向上します。

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