Access Agilent 2012年4月号

職場薬物試験における SAMHSA に準拠した LC/MS/MS 分析

Irina Dioumaeva
アジレントサンプル前処理アプリケーションケミスト

John M. Hughes
アジレントシニアアプリケーションコンサルタント、質量分析

2010 年 10 月に発効した SAMHSA (the U.S. Substance Abuse and Mental Health Services Administration:米国薬物濫用・精神衛生管理庁) の新ガイドラインでは、政府認定ラボによる初期職場薬物試験の確認のために LC/MS/MS メソッドを使用することが認められています。LC/MS/MS メソッドは、サンプルの誘導体化が不要なので、GC/MS テクニックに比べてはるかに簡単です。

アジレントでは、尿中の 6 種類の薬物 (6-アセチルモルヒネ、アンフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、アヘン剤、フェンシクリジン、THC 代謝物の 11-nor-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール) を分析するために、新しい SAMHSA ガイドラインに準拠した新メソッドを開発しました。このメソッドにより、優れた直線性、検出下限 (LOD)、正確性、精度が得られます。このような利点は、マトリクス効果、抽出回収率、全体的なプロセス効率の測定により実証されています。ここで紹介する新メソッドの利点は、以下のアジレントの最新製品により実現するものです。

優れたピーク干渉の分離

SAMHSA ガイドラインでは、アヘン剤とアンフェタミンという 2 つの薬物について、LC/MS/MS 分析により、干渉のクロマトグラフィ分離を確認することが求められています。一部の尿サンプルでは、薬物が高濃度で存在することが予想されるため、すべての Agilent SAMHSA メソッドでは、内径 2 mm のカラムではなく、キャパシティの大きい内径 3 mm の Agilent Poroshell 120 カラムを使用することを推奨しています。

尿に含まれる塩やその他の極性成分をサンプル分析の初期に溶出させるためには、有機溶媒の割合を低くして LC 分離を開始します。イオン源の汚染を最小限に抑えるために、各分析の最初のピークの溶出前に、フローの最初の部分を排液へ迂回させます。この時流速を 0.8 mL/min にすれば、分析時間と再平衡時間が短くなります。Poroshell 120 EC-C18 カラムは、優れた分離とピーク形状を持つため、このカラムを使えば、2.5 分以内でアヘン剤の分析を完了し (図 1)、3.2 分以内で 5 種類のアンフェタミンと干渉成分を分析することができます (図 2)。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアヘン剤と干渉物質の分離。マルチプルリアクションモニタリング  (MRM) 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は  200 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. モルヒネ、2. オキシモルホン、3. ヒドロモルホン、4. コデイン、5. ノルコデイン、6. オキシコドン、7. ヒドロコドン

図 1. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアヘン剤と干渉物質の分離。マルチプルリアクションモニタリング (MRM) 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は 200 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. モルヒネ、2. オキシモルホン、3. ヒドロモルホン、4. コデイン、5. ノルコデイン、6. オキシコドン、7. ヒドロコドン (図を拡大)。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアヘン剤と干渉物質の分離。マルチプルリアクションモニタリング  (MRM) 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は  200 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. モルヒネ、2. オキシモルホン、3. ヒドロモルホン、4. コデイン、5. ノルコデイン、6. オキシコドン、7. ヒドロコドン

図 1. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、
3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアヘン剤と干渉物質の分離。
マルチプルリアクションモニタリング (MRM) 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。
各分析対象物の濃度は 200 ng/mL。
ピークは溶出順に次のとおり: 1. モルヒネ、2. オキシモルホン、3. ヒドロモルホン、
4. コデイン、5. ノルコデイン、6. オキシコドン、7. ヒドロコドン

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアンフェタミンと干渉物質の分離。MRM 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は  50 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. フェニルプロパノールアミン、2.  エフェドリン、3. プソイドエフェドリン、4. アンフェタミン、5. メタンフェタミン、6. MDA、7. MDMA、8. MDEA、9. フェンテルミン

図 2. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアンフェタミンと干渉物質の分離。MRM 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は 50 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. フェニルプロパノールアミン、2. エフェドリン、3. プソイドエフェドリン、4. アンフェタミン、5. メタンフェタミン、6. MDA、7. MDMA、8. MDEA、9. フェンテルミン (図を拡大)。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアンフェタミンと干渉物質の分離。MRM 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。各分析対象物の濃度は  50 ng/mL。ピークは溶出順に次のとおり: 1. フェニルプロパノールアミン、2.  エフェドリン、3. プソイドエフェドリン、4. アンフェタミン、5. メタンフェタミン、6. MDA、7. MDMA、8. MDEA、9. フェンテルミン

図 2. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、
3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いたアンフェタミンと干渉物質の分離。
MRM 抽出イオンクロマトグラムを重ねて表示しています。
各分析対象物の濃度は 50 ng/mL。
ピークは溶出順に次のとおり: 1. フェニルプロパノールアミン、2. エフェドリン、3. プソイドエフェドリン、
4. アンフェタミン、5. メタンフェタミン、6. MDA、7. MDMA、8. MDEA、9. フェンテルミン

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した<strong>尿抽出液中</strong>11-nor-9-カルボキシ-Δ<sup>9</sup>-テトラヒドロカンナビノール (15 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。

図 3. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した尿抽出液中11-nor-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール (15 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。 (図を拡大)。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した<strong>尿抽出液中</strong>11-nor-9-カルボキシ-Δ<sup>9</sup>-テトラヒドロカンナビノール (15 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。

図 3. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、
3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した
尿抽出液中11-nor-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール (15 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。
ノイズ領域を太線で示しています。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した<strong>尿抽出液中</strong>6-アセチルモルヒネ  (1 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。

図 4. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した尿抽出液中6-アセチルモルヒネ (1 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。 (図を拡大)。

Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した<strong>尿抽出液中</strong>6-アセチルモルヒネ  (1 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。ノイズ領域を太線で示しています。

図 4. Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラム、
3 mm × 50 mm、2.7 µm を用いて分析した
尿抽出液中6-アセチルモルヒネ (1 ng/mL) の MRM 抽出クロマトグラム。
ノイズ領域を太線で示しています。

もっとも低い SAMHSA カットオフ濃度でも優れた感度を実現

尿サンプルで低い検出下限を実現するためには、MS 感度が優れていることに加え、高回収率と低イオン抑制を実現する効率的なクリーンアップ機構を備えた分析メソッドが求められます。Bond Elut Plexa PCX 抽出液の比類のないクリーンさと、最先端の 6460 トリプル四重極の性能を組み合わせれば、きわめて低い SAMHSA カットオフ濃度で分析対象物を確実に検出し、優れたピーク形状と高いシグナル/ノイズ比を得ることができます (図 3 および 4)。

図 3図 4 は、SAMHSA カットオフ濃度がもっとも低いカルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノールと 6-アセチルモルヒネのクロマトグラムを示しています。カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノールでは、15 ng/mL のカットオフ濃度で、およそ 100:1 のシグナル/ノイズ比が得られています (図 3)。6-アセチルモルヒネでは、1 ng/mL というきわめて低い定量濃度で、190:1 を上回るシグナル/ノイズ比が得られています (図 4)。

正確性、精度、再現性のデータ

Matuszewski (2003) [1] の示す原則に従って、表 1のメソッド性能指標を算出しました。

化合物

処理効率* %

抽出回収率* %

マトリクス効果* %

正確性* %

精度* (CV) %

ベンゾイルエクゴニン

85

86

99

103**

0.8**

フェンシクリジン

83

85

98

93

0.5

6-アセチルモルヒネ

83

83

100

106**

0.6**

アンフェタミン

86

94

91

107**

1.6**

メタンフェタミン

93

94

99

105

0.5

MDA

91

95

95

92**

1.1**

MDMA

93

97

96

101**

0.5**

MDEA

95

96

98

106**

0.3**

モルヒネ

83

85

98

108

0.6

コデイン

85

86

99

108

0.7

11-nor-9-カルボキシ-Δ9-THC

73

65

113

98

2.2

* Matuszewki ら [1] のメソッドに従って測定。
**がついたものを除くすべての値は、カットオフ濃度について得られたもの。
** 40 % カットオフ濃度について得られた値。
CV = 変動係数
表 1. SAMHSA 薬物のメソッド評価、n = 5

確かなシステムによる確かな性能

アジレントの SPE-LC/MS/MS メソッドは、SAMHSA ガイドラインに完全に準拠しています。また、職場薬物試験や、法廷で使用できるデータを得る必要があるその他の分析において、高い正確性、精度、再現性が得られます。6 つのメソッドでは、すべて同じハードウェア設定が用いられ、Agilent 1100 LC および Agilent 1200 Infinity シリーズ LC で使用が可能で、6460 以外のアジレントのトリプル四重極システムで使用する場合は、イオン源パラメータを簡単に修正することができます。

詳細な情報や、6 種類の薬物クラスのメソッドを解説したアプリケーションノートについては、Agilent SPE Web ページでアプリケーションノート 5990-9622EN、5990-9623EN、5990-9624EN、5990-9625EN、5990-9626EN、5990-9627EN をダウンロードしてください。