Access Agilent 2011年10月号

マルチビタミン錠剤中水溶性ビタミン分析の高速メソッドから超高速メソッドへの変換

Siji Joseph
アジレントアプリケーションサイエンティスト

食品医薬品局 (FDA) は、マルチビタミン錠剤に含まれるビタミンの表示を求めていますが、この作業は必須である一方で、簡単ではありません。実際、いくつかの問題により、各ビタミンの表示はきわめて困難になっています。1 番目の問題は、各ビタミンの化学特性が異なるために、複数のビタミンを同時かつ確実に分析することが難しいという点です。2 番目は、錠剤中の各ビタミンの濃度が幅広い (低マイクログラム域から高ミリグラム域まで) ことにより、分析がさらに複雑になるという点です。さらに、安定性やマトリックスの複雑性、一部のビタミンの水溶性などの問題により、これら3 つの障壁が生じます。

この記事では、UV 検出を用いて、10 種類の水溶性ビタミンを同時に測定できる信頼性と堅牢性の高いメソッドを紹介します。分析の所要時間は約 20 分です。分離と定量には、Agilent 1260 Infinity LC システムPoroshell EC-C18 カラムを使用しました。その後、Agilent メソッドトランスレーターを用いて、このメソッドを、Agilent 1290 Infinity システムを用いたより分析時間の短い Ultra High Performance Liquid Chromatographic (UHPLC) メソッドに効率的に変換する方法を紹介します。どちらのメソッドも、マルチビタミン錠剤のラベルに記載されている濃度のビタミンの評価と比較において、優れた性能を発揮します。しかし、UHPLC メソッドのほうがより高速で、溶媒消費量も大幅に少なくなります。

約 20 分で優れた結果が得られるアジレントの構成

ここで紹介するものと同様の結果を得るためには、Agilent 1260 Infinity クォータナリ LC システムを使う必要があります。このシステムは、以下のモジュールで構成され、Agilent OpenLab CDS によりコントロールされます。

  • Agilent 1260 シリーズクォータナリポンプおよび真空デガッサ (p/n G1311B)
  • Agilent 1260 シリーズ高性能オートサンプラ (p/n G1367E)
  • Agilent 1260 シリーズカラムコンパートメント (p/n G1316A)
  • Agilent 1260 シリーズダイオードアレイ検出器 (p/n G4212B)、Max-Light フローセル (光路長 60 mm) 搭載 (p/n G4212-60007)
  • Poroshell 120 EC-C18 カラム 3.0 x 150 mm、2.7 µm (p/n 693975-302)

図 1. 15 cm Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラムを用いた 10 種類の水溶性ビタミンの分離。7 種類の波長で得たクロマトグラムを重ねて表示しています (図を拡大)。

図 1. 15 cm Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラムを用いた 10 種類の水溶性ビタミンの分離。
7 種類の波長で得たクロマトグラムを重ねて表示しています。

図 1 は、Agilent Poroshell 120 EC-C18 (150 mm x 3.0 mm、2.7 µm) カラムにより、10 種類の水溶性ビタミンが 20 分で良好に分離されたことを示しています。これらのビタミンは、すべて本質的に構造が異なるため、各ビタミンのスペクトルと最大吸光波長は異なったものになります。

たとえば、アスコルビン酸は 266 nm で強い吸光度を示しますが、葉酸の吸光度は 280 nm でもっとも高くなります。ビオチンとパントテン酸カルシウムは、いずれも UV 吸光度が低く、分析には 205 nm の波長を選択しました。ニコチン酸、ナイアシンアミド、シアノコバラミンについては、吸光度がもっとも高い波長は 214 nm でした。一方、ピリドキシンの最大吸光波長は約 220 nm でした。チアミンの分析には 232 nm を、リボフラビンの分析には 268 nm を選択しました。図 1 では、7 種類の波長で得られたクロマトグラムを重ねて表示しています。

ビタミンを確実に定量

この研究では、クロマトグラフィーメソッドによりマルチビタミン錠剤中のビタミンの濃度を推定し、錠剤に記載された濃度と比較しました。各ビタミンが幅広い濃度で存在しているため、希釈サンプルも分析しました。アスコルビン酸は含有量が多いため、対応するピークにより検出器が飽和しました。アスコルビン酸については、希釈サンプルの分析のほうが、ピーク高が縮小され、検出器の直線範囲内に収まるため、正確な結果が得られました。しかし、含有量が少なくマイクログラム域の一部のビタミンに対応するピークは、希釈サンプルでは検出できませんでした。サンプルおよび希釈サンプルの分析において、各ビタミンのピークに対応する面積を用いて、マルチビタミン錠剤の栄養表示分析をおこないました。検量線から得られた直線方程式を用いて計算をおこないました。表 1 にまとめた結果は、マルチビタミン錠剤に含まれるビタミンの定量において、このメソッドの安定性が優れていることを示しています。

ビタミン

ラベル記載
の存在量

錠剤 1

錠剤 2

錠剤 3

未希釈
サンプル

希釈
サンプル

未希釈
サンプル

希釈
サンプル

未希釈
サンプル

希釈
サンプル

アスコルビン酸(C)

80 mg

飽和ピーク

201.7

飽和ピーク

203.7

飽和ピーク

198.7

パントテン酸カルシウム(B5)

6 mg

6.7

6.1

6.6

6.5

6.6

6.3

ピリドキシン (B6)

1.4 mg

1.2

1.2

1.2

1.2

1.2

1.2

ナイアシンアミド (B3)

16 mg

15.7

16.0

15.4

16.0

15.2

15.6

チアミン (B1)

1.1 mg

1.3

1.3

1.3

1.3

1.2

1.2

葉酸 (B9)

200 μg

114.9

117.6

114.3

120.6

115.3

121.0

ビオチン (B7)

50 μg

2.4

 

35.7

 

38.5

 

シアノコバラミン (B12)

2.5 μg

0.5

 

0.4

 

0.4

 

リボフラビン (B2)

1.4 mg

1.4

 

1.4

 

1.3

 

表 1: 3 種類のサンプルおよび希釈サンプル中の各ビタミンの濃度について、検出濃度とラベル記載濃度をまとめています。

図 2. 75 mm Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラムと UHPLC メソッドを用いた 10 種類の水溶性ビタミンの分離。異なる波長で得たクロマトグラムを重ねて表示しています (図を拡大)。

図 2. 75 mm Agilent Poroshell 120 EC-C18 カラムと UHPLC メソッドを用いた 10 種類の水溶性ビタミンの分離。
異なる波長で得たクロマトグラムを重ねて表示しています。

90 % も時間を短縮する UHPLC メソッド

Agilent メソッドトランスレーターを用いて、水溶性ビタミン分離のためのダイオードアレイ検出を用いた UHPLC メソッドを開発しました。このツールを使えば、バイナリまたはクォータナリポンプシステムから Agilent 1290 Infinity LC システムへメソッドを簡単に変換し、最適化することができます。これにより得られた UHPLC メソッドは高速で、20 分の長いグラジエントを用いたメソッドに比べて、時間を最大 90 %、溶媒使用量を 70 % 以上も削減できます。優れた分離能とピーク形状も得られています (図 2)。

これと同様の結果を得るためには、Agilent 1290 Infinity LC システムを使う必要があります。このシステムは、以下のモジュールで構成され、Agilent OpenLAB CDS によりコントロールされます。

  • Agilent 1290 Infinity バイナリポンプ、内蔵真空デガッサ (p/n G4220A) および 100 µL Jet Weaver ミキサー搭載
  • Agilent 1290 Infinity 高性能オートサンプラ (p/n G4226A)
  • Agilent 1290 Infinity カラムコンパートメント (p/n G1316C)
  • Agilent 1290 Infinity ダイオードアレイ検出器 (p/n G4212A)、Max-Light フローセル (容量 1.0 µL、光路長 10 mm) (p/n G4212-60008)
  • Poroshell 120 EC-C18 カラム、内径 2.1 mm、長さ 75 mm、2.7 µm 粒子充てん (p/n 697775-902)

この結果を得るための方法

アジレントアプリケーションノート 5990-7950EN では、さらなる詳細をご覧いただけます。その後、お近くのアジレント代理店にお問い合わせいただき、マルチビタミン錠剤中水溶性ビタミン分析の成功に必要なあらゆるものを手に入れてください。