Access Agilent 2011年9月号

DialPath インターフェースを備えた Agilent Cary 630 FTIR - 迅速な分析のためのソリューション

Jonah Kirkwood、Ph.D.
アジレント FTIR プロダクトマネージャ

フーリエ変換赤外分光光度計 (FTIR) は、食品や医薬品および化粧品メーカーで、原料や最終製品の品質管理に広く使用されています。

現在、これらの液体試料を分析するには、透過法と ATR法 (Attenuated Total Reflectance) の 2つの測定手法があります。ATR法は、原液やそのままでは測定が困難な高濃度試料の測定を、短い光路長で行うのに最適な手法です。また、低濃度試料の測定には、光路長可変型と固定型の液体セルを使用できる透過法が最適です。

FTIR による液体試料の分析方法を変える DialPath インターフェース

アジレントの DialPath インターフェースは、従来の液体セルの光路長可変機能と ATR法の簡便性を有しています。この革新的な新技術の核となるシステムは、Agilent Cary 630 FTIR です。これは、特許取得済みのIRエンジンに専用のアタッチメントを取り付けることにより、さまざまな測定に対応することの出来るシステムです。このシステムでは、固体や液体および気体の定量や同定などの一般的な分析において、優れたデータを提供します。

Agilent Cary 630 FTIR の DialPath インターフェースは、工場出荷時にキャリブレーションされた 30 ~ 250 µm の 3種類の光路長で構成された回転式ヘッドを備えています。この回転式ヘッドを回転させることにより、素早く間単に光路長を変更することができます。このように光路長を変更することによって、高濃度試料の測定では短光路長を、低濃度試料の測定では長光路長を選択して測定を行うことができます。

図 1. DialPathインターフェースは、工場出荷時にキャリブレーションされた3つの光路長の中から、最適な光路長を素早く簡単に変更することができます。低濃度の対象化合物を検出するには長い光路長を、液体の同定をすばやく行うには短い光路長を選択します。

測定を行う時には、透過ウインドウの上に液体試料を1滴たらします。次に、回転式ヘッドを回転させて、上下 2枚のウインドウに試料を挟み込みます。これにより、再現性の高い固定された光路長での透過測定を行うことができます (図 1)。

Dial Path インターフェースを備えた Agilent Cary 630 FTIR には、透過セルを用いた測定よりも次の点で優れています。

  • 簡易性: DialPath 独自の設計により、スペーサーとオートサンプラーが不要になります。さらに、光路長を変更するときに、セルを分解する必要がありません。

  • 柔軟性: 光路長の変更を素早く間単に行えます。また、他のアタッチメントも素早く交換することができ、交換後の調整は不要です。

  • 堅牢性: 密閉性の高い筐体は、高温多湿な環境下でも信頼性の高いデータを提供します。

図 2. グリセロールを分析するには100 µmの光路長では長すぎるため吸収が飽和してしまいますが、30 µmの光路長では不純物由来の吸収を確認することは出来ません。したがって、最適な光路長は75 µmとなります。

図 3. グリセロール中のエチレングリコール (上部) とジエチレグリコール (下部) の検量線 (図を拡大)。

さらに、色分けされたソフトウエアアラートによって、試料が特定の仕様を満たしているかどうか、GLP/GMP および 21 CFR Part 11 などの規制に準拠しているかどうかを判別することができます。

製品の同定および製品中の不純物分析例

ここでは、DialPath インターフェースを備えた Agilent Cary 630 FTIR の性能を、食品や医薬品および化粧品の添加剤として使用されているプロピレングリコール、グリセロール、トリアセチン、ジプロピレングリコールの 4種類の化合物の同定および純度を検証することで評価を行いました。化合物の同定は、それぞれの添加剤を個別に測定して分析を行いました。また、純度は、スペクトルパターンの類似するエチレングリコールとジエチレングリコールを不純物としてそれぞれの添加剤に混合して分析を行いました。

準試料として、上記 4種類の添加剤に異なる量の不純物を混合した試料を作成しました。これらの試料は、波数分解能 4 cm-1、積算回数 64回で測定を行いました。この測定条件で測定に要する時間は 30秒です。

まず、不純物を含まない添加剤のスペクトルを、登録されているデータベースのスペクトルと比較したところ、それぞれの添加剤について 0.99 (0 ~ 1.000 のスケールを使用、1.000 が完全な一致を表す) を超える良好な結果が得られました。この結果より、4種類の添加剤の同定と純度の評価を行うことができました。

添加剤と不純物のスペクトルパターンが非常に類似しているため、評価には特定の波数領域に着目しました。例えば、グリセロールでは 905 ~ 875 cm-1および 1200 ~ 1130 cm-1 の波数範囲が、不純物由来の吸収を効果的に測定すること出来ます。しかし、100 µm の光路長は長すぎるため、対象となるバンドが飽和してしまいましたが (図 2)、30 µm の光路長では不純物由来の吸収が確認されませんでした。したがって、最終的な分析には 75 µm の光路長を選択しました。

製品の特定仕様についての合否判定測定例

グリセロールに含まれる不純物の PLS に基づく検量線 (図 3) では、R2 値がエチレングリコールで 0.9895、ジエチレングリコールで 0.9745 となります。これらの検量線から、それぞれの不純物の定量下限が約 0.075 vol% で検出下限が約 0.04 vol% であることが分かりました。

定量下限は FDA で規制されている 0.1 vol% を大きく下回っているため、この結果から、Cary 630 FTIR が製品の純度を評価するのに十分な性能を有していることが実証されました。さらに、より低い検出下限によって、不純物が混入するリスクを最小限に抑えるように、製造プロセスを検討することができます。

また、アジレントの Microlab FTIR ソフトウェアは、定量結果を、数値として表示するだけでなく、設定された閾値に基づくカラーバーで表示することが出来ます。

急速に変化する新しい分析課題に、アジレントの Cary 630 FTIR を役立てる方法については、アジレントの製品ページをご覧ください。