Access Agilent 2011年9月号

Agilent Poroshell 120 カラムによる HPLC メソッドの変換と分析時間の短縮

William Long、PhD.
アジレント シニアアプリケーションサイエンティスト

米国薬局方 (USP) メソッドは、薬剤および原材料の試験に広く用いられています。しかし残念ながら、すべての USP メソッドが、最新カラム技術に対応するように更新されているわけではありません。

ここでは、表面多孔性 Porous Agilent Poroshell 120 カラムを用いれば、非ステロイド性抗炎症薬ナプロキセン分析のUSP メソッドを最適化し、時間と費用を節約できることを説明します。メソッドの大幅な再バリデーションは必要ありません。これらの手順をあらゆる USP メソッドに適用し、時間や溶媒を節約することが可能です。

確立された移動相条件には、どのような変更を加えられる?

USP general chapter <621> では、クロマトグラムの品質を高めるためのモノグラフの修正が認められています [1]。新たな技術の導入時や、実用性に問題がある場合などには、カラムの交換も認められています。

一般的に、カラムの長さが短くなると、全多孔性カラムのクロマトグラフィ分離能を維持するためには、粒子サイズを小さくしなければなりません。しかし、Poroshell 120 カラムは、60 % の背圧で、1.8 ミクロンカラムの約 90 % のカラム効率を得られるように設計されています。そのため、システム適合性要件を一貫して満たしながら、全面多孔性 5 ミクロン粒子を充てんした長いカラムを、短い 2.7 ミクロン表面多孔性カラムに置き換えることが可能です (表 1)。

USP メソッドの多くはアイソクラティックメソッドなので、導入は容易です。しかし、メソッドを用いてサンプルを分析するまえに、システム適合性条件を満たさなければなりません。通常、これらの条件は、分析対象物ピークの効率と内部標準の分離能をもとに設定されます。

 分析条件 可能な修正範囲
 カラムの長さ ± 70 %
 カラムの内径 ± 25 %
 粒子サイズ 最大 50 % の縮小; 拡大は認めず
 流速 ± 50 %
 注入量 システム適合性テスト (SST) 条件を満たす必要あり
 カラム温度 ± 10 %
 移動相 pH ± 0.2
 UV 波長 メーカー仕様を外れた変更は認めず
 バッファ塩濃度 ± 10 %
 移動相組成 少量成分調整は ± 30 % または絶対濃度 ± 10 % のうち、いずれか小さいほう

表 1. USP チャプター <621>で認められているメソッド修正内容。この範囲を超える修正は変更と見なされ、メソッドの再バリデーションが必要となります。

 

図 1. Poroshell 120メソッド修正のフローチャート

表 2. 2 つのピークを示すナプロキセン錠剤の分析 (ナプロキセンと添加標準)。

ナプロキセン: 複雑なメソッドを変換し、シンプルな条件に

この研究では、ナプロキセン分析メソッドを 150 mm C18 カラムから短い Poroshell 120 カラムへ変換する場合の実現可能性を評価しました。

USP ですでに規定されているナプロキセン錠剤の分析メソッドでは、L1 (C18)、5 µm カラムが指定されています。このメソッドをもとに、オリジナルのHPLC メソッドを Poroshell 120 カラムに切り替える場合のフローチャートを開発しました (図 1)。

次に、Poroshell 120 4.6 × 150 mm、5 µm、L1 (C18) カラムを開始点として、ナプロキセンメソッドを更新しました。USP では、C18 結合の表面多孔性カラムは、L1 相当カラムと定義されているため、この修正が可能です。

以下の修正をおこないました。いずれも、表 1 にまとめた USP 推奨事項に準拠しています。

  • カラム長さを 150 mm から 100 mm へ、次に 50 mm へ短縮
  • 粒子サイズを 2.7 µm に縮小
  • 表 2 の方程式を用いて、注入量を調整

最後に、更新したメソッドを検証するために、以下のカラムを用いて、同一条件下でナプロキセンサンプルを分析しました。

  • Agilent Eclipse Plus C18 4.6 x 150 mm、5 µm
  • Poroshell 120 EC-C18 4.6 × 100 mm、2.7 µm
  • Poroshell 120 EC-C18 4.6 × 50 mm、2.7 µm

実験条件の詳細については、図 2 を参照してください。

従来の HPLC 機器で優れた効率を実現

このナプロキセン分離では、流速や移動相を変更せずに、メソッドを Poroshell 120 カラムに簡単に変換できることが示されています。

図 2 の上段のクロマトグラムは、Eclipse Plus C18 カラムでの USP 分析を示しています。シャープなピークが得られています。カラム効率は必要な値の 3 倍で、分離能は約15 です。中段のクロマトグラムは、Poroshell 120 EC-C18 カラム (100 mm) を用いれば、オリジナルメソッドの 2 倍のスピードで、効率と分離能が向上することが示されています。

図 2. 2 つのピークを示すナプロキセン錠剤の分析 (ナプロキセンと添加標準) (図を拡大)。

図 3. 分析時間がオリジナルメソッドの 8 分から 1.2 分に短縮 (図を拡大)。

下段のクロマトグラムで示した Poroshell 120 EC-C18 カラム (50 mm) でも、効率と分離能の要件が依然として満たされている一方で、分析スピードは 5 µm カラムの 約4.5 倍になっています。

最終的にメソッドに加えた修正を図 3 に示しています。流速を 50 % 上昇させ、1.8 mL/min としています。この修正により、メソッドのスループットがいそう向上します。

また、Poroshell 120 カラムは 600 bar までの安定性を備えているため、UHPLC システムの高流速分析にも適しています。

これらの結果は、Agilent Poroshell 120 LC カラムを使えば、既存の LC 機器の性能を高められることを裏付けています。2.7 µm の表面多孔性粒子により、分析時間が短縮され、短いカラムの分離能が高まります。これにより、溶媒や廃液のコストを削減しながら、短い時間でより多くのサンプルを分析することが可能になります。メソッドの再バリデーションは必要ありませんが、実施する場合でも短い時間ですみます。

Poroshell 120 LC カラムによる HPLC 機能の向上の詳細については。アジレントのカタログをダウンロードしてください。

参考文献

  1. USP Method Validation Guidance. United States Pharmacopeia XXX Supplement 2: System Suitability Testing, Rockville, MD. 2007, Chapter <621>