Access Agilent 2011年6月号

複雑な残留環境汚染物質の多成分一斉分析

Laura Provoost
アジレントGC アプリケーションスペシャリスト

果物および野菜に含まれる残留農薬分析には、抽出とクリーンアップの両方の操作が必要です。GC/MSを用いた多成分一斉分析は、対象化合物の数を減らし、設備の生産性を向上するために、環境サンプルで日常的に実行されています。多成分一斉残留分析は、多環芳香族炭化水素 (PAH)、ポリ塩化ビフェニル (PCB)、有機塩素系農薬 (OCP) などのさまざまな化合物を対象としています。

PAH、PCB、OCP はさまざまな物質に由来し、異なる化学物質クラスに属しています。PAH は、有機物質の不完全燃焼または熱分解で生じ、複数の芳香環が含まれます。PCB は、さまざまな数の塩素原子を持つ 2 つのフェニル基が含まれる化学物質です。これらは、その可燃性、化学的安定性、高沸点、電気絶縁性により、数多くの工業および商業アプリケーションで使用されてきました。PCB と OCP は、いずれも生物の体内に蓄積され、世界中で監視が続けられている、毒性が残留する環境汚染物質です。

Agilent J&W Select PAH GC カラムは、次を実現する独自の機能を備えています。

  • 複数の残留異性体の分離
  • 偽陽性と不正確な結果の解決
  • データ処理の簡略化

分析の課題

多成分残留分析は、対象化合物が広範に及び、複数の成分が共溶出する傾向があるため、困難な分析になります。異性体が共溶出すると、質量分析装置ではそれ以上分離できないため、偽陽性や間違った結果が得られることになります。共溶出する一般的な異性体は PCB 28 と PCB 31、PCB 138 と PCB 163、ベンゾ[b]フルオランテンとベンゾ[k]フルオランテン、インデノ[1,2,3-c,d]ピレンとジベンズ[a,h]アントラセン、p,p'-DDT と o,p'-DDT、シスヘプタクロロエポキシドとトランスヘプタクロロエポキシドです。

この多成分残留分析では、3 つの化合物グループに 16 種の PAH、17 種の PCB、24 種の有機塩素系農薬が含まれていました。これらのグループ内では、6 対の化合物の分離が困難です。例えば、ベンゾ[b]フルオランテン/ベンゾ[k]フルオランテンは、複数の液相での分離が非常に困難なことで知られています。

体内への高い蓄積性と慢性毒性を持つ、マーカ PCB と呼ばれる 28、52、101、138、153、180 の 6 つが含まれる PCB 分析グループは、多くの場合、大気、室内空気、汚泥、廃棄物の特徴的な PCB マーカとして機能します。PCB 28 と PCB 138 の特定と定量は、同一の m/z 値を持つために共溶出する同位体 PCB 31 および PCB 163 によって妨害されます。その他の 4 つのマーカ PCB については、クロマトグラフィの分離は困難ではありません。

16 種の PAH 化合物のうち、ベンゾ[b]フルオランテンとベンゾ[k]フルオランテンは質量が同じです (m/z 252)。インデノ[1,2,3-cd]ピレンとジベンズ[a,h]アントラセンのペアは、質量比が 276 と 278 です。PCB ペア 28/31 および 138/163 は質量スペクトルが同一であるため、MS だけでは分離することができません。PCB 28 および 138 は、Agilent J&W Select PAH カラムの液相の選択性を利用したときにのみ正確に定量することができます。OCP の p,p'-DDD と o,p'-DDT は質量スペクトルが同じです。シスヘプタクロロエポキシドとトランスヘプタクロロエポキシドは、いずれも質量スペクトルに m/z 353 を持っています。このペアはその娘イオンによって分離されます。

イオン対の高速分離

Agilent J&W Select PAH カラムは、PAH、PCB、OCP の多成分残留分析を 25 分未満で実行します。PCB グループでは、重要なペア、PCB 28 / PCB 31 および PCB 138 / PCB 163 が十分に分離されます (図 1)。Agilent J&W Select PAH カラムの相の選択性により、ベンゾ[b]フルオランテン/ベンゾ[k]フルオランテンおよびインデノ [1,2,3-cd] ピレン/ジベンズ [a,h] アントラセンの両方について優れた分離が可能になります (図 2)。2 つの OCP ペアについても優れた分離結果が得られます。p,p'-DDD/o,p'-DDT とシスヘプタクロロエポキシド/トランスヘプタクロロエポキシドは、いずれもベースライン分離されています (図 3)。

図 1. Agilent J&W Select PAH カラムを使用した分離が困難な PCB ペアの分離 (図を拡大)。

図 2. Agilent J&W Select PAH カラムの選択性を使用した、ベンゾ [b] フルオランテン/ベンゾ [k] フルオランテンおよびインデノ [1,2,3-cd] ピレン/ジベンズ [a,h] アントラセンなどの分離が困難な PAH ペアの優れた分離(図を拡大)。

図 3. p,p'-DDD/o,p'-DDT およびシスヘプタクロロエポキシド/トランスヘプタクロロエポキシドの優れたベースライン分離(図を拡大)。

環境汚染物質のための単一のソリューション

Agilent J&W Select PAH は、すべての異性体を分離することで PAH 分析に単一のソリューションを提供する初めてのキャピラリカラムです。このカラムは、クリセン、トリフェニレン、ベンゾフルオランテン (b、j、k) を含む EPA の PAH を 7 分未満で、EU の PAH を 30 分未満で分離することにより、環境および食品中の PAH を容易かつ迅速に、そして正確に定量します。追加の分析は不要です。

環境汚染物質の多成分残留一斉分析用にアジレントが提供するソリューションの詳細をご覧ください。PCB、PAH、OCP の分析の詳細は、アジレントのアプリケーションノート SI-02438 をダウンロードしてください。