Access Agilent 2011年6月号

オリーブオイル中の有機リン系残留農薬の高速分析

Ken Lynam
アジレントシニアアプリケーションケミスト

果物および野菜に含まれる残留農薬分析には、抽出とクリーンアップの両方の操作が必要です。この例では、QuEChERS法のサンプル前処理抽出メソッドを使用して、脂質含有量の多いオリーブオイル中の残留農薬を分析します [1]。このアプローチでは、手間の掛かる抽出およびクリーンアップ手順を簡略化すると同時に、残留農薬分析に十分に対応するサンプルマトリックスのクリーンアップを提供します。抽出した残留農薬は、炎光光度検出器 (FPD) と GC/MS により測定します。

妥協のない分析レスポンス

有機リン系農薬 (OPs) などの活性化合物は、特に微量の場合にサンプル流路の活性面に吸着されて分析のレスポンスを低下させ、ピークのテーリングを発生させることがあります。オリーブオイルなどの条件が厳しいサンプルマトリックスでは、さらに大きな課題です。ここでは、微量の活性対象化合物に対して一貫したカラム不活性パフォーマンスのある Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート (UI) キャピラリカラムを使用してカラムの活性度を最小限に抑え、正確な定量を確実に行いました。この中極性カラムは、共溶出ピークを分離するための、またはマトリックス干渉からピークをシフトさせるための高い選択性を提供します。

活性度の上昇は繰り返し行われる注入によって発生します。不揮発性マトリックス成分が注入口ライナとカラムヘッドに徐々に蓄積し、活性面を作り出します [2]。この蓄積が、ピークの形状、レスポンス、およびリテンションタイムに影響を与えます。不活性処理済みのウールが含まれるアジレントのウルトライナートライナは、不揮発性成分をトラップし、活性を最小限に抑えて、蓄積を防止します。

表 1. (図を拡大)。

図 1. オリーブオイルに含まれる農薬の QuEChERS サンプル前処理手順のフローチャート (図を拡大)。

Analyte Protectantを添加することで、サンプルマトリックス成分が保護剤としても機能し、熱変性を軽減して、活性サイトをマスキングします。この効果により、マトリックスを注入したときの対象化合物のピーク形状と信号は、マトリックスがない場合と比べて向上します [2]。L-グルコン酸 γ ラクトース (グロノラクトン) を加えると、対象化合物が誤って報告されることを避けることができます。メタミドホス、アセフェート、オメトエート、ジメトアートは、すべてグロノラクトンでピーク形状の劇的な向上が見られました [34]。

MSD と FPD をスプリット検出することで、OPs の同時検出が可能になり、対象化合物の特定、確認、および定量が 1 回の注入で可能になる補足データが得られます。

生産性を向上するバックフラッシュ

機器のサイクルタイムの高速化は、溶出の遅いマトリックス成分を注入口パージバルブを通じてバックフラッシュし、注入と注入の間の長いべークアウト時間を回避することにより実現します。バックフラッシュによって低揮発性成分がイオン源から除去されるため、イオン源のクリーニング間隔も長くなります [5]。このシステムは、Agilent 7890A GC / 5975C MSD と FPD およびオートサンプラで構成されています (表 1)。

農薬およびサロゲート標準スパイク溶液を使用し、適切な希釈によりマトリックスブランク抽出物の検量線を作成しました。グロノラクトン溶液をキャリブレーション標準に加え、各標準の濃度を 0.5 mg/mL としました。

オリーブオイルに含まれる農薬の容易な抽出

エキストラバージンオイルのサンプルを、修正を加えた QuEChERS 法を使用して抽出します (図 1)。水およびアセトニトリルだけを、サンプルと同じ方法で準備し、試薬ブランクとして使用します。

図 2 からわかるように、DB-35ms UI キャピラリカラムは対象の OPs を 16 分未満で分離し、非常に優れた極性ペプチドピーク形状を提供するため、微量でのより信頼性の高い定量が可能です。図 3 に、濃度 15 ppb における 4 つの極性 OPs の優れたピーク形状を示します。オリーブオイル中の OPs の検出レベルは、EU、Codex、および US が指定したオリーブの最大残留レベル (MRL) 以下です。マトリックスマッチキャリブレーション標準の回帰係数は R2 ≥ 0.999、強化分析の回収率は 63 ~ 107%、平均 RSD は < 9% となり、残留農薬の測定における DB-35ms UI カラムの有効性をさらに示しています。

図 2. 100 ng/mL マトリックスマッチ OP 標準とグロノラクトン対象化合物保護剤を Agilent J&W DB-35ms ウルトライナートキャピラリカラムで分析したときの GC/FPD クロマトグラム (図を拡大)。

図 3. 15 ng/mL マトリックスマッチ農薬標準とグロノラクトン対象化合物保護剤を Agilent J&W DB-35ms ウルトライナートキャピラリカラムで分析したときの GC/FPD クロマトグラム (図を拡大)。

分析時間および生産性

この実験は、オリーブオイルに含まれる微量 OPs 残留物を監視するための効率的な分析方法を示しています。カラム溶出液を MSD と FPD の間でスプリットすることにより、1 回の注入で OPs の選択性、特定、確認を達成できるため、生産性が向上します。GC/MS-SIM が選択性と確認を提供し、詳細な特異性と定量は、リン酸モードの FPD が提供します。

Bond Elut QuEChERSは、低量対象化合物の検出能力を維持しながら、マトリックスの干渉を最小限に抑えるために十分なサンプルクリーンアップを行います。QuEChERS 法を使用することで、迅速なサンプル前処理と高いサンプルスループットが実現します。残留サンプルマトリックスのキャリーオーバーがバックフラッシュによって除去され、ベークアウトサイクルが不要になるため、実行時間が大幅に短縮されます。

アジレントが提供する農薬の微量分析ソリューションの詳細な説明をご覧ください。オリーブオイルに含まれる OPs の分析の詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5990-5553EN をダウンロードしてください。

謝辞: Bond Elut QuEChERS サンプル前処理手順についての支援をいただきましたアジレントシニアアプリケーションケミストの Joan Stevens 氏に感謝申し上げます。

参考文献

  1. Cunha SC, Lehotay SJ, Mastovska K, Fernandes JO, Beatriz M, and Oliveira PP. Evaluation of the QuEChERS sample preparation approach for the analysis of pesticide residues in olives. J. Sep. Sci. 2007; 30, 620-632.

  2. Erney, DR, Gillespie, AM, Gilvydis, DM, Poole, CF. Explanation of the matrix-induced chromatographic response enhancement of organophosphorus pesticides during open tubular column gas chromatography with splitless or hot on-column injection and flame photometric detection. Journal of Chromatography 1993; 638, 57-63.

  3. Anastassiades M, Lehotay SJ, Štajnbaher D, Schenck FJ. Fast and easy multiresidue method employing acetonitrile extraction/partitioning and "dispersive solid-phase extraction" for the determination of pesticide residues in produce. J. AOAC Int. 2003; 86, 412-431.

  4. Anastassiades M, Mastovska K, and Lehotay SJ. Evaluation of analyte protectants to improve gas chromatographic analysis of pesticides. Journal of Chromatography A. 2003, 1015, 163-184.

  5. Meng CK. Improving productivity and extending column life with backflush. Agilent Technologies, Inc. Application Brief 2006; 5989-6018EN.