Access Agilent 2011年4月号

軽質炭化水素流に含まれる微量硫黄の測定を可能にする新しい GC カラム

Kees van der Sar
アジレント GCカラムプロダクトマネージャ

炭化水素流中に硫黄化合物が存在すると、プロセスの性能に影響が生じ、不測の化学反応や触媒活性の喪失 (触媒被毒) につながり、最終的には収益が低下することになります。軽質炭化水素に含まれる硫黄の GC 分析には、低い検出下限を得るために高いサンプルロード性能が求められるうえに、活性の高い化合物を微量レベルで分析する性能も必要とされるため、大きな困難が伴います。こうした困難を解消するために、アジレントは Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムを開発しました。硫黄化学発光検出器 (SCD) などの硫黄分析用検出器を備えた GC とともに使用すれば、プロピレンマトリックス中に 20-ppb レベルで含まれる H2S、COS、CH3SH を検出できます。

不活性硫黄分析カラムの必要性

炭化水素流に含まれる硫黄成分の低 ppb レベルの定量には、SCD などの硫黄分析用検出器を備えたガスクロマトグラフィが用いられます。分析に必要な低 ppb レベルの検出下限を得るためには、大量のサンプルが必要となりますが、同時にマトリックスのオーバーロードやクエンチング効果が生じます。クエンチング効果とは、サンプルマトリックスなどのバックグラウンド干渉により、検出器のシグナル出力が低下する現象のことです。通常、クエンチング効果は、検出器の感度や直線性が限られている場合や、定量下限が高い場合に生じます。硫黄成分をサンプルマトリックスから十分に分離すれば、この効果を排除することができます。

同時に、H2S などの活性の高い化合物は、GC のフローパスにある活性の高い部位に吸着することがあります。これにより、ピーク形状が悪化し、場合によっては微量化合物が完全に吸着して検出出来ない場合もあります。フローパスのなかで、もっともサンプルと接触する面積が広い部位が、GC カラムです。そのため、カラムの不活性化は必要不可欠です。

こうしたことから、炭化水素流中の硫黄分析に使用する GC カラムの理想的な条件としては、H2S などの活性の高い化合物に対して不活性であること、ロード性能が高いこと、硫黄とマトリックス成分をベースラインで分離できる独自の選択性を備えていることが求められます。

図 1. 硫黄化学発光検出器を用いた H2S、COS、メチルメルカプタンの直線プロットは、Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムの不活性と優れたロード性能を示しています(画像を拡大)
図 2.H2S、COS、メチルメルカプタンと炭化水素分析の重ね表示からは、COS とプロピレンがベースラインで分離していることがわかります(画像を拡大)
図 3.パルスド炎光光度検出器を用いたプロピレン中 H2S、COS、メチルメルカプタンの分析では、COS ピークがプロピレンマトリックスピークの影響を受けていないことが示されています(画像を拡大)

硫黄分析のニーズに対する革新的なソリューション

Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムは、革新的な固定相を備えたporous layer open tubular (PLOT) カラムで、軽質炭化水素 C3 マトリックスに含まれる H2S、COS、CH3SH といった硫黄種の分析用に開発されたものです。H2S でほぼ 100 % というレスポンスを誇り、優れたピーク形状を実現します。また、高いロード性能を備え、硫黄成分とマトリックス成分を分離できます。

図 1 は、Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムにおける活性の高い硫黄化合物の直線性を示しています。このプロットでは、20-ppb という低濃度が用いられていますが、H2S 直線と COS 直線で同様の傾きが得られています。このことは、このカラムの不活性とロード性能の高さを証明しています。

図 2 では、揮発性硫黄成分と揮発性炭化水素の分析結果を重ねて表示しています。COS とプロピレンの分離に注目してください。純粋なプロピレンを分析すると、カラムのオーバーロードに起因するピーク拡散により、プロピレンピークは COS の近くに移動します。この移動にもかかわらず、COS はプロピレンピークとベースラインで分離されています。図 3 は、パルスド炎光光度検出器 (PFPD) を用いて純プロピレン中硫黄成分を分析した結果を示しています。検出器シグナルがプロピレンピークにより完全にクエンチングされていることが、ベースラインの乱れからわかります。独自の選択性を備えた Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムでは、プロピレンによる COS ピークの乱れが回避されます。検出器のクエンチング効果を押さえることで、COS の定量精度が最大限に高まります。

図 3 のサンプルは、約 300 ppb の H2S、500 ppb の COS、300 ppb のメチルメルカプタンを含むプロピレンです。メチルメルカプタンのピークは、カラムオーバーロードによるピーク拡散を避けられないことを示しています。これは、プロピレンピークがメチルメルカプタンより先に溶出するためです。

軽質炭化水素に含まれる活性の高い硫黄化合物を
低 ppb レベルで検出

SCD などの硫黄分析用検出器を備えた GC で Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムを使えば、マトリックスから硫黄化合物を良好に分離できるため、プロピレンマトリックス中に微量レベルで含まれる H2S、COS、CH3SH を検出できます。マトリックスと硫黄成分を分離することで、マトリックスに起因するクエンチング効果が排除され、硫黄化合物のレスポンスが向上します。このカラムは、H2S などの活性の高い硫黄化合物のレスポンスにも優れているため、20-ppb レベルの定量が可能です。Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムは PLOT カラムですが、粒子が流出しないため、スパイクは生じません。そのため、スイッチングバルブと問題なく組み合わせることができます。

軽質炭化水素流に含まれる硫黄を分析する必要がある方は、アジレントの製品ページで Agilent J&W Select Low Sulfur GC カラムの詳細をご確認ください。