Access Agilent 2011年1月号

創薬分野における化合物管理施設の迅速な拡大を支援する、拡張可能なモジュール構成のデザイン

David Camp 博士
Queensland Compound Library ディレクタ、グリフィス大学、クィーンズランド、オーストラリア

施設を迅速に拡張することにより、創薬における重要な問題を解決することができます。特に、公的資金を受けている分野では、その効果は大きくなります。生物学の研究においては、何千もの小分子のハイスループットスクリーニング (HTS) が求められますが、非営利組織の化学研究では、HTS を行わずに、少ない数の化合物を合成するケースが多くなります。この 2 つの分野を統合するために、Queensland Compound Library (QCL) では、オーストラリアのさまざまな研究者から得られた化学的データを、環境制御が施された中央レポジトリにまとめ、生物学の研究者がアクセスできるようにしています。QCL では、Agilent 自動化ソリューションの機器を用いて、マイクロチューブ中でサンプルを前処理し、小分子ライブラリのスクリーニング用のプレート構成に再フォーマットしています。

中央レポジトリでは化学者が重要な質量分析を行い、その結果により、スクリーニングに適した小分子が明らかになります。中央レポジトリには、個別のコレクションと比べて、いくつかの利点があります:

  • 対象となる化学物質の範囲の拡大
  • ハイスループットスクリーニングへの適性 (多くの化合物コレクション)
  • 他の方法では見すごされる可能性のある分子から得られる価値
  • 化学と生物学のシナジー

拡大を促進するモジュール構成と拡張性

図 1. 2008 年の初期導入時には、BioCel システムを用いて、マイクロチューブのサンプルを処理し、化合物レポジトリにマイクロプレートを保管していました。現在の構成も、この構成をもとにしています。
図 2. QCL の一般的なワークフローにとって、アジレントの自動化ソリューションはなくてはならない存在です(図を拡大)。

QCL での施設デザインの原則は、モジュール構成と拡張性が基礎となっています。これにより、初期のニーズ (化合物 5 万 ~ 10 万種類という中程度の量) に対応しながら、必要に応じて拡張することが可能になっています。

QCL の初期の見通しでは、3 つの必要条件が特定されました。マイクロチューブの保管、ナノリットル容量のサンプル処理ユニット、そしてマイクロ (タイター) プレートの保管です。現在の潮流に対応し、顧客の要望に応えるためには、サンプル処理ユニットの適応性を高め、将来的なコンポーネントの交換に対応できるようにする必要がありました。また、プレートやマイクロチューブの保管の環境制御と、サンプル処理の統合も不可欠でした。これは、柔軟性を損なわずに、化合物の完全性を維持するためです。

初期の構成は、マイクロチューブおよびマイクロプレートの保管モジュールと、サンプル処理用の Agilent BioCel システム (図 1) で、以前のニュースレターの記事で、詳細を説明しています。BioCel ロボットは、チューブとプレートの両方の操作に対応できる幅広い装置を搭載しています。このシステムは、「スレーブ」にあたる保管モジュールを従えた BioCel システムが、「マスター」ユニットとして機能するように構成されていました。この構成では、Agilent VWorks Automation Control ソフトウェアを用いて、チューブおよびプレートの保管に関する情報をやりとりしていました。たとえば、VWorks での操作で、マイクロチューブやマイクロプレートのサンプルを保管および検索することができます。

一般的な QCL ワークフロー (図 2) では、まずサンプルをマイクロチューブ中で 5 mM 原液として調製したのち、分析用のプレートに再フォーマットし、最終的にアッセイに対応するプレートとして複製します。すべてのサンプルを最初から最後まで追跡するために、各マイクロチューブを、固有の 2D バーコードで標識しています。このバーコードを、サンプルの保管時または検索時に読み取ります。

中断を最小限に抑えた拡張

2008 年半ばに業務を開始して以来、QCL は劇的に拡大しています。施設が始動してから 1ヶ月のうちに、15 万の化合物が保管用に提出されました。そのため、新たなチューブおよびプレートの保管場所をただちに確保する必要が生じました。12ヶ月後には、さまざまな組織から、さらに 11 万 5000 もの化合物が提出されました。2010 年初めには、拡大するニーズに対応するために、4 番目のチューブ保管場所を導入しました。幸いなことに、追加した保管モジュールは、2~3 日ですぐに統合できたので、業務の中断は最小限ですみました。

マイクロチューブで処理をするサンプルの提出数が増加したのに加えて、プレートの作成もすぐに開始され、現在でもペースが落ちることなく続いています。QCL が業務を開始してからの 2 年間で、マイクロチューブから作成したり、分析用プレートから複製したりしたマイクロプレートの数は、7000 を超えています。

一部のユーザーでは、自身の施設が長期保管に適していない場合、プレートベースの既存のコレクションを提出するケースも出てきました。このフォーマットにより、マイクロプレートを選別できる装置の導入が必要となりました。そのため、Agilent Bravo Automated Liquid Handling Platform を導入し、このニーズに対応しました。

さらなる BioCel システムを中心とした今後の成長

サンプル保管量が増えているため、サンプル処理容量も比例して高める必要が生じています。そのため、現在、2 つめの BioCel システムの導入が計画されています。これにより、マイクロチューブとマイクロプレートの操作を別々に行い、2 つの専用ロボットで対応することになります。

柔軟性の高い BioCel システムでは、予想以上の利点が得られています。「完全なモジュール構成」により、施設の拡張を促進する (追加の BioCel ロボットを施設に組み込める機能) と同時に、「細やかなモジュール構成」により、プラットフォーム間でコンポーネントを相互に運用し、施設の現在のニーズに応えることが可能です。QLC の場合、2 つ目の BioCel システムを導入すると、プレートハブが追加されることで、より多くのマイクロチューブを処理できるようになります。Echo の運用についても、既存のプラットフォームから切り離し、ドッキングテーブルに配置することで円滑化できます。また、オフラインの Bravo をプレート中心のロボットに配置したり、需要がピークを迎えるときには、オフラインのままバックアップユニットとして使用したりすることもできます。

2 つの BioCel システムの最終的な構成には、ある程度の冗長性が盛り込まれているので、必要に応じて、アッセイ対応プレートの処理をチューブ中心のプラットフォームで行うこと (またはその逆) も可能です。

Queensland Compound Library の業務に対する要望の高さは、特に学術界において、このリソースが化学者にとっても生物学者にとっても魅力的であることを示しています。この最先端施設の詳細については、ホワイトペーパーの完全版 (5990-6459EN) をご覧ください。

参考資料

アジレントのオートメーションシステムを用いたハイスループットな自動発見手法