Access Agilent 2010年11月号

環境大気中 VOC の継続的な高速オンライン分析

Xiaohua Li
アジレントケミスト

フィールドで使用する可搬型 GC/MS では、ラボレベルの性能と高速スクリーニング分析に対応できる機能を確保することが分析上の課題となります。また、フィールド分析では、サンプル操作をできるかぎり簡単にすることも求められます。Agilent 5975T Low Thermal Mass (LTM:低熱容量) GC/MSD と、アジレントのパートナー Markes International の提供する空気サンプリングおよびサーマルデソープション装置を組み合わせれば、環境大気中の揮発性有機化合物 (VOC) のフィールドモニタリングに対応できる完璧な自動ソリューションが実現します。

Markes International の UNITY-Air Server では、環境大気またはキャニスターから導入したサンプルについて、冷媒を用いずに濃縮および制御フローサンプリングを行うことができます。Agilent 5975T の Low Thermal Mass (LTM:低熱容量) 技術と組み合わせれば、時間分解能を高め、継続的なオンラインモニタリングを行うことが可能です。このソリューションの総サイクル時間は、トラップデソープションおよび GC/MSD 分析を含めて約 20 分です。風向きや降水量、温度といった現地の天候パラメータと空気モニタリングデータを相関させれば、地域の各産業と放出量を関連付けることができます。

低コストのオンラインサンプリング

環境大気に含まれる 62 種類の VOC について、30 分ベースで体系的なオンラインサンプリングおよび分析を実施しました。サンプルソースとして Air Server を備えた Markes International Series 2 (ULTRA-) UNITY™ Thermal Desorber (TD) を使用しました。Series 2 (ULTRA-) UNITY システムに Air Server モジュールを追加し、キャニスターまたは環境大気からの大気フローの制御を可能にしました。このシステムを脱着の電気的冷却フォーカシングトラップに直接連結しました。使用コストやメンテナンスの手間を最小限に抑え、最適な分析感度を得るために、連結したシステムを冷媒不使用の条件で動作させました。

図 1. 1-ppbv の較正用標準混合物の分析で得られた SIM クロマトグラムは、良好な分離能を示しています(図を拡大)。
図 2. 1,3-ブタジエンおよび1,2,4-トリクロロベンゼン (0.26~6.5 ppbv) の検量線は、良好な直線性を示しています(図を拡大)。

優れたクロマトグラフィ分離能とメソッド性能

この研究では、ナローボア Agilent J&W LTM カラム (DB-624、20 m × 0.18 mm × 1.0 µm) を用いて、高速分析を行いました。図 1 には、加湿窒素 1 L 中の容量比が 1 ppb (ppbv) の較正用標準混合物の分析について、選択イオンモニタリング (SIM) モードで測定したトータルイオンクロマトグラム (TIC) を示しています。

メソッド性能を調べるために、濃度の異なる標準ガスを作成し、キャニスターに採取したのち、較正、メソッド検出下限 (MDL) の測定、再現性の評価を行いました。

濃度 0.26 ppbv~6.5 ppbv (サンプリング量 1 L に相当) の各種 VOC の検量線を測定しました。この濃度範囲は、各 VOC の通常の大気濃度範囲です。各 Cal Level 標準を分析し、5 ポイント検量線 (0.26、0.65、1.3、2.6、6.5 ppbv) を作成しました。図 2 に、例を示しています。米国環境保護庁のメソッド概要 TO-15 に記載された公式を用いて、各濃度の応答係数 (RF) を算出しました。

パーセント相対標準偏差 (%RSD) は、62 種類すべてのターゲット化合物で 4.0~29.8 % となり、メソッド TO-15 で定められた許容基準 30 % の範囲内に収まりました。

EPA TO-15 では、予想される検出下限に近い濃度で対象化合物を 7 回繰り返し測定し、7 回の濃度における標準偏差を算出し、その値に信頼係数 3.14 をかけて、各システムのメソッド検出下限 (MDL) を求めるよう定められています。この手法に従い、Cal Level 1 (0.26 ppbv) 標準を 7 回繰り返し分析し、最初の検量線を用いて各化合物の濃度を算出しました。1 L 空気サンプルにおけるメソッド検出下限の算出値は、各 VOC により異なりますが、0.019~0.218 ppbv の範囲内でした。

図 3. ChemStation のカスタムレポートでは、ラボ空気中のトルエンおよびエチルベンゼンの 12 時間変動プロフィールが示されています(図を拡大)。

実際のサンプルの測定と傾向分析

Agilent ChemStation ソフトウェアのカスタマイズレポートを使えば、分析対象化合物の継続的な変動プロフィールを簡単にプロットすることができます。ラボにおける 12 時間の空気モニタリングにより、無人操作中のアナライザ性能を評価しました。この分析では、24 のデータファイルを採取しました。ChemStation でこのデータファイルを用いて、継続的な変動傾向分析のカスタマイズレポートを作成しました。この分析を行ったラボでは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンといった芳香族炭化水素が多く存在することがわかりました。図 3 には、ラボ環境において夕方から翌日の夜明けまでに採取したトルエンとエチルベンゼンのプロフィールを示しています。

高速オンラインモニタリングを可能にするソリューション

可搬型 Agilent 5975T LTM GC/MSDMarkes International の空気サンプリングおよびサーマルデソープション機器を用いたこのメソッドを使えば、低 ppb から ppm の範囲で空気中に含まれる 60 種類の VOC を迅速かつ正確に、高感度で測定できることが、ここで示した実験結果により実証されています。サイクル時間が短く、検出下限が優れているほか、Agilent 5975T LTM GC/MSD の設置スペースが小さいことから、このメソッドは、フィールドでの緊急モニタリングでもルーチン試験でも威力を発揮します。

環境大気に含まれる 62 種類の VOC を対象とする 30 分ベースの体系的オンラインサンプリングおよび分析では、きわめて大量で複雑なデータセットが生成されますが、Agilent ChemStation ソフトウェアのカスタマイズレポートテンプレートを使えば、ターゲット化合物の継続的な変動プロフィールを簡単に表示することができます。

環境大気中 VOC のオンサイトモニタリングを実施する必要がある方は、Agilent 5975T LTM GC/MSD および Markes International に関するアジレントの Web サイトで詳細をご確認ください。アプリケーションンノート (5990-6321EN)でも、本研究の詳細を読むことができます。