Access Agilent 2010年6月号

半揮発性の活性サンプルを用いたGC カラムの性能比較

Ken Lynam、Doris Smith
アジレント アプリケーションケミスト

環境サンプルを扱うラボでは、一般的に、酸性または塩基性化合物のような、活性化合物を含んだサンプルをクロマトグラフで分析するのが困難であることがわかっています。特にGC フローパスに活性点が存在する場合、これらの化合物はテーリングしやすくなるため、よいピーク形状を得られず、再現性や検出下限値に悪影響を及ぼします。その結果再分析が必要になり、コストがかさむ場合があります。この問題を解決するために、分析が困難な活性化合物をテストプローブとして使用した Agilent J&W ウルトライナートキャピラリ GC カラムの品質試験を独自に実施しました。最近実施した Agilent J&W HP-5ms ウルトライナート GC カラムと Restek Rxi-5ms カラムの比較から、ウルトライナートカラムが優位であることがわかりました。

図 1. Agilent J&W HP-5ms ウルトライナートカラムでは、酸化物と塩基物に対して優れたピーク形状が得られているのに対して、Restek Rxi-5ms カラムでは一部の活性化合物で貧弱なピーク形状を示しています(画像を拡大するにはここをクリックします)。

性能を保証するための厳密な出荷前検査

世界中の環境ラボで実施されている半揮発性サンプルの分析は、EPA (米国環境保護局) メソッド 8270[1] に準拠することが重要になります。このサンプルに含まれている多くの活性化合物の分析は困難を極めます。安息香酸または 2,4-ジニトロフェニールのような酸性化合物、およびアニリンまたはベンジジンのような塩基性化合物は、カラムなどのサンプルのフローパスにある活性点に吸着する可能性が特に高いです。

微量分析で活性化合物の正確な分析が実施できることを保証するために、Agilent J&W ウルトライナートキャピラリ GC カラムでは、高度な活性プローブを使った低濃度/低温度での個別の検査が行われています。[2-4]この検査によってカラムの一貫した不活性さが保証され、結果として活性化合物に対するより優れたピーク形状と、用途に応じた低い検出下限が実現します。

活性化合物の分析で重要になる不活性試験

アジレントのエンジニアは、EPA メソッド 8270 に含まれている最も活性度の高い半揮発性サンプル (EPA 8270 ショートミックス) を Agilent J&W HP-5ms ウルトライナートカラムと Restek Rxi-5ms カラムを使って分析しました。両カラムのサイズは、20 m × 0.18 mm × 0.18 µm です。このカラムサイズを選択したのは、標準の 30 m × 0.25 mm × 0.25 µm カラムと同一の分解能を発揮しながら、分析スピードが通常 30% から40% 改善されるため、大量の半揮発性化合物を迅速に分析できるからです。

この実験では Agilent 6890N ネットワーク GCシステムに、Agilent 5975B シリーズ MSD と Agilent 7683B オートサンプラを取り付けて使用しました。実験では Agilent カラムと Restek カラムを同一条件にして、同じ GC、注入口ライナ、溶媒、クロマトグラフィ条件を使いました。どちらの場合にも、新しいカラムを取り付け、製造元のマニュアルに従って調整しました。その後、カラムの損傷につながる他のサンプルや外部要因にさらすことなく、直ちに使用しました。このような条件で設定するのは、カラム以外のすべての要素を一定に保ちながら有効な比較を行うためです。

図 1 はサンプルの全イオンクロマトグラフ (TICs) と“EPA 8270 ショートミックス”の内部標準を示しています。オンカラム 0.5ng という低レベルで、化合物特有のテーリングを容易に識別することができました。図 1A における TIC は Agilent J&W HP-5ms ウルトライナートカラムで生成され、図 1B の TIC は Restek の比較対象カラムで生成されました。両方のクロマトグラム中の酸性サンプルをハイライト表示しました。 Agilent カラムのピーク形状のほうが優れていることが分かります。

2,4- ジニトロフェノールの内部標準アセナフチレン-d10 に対する相対レスポンス比 (RRRs) を、Agilent J&W HP-5ms ウルトライナートカラム 2 本と比較対象の Restek カラム 2 本で測定しました。表 1 に示すとおり、Restek Rxi-5ms カラムの RRRs は、実験を実施した濃度範囲の全体に渡って、特に検量線の下端において低くなっています。

  平均相対レスポンス比 (RRRs)
  Agilent J&W HP-5ms ウルトライナート Restek Rxi-5ms
2,4-DNP (µg/mL) カラム 1 カラム 2 カラム 1 カラム 2
1 0.136 0.158 0.053 0.074
2 0.138 0.151 0.072 0.083
5 0.165 0.171 0.110 0.116
10 0.199 0.201 0.155 0.156
20 0.238 0.238 0.223 0.198
40 0.275 0.270 0.248 0.247
平均 0.192 0.198 0.144 0.146
 

表 1. Agilent カラムは2,4- ジニトロフェノール (2,4-DNP) において優れた RRRs を示しました。ここに示した値は各カラムによる 4 回の測定を平均した RRRs です。

EPA メソッド 8270 では、2,4- ジニトロフェノールの RRRs は 0.05 まで許容されます。1 µg/mL における Restek カラム 2 本の平均 RRRs は、それぞれ 0.053 と 0.074 であるのに対して、Agilent カラムは 0.136 と 0.158 でした。RRRsの値が 0.05 に近づくと、2,4- ジニトロフェノールの報告検出下限 (Reportable Detection Limit) に影響を及ぼし、コストのかかる再分析が必要になる場合があります。

良好なピーク形状と定量

活性化合物を分析する場合に正確な結果を得るには、カラムが一貫して不活性であることが重要です。活性プローブを用いた出荷前検査は、それぞれのカラムが優れた性能を発揮することを検証するための最良の方法です。工場で検証したカラムを使うことで、活性検体に対する優れたピーク形状と信頼性の高い定量を実現できます。今回の比較によって Agilent J&W HP-5ms ウルトライナートキャピラリ GC カラムが、特に酸性の活性化合物に対して、比較対象の Restek カラムより優れたピーク形状を提供できることが明らかになりました。詳細な情報と結果については、本研究に関するアプリケーションノート (5990-4041EN) を参照してください。

参考文献

  1. US EPA Method 8270D, “Semivolatile Organic Compounds by Gas Chromatography/Mass Spectrometry (GC/MS),” Revision 4, February 2007.
  2. Mitch Hastings, Allen K. Vickers, and Cameron George, “Inertness Comparison of Sample of 5% Phenyldimethylpolysiloxane Columns,” Poster Presentation, 54th Annual Pittsburg Conference, Orlando, FL, March 2003.
  3. Jim Luong, Ronda Gras, and Walter Jennings, “An Advanced Solventless Column Test for Capillary GC Columns,” J. Sep. Sci., 30, 2480-2492, 2007.
  4. “Agilent J&W Ultra Inert GC Columns: A New Tool to Battle Challenging Active Analytes,” Technical Overview, 5989-8665EN, 2008
    『Agilent J&W Ultra Inert GCカラム:活性のある分析対象成分に取り組むための新しいツール』、技術概要、5989-8665JAJP