Access Agilent 2010年5月号

法医学/毒物学精密質量ライブラリによる強固な LC/MS/MS スクリーニングと同定の実現

Jerry Zweigenbaum、Bernhard Wüst、Friedrich Mandel
アジレント シニアアプリケーションケミスト、質量分析

生体サンプルで乱用薬物や毒素を分析するラボでは、アジレントが提供する精密質量データベースを使用して、数千の化合物をスクリーニングできます。精密質量は化合物の存在を正確に示し、保持時間を増やすと特異性が増しますが、偽陽性が常に懸念されます。アジレントは、これらの法医学/毒物学スクリーニングの実行時における確実性のニーズに対応する MS/MS ライブラリで、この精密質量データベースをまもなく補強します。

スクリーニング分析では、Agilent 6500 シリーズ Accurate-Mass Q-TOF LC/MS システムの MS/MS スペクトルは、疑陽性を削減または排除でき、毒素や薬物の同定の信頼性を大幅に向上させます。ただし、これらのスペクトルを実際に使用するには、適切に定義された再現性の高い条件下で収集された高品質スペクトルの大規模な検索可能ライブラリが必要です。このニーズを満たすために、アジレントでは、毒物学と法医学の科学者にとって重要な 1500 種を超える化合物のスペクトルを最初から含んだ精密質量 MS/MS ライブラリを開発中で、今後も引き続き拡張していきます。

図 1. PCDL ソフトウェアで表示した MDMA のデータベースエントリは、構造と正確な質量を示し、詳細情報へのリンクを提供します(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2.PCDL ソフトウェアで表示した MDMA のライブラリエントリは、化合物同定の確認を提供する MS/MS スペクトルを示します(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 3. 抽出イオンクロマトグラムは、異性体 MDMA とメトキシフェドリンを示します。データベース検索の結果には、これらの化合物を区別する保持時間が含まれます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 4. MDMA が疑われる MS/MS スペクトルは、ライブラリスペクトルと良好に一致し、この化合物の存在を確認します(画像を拡大するにはここをクリックします)。

ソフトウェアによるデータベースとライブラリへの簡単なアクセス

Agilent MassHunter Personal Compound Database and Library (PCDL) ソフトウェアでは、精密質量データベースと MS/MS ライブラリを作成、編集、および検索できます。このソフトウェアは、Agilent MassHunter Personal Forensics and Toxicology Database Kit (G6855AA) とともに使用します。このデータベースキットは、6600 種を超える毒素と薬物のエントリを含み、データの詳細な処理手順を提供します。データベースには、化合物名、分子式、構造、正確なモノアイソトピック質量、および他のデータベースへのリンクが含まれますが、スペクトルは含まれていません。図 1 に、PCDL ソフトウェアを使用した MDMA (エクスタシーとも呼ばれる 3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン) のデータベースコンテンツを示します。下部付近の CAS 番号と ChemSpider 番号は、各化合物に関する追加情報を得られるようにインターネット上の PubChem および ChemSpider にリンクしています。

アジレントは、スペクトルライブラリでこのデータベースを拡張します。各エントリには、10、20、および 40eV の 3 つのコリジョンエネルギーに対する Agilent Q-TOF 衝突誘起解離 (CID) スペクトルが含まれます。図 2 に、MDMA のライブラリエントリの内容を示します。スペクトルの質量は小数点以下 2 桁のみ示しますが、ライブラリエントリには、小数点以下 5 桁まで計算された、MS/MS スペクトルに見られるフラグメントの正確な質量が含まれています。計算された質量によって、より厳しい質量許容範囲で検索を実行できるため、最善の結果が得られます。

PCDL ソフトウェアによって、データベースとライブラリの表示および検索が容易になります。ただし、Agilent MassHunter Qualitative Analysis ソフトウェア内でデータベースとライブラリを検索することが最も多くなります。

スペクトルライブラリ検索により信頼性が高まる
広範なスクリーニング

アジレントの 6500 シリーズ Accurate-Mass Q-TOF LC/MS システムは、通常、2 ppm より優れた精密質量と、生体マトリクスの優れた選択性 (Agilent 6540 を使用して、m/z 300 で最大 30,000 の分解能) を提供する質量分解能を提供します。典型的な自動化ワークフローを実行する場合は、広範な化合物に対応します。

  • シングル MS モードまたはデータ依存 MS/MS モードで Agilent Q-TOF を使用した、尿や血液などの抽出物の分析
  • MassHunter 定性分析の Molecular Feature Extractor を使用した、サンプル中のすべての化合物の特定
  • 各分子についてユーザーが指定した付加イオンを考慮した、化合物リストの精密質量のデータベース検索

図 3 に、大衆化している危険な密売薬である MDMA とその異性体であるメトキシフェドリンのクロマトグラフィ分離を示します。この図では、データベーススコア (同位体アバンダンスと保持時間を含む) と、未処理と抽出済み両方の MS のみのスペクトルも示されています。

MassHunter Qualitative Analysis ソフトウェアは、データベースにて MS レベルの一致を検出した場合に、スペクトルライブラリ内の同じデータファイルから MS/MS スペクトルを検索できます。図 4 に、MDMA の陽性ヒットに対して取得された MS/MS スペクトルを、そのライブラリ検索の比較と共に示します。MS/MS スペクトルのフラグメントに対して 5 ppm より優れた精密質量の一致は、このヒットが真陽性であることについて高い信頼性を示します。

包括的な分析と適切な結果

LC/Q-TOF 分析でのこの自動化スクリーニングアプローチを、精密質量データベースと MS/MS ライブラリ両方の検索と組み合わせて使用すると、次のことが実現します。

  • 複雑な生体マトリクス中の対象および非対象化合物のデータマイニング機能
  • 幅広い毒素と薬物に対応
  • スペクトルライブラリ検索によって疑陽性が削減されることによる、同定における高い信頼性

法医学/毒物学スクリーニングを実行する場合は、技術資料 5990-4252EN を読んで、Agilent MassHunter Personal Forensics and Toxicology Database Kit について理解してください。2010 年後半に発表される MassHunter Personal Forensics and Toxicology Database 用 MS/MS ライブラリにご期待ください。