Access Agilent 2016年3月号

進化するマルチハートカット 2D-LC:
Agilent 1290 Infinity II が高分離・高精細 (ハイレゾ) サンプリングと容易な定量を実現

Ulrich Eberhardinger および Jens Trafkowski、
アジレント・テクノロジー 液体クロマトグラフィー部門プロダクトマネージャ

複雑なマトリクスを含むサンプルの分析に有効な分離ツールとして、マルチハートカット 2D-LC が利用されるようになっています。この分析手法では、分離能とピークキャパシティを高めるために、異なる 2 種類の分離メカニズムが用いられます。その一方で、さらなる可能性を求め、広いピークの分析や、最適な分離能の実現を 2D-LC に望む科学者も少なくありません。こういった課題を解決するのがハイレゾ・サンプリングです。

2 つの 2D-LC 手法の利点を活かすハイレゾ・サンプリング

これまで、2D-LC でサンプルを分析する際には、相互を補完する 2 つのモード、すなわちハートカットモードとコンプリヘンシブ 2D モードのいずれかを選ばなければなりませんでした。

ハートカット 2D-LC では、一次元目での分離からピークを切り出し、その短い分画に対して二次元目で詳細な分析を行うことができます。二次元目では、最大限の分離能を得るために長いグラジエントが用いられます。マルチハートカット 2D-LC は、ハートカット 2D-LC に、複数のピーク分画を一時的に貯める機能が追加されたものです。この分析手法では、二次元目で、一次元目の分離から切り出した複数の分画に対して個別に分析が実行されます。単純なハートカット 2D-LC では不可能な、より多くの分析対象物が含まれるサンプルの分析にも対応できます。

コンプリヘンシブ 2D-LC では、一次元目から溶出した分画のすべてが順次二次元目へと送られます。この手法は、一次元目の分離において分析対象化合物が多い非常に複雑なサンプルや未知サンプルの分析で威力を発揮します。二次元目では、一次元目で次の分画がループに貯められている間に、前に送られた分画の分析を完了しなければなりません。この時間は、一般にカラムの再平衡化時間を含めて 20~40 秒です。これにより、必然的に、二次元目では高速グラジエントで分析を行わなければならず、一次元目では、二次元目での分析時間を確保するために分画の採取時間が比較的長くなります。以上の理由で、両次元の分離能が制限されることになります。

  • 一次元目ですでに分離されている化合物がサンプルループ内に貯められている間に再混合され、二次元目へと送られるため、アンダーサンプリング効果が生じることがあります [1]
  • これにより二次元目での高速グラジエントで、最適な 2D 分離能が得られない場合があります。

図 1. ハイレゾ・サンプリングにより、大きい主要ピークの前後にある低濃度の不純物 2 種を良好に分離できました。

図 1. ハイレゾ・サンプリングにより、大きい主要ピークの前後にある低濃度の不純物 2 種を良好に分離できました。

両次元で優れた分離能を実現

ハートカット 2D-LC とコンプリヘンシブ 2D-LC の利点をどちらも活かすのがハイレゾ・サンプリングです。一次元目で連続するカットを最大 10 個定義でき、各分画はマルチハートカット手法と同じように貯蔵されます。分画採取の設定は、Agilent 2D-LC ソフトウェアで簡単かつ柔軟に行えます。

高分解能サンプリングにより、より多くの分析対象化合物を分析したり、一次元目で分離されなかった広いピークを分析できるようになります (図 1)。リテンションタイムにして 1 秒未満 (一次元目の流量により異なる) の約 3 µL 程度の小さい分画でも採取可能です。コンプリヘンシブ 2D-LC とは異なり、一次元目で得られた分離が維持されることに加え、二次元目の分析に十分な時間を確保できます。

大容量サンプルループよりも高性能

ハイレゾ・サンプリングを使用しない場合、複数の小さいサンプルループではなく、大容量のサンプルループでピークをおおまかにカットすることになります。大容量のサンプルループには、以下のような欠点があります。

  1. 大容量のサンプルループでは、アンダーサンプリング効果により、一次元目での分離が無駄になる [1]
  2. 大容量のサンプルが二次元目へ送られるため、二次元目のカラムがオーバーロードする可能性がある
  3. 溶出強度の高い溶媒が大量に送られると、二次元目の分離に悪影響をおよぼす可能性がある

このように、ハイレゾ・サンプリングは、より大容量のサンプリングループよりもはるかに効果的です。

図 2. 複数の分画の定量データの解析では、ピークがまとめられ、面積が合計されます。

図 2. 複数の分画の定量データの解析では、ピークがまとめられ、面積が合計されます。

図 3. ハイレゾ・サンプリング 2D-LC を用いて 2 つの波長で得られた、Agilent 2D-LC チェックアウトサンプルに含まれる 2 種類の化合物の検量線は、優れた直線性を示しています。

図 3. ハイレゾ・サンプリング 2D-LC を用いて 2 つの波長で得られた、Agilent 2D-LC チェックアウトサンプルに含まれる
2 種類の化合物の検量線は、優れた直線性を示しています。

合計ピーク面積による信頼性の高い定量の実現

ハイレゾ・サンプリングでは、ピーク全体のサンプル量が二次元目へと送られるため、精度と再現性の高い 2D-LC 定量も可能です。Agilent 2D-LC ソフトウェアは、二次元目において、複数に分割された連続した分画を自動的にまとめ、近いリテンションタイムを持つすべての化合物のピーク面積を合計します (図 2)。合計面積を使用することで、非常に信頼性の高い定量結果が得られます [2]。表 1 に例を示します。

化合物 1 2 3 4 5
RSD% 2.8 % 1.9 % 1.6 % 1.6 % 0.5 %

表 1. アジレントのチェックアウトサンプルに含まれる化合物の 20 回の連続分析から、優れた面積再現性が実証されました。

図 3 に示すように、2D-LC 測定により得られた検量線は非常に良好な直線性を示しています。分離ピークの相関係数 (R2) は、ほとんどの化合物で 0.999 を上回っています。

マルチハートカット機能を備えた新しい Agilent 1290 Infinity II 2D-LC は、高い操作性のハードウェアと、容易なメソッド設定、定性データの迅速な評価、スムーズな定量データの解析など、分析および解析作業をあらゆる方向からサポートするソフトウェアを備えた包括的なソリューションです。このソリューションがあれば、2D-LC の性能をさらに引き出すことができます。また、操作の簡便性から、2D-LC があらゆる科学者にとって身近なものになります。

アジレントでは、詳細なシステムチェックアウトと 2D-LC 専用のトレーニングを通じて LC 分離を最大限に活用いただくことで、お客様を成功へと導きます。

詳細については、マルチハートカット機能を備えた新しい Agilent 1290 Infinity II 2D-LC について紹介するこちらのビデオをご覧ください