Access Agilent 2016年11月号

Agilent LC/MS/MS による
植物性医療用サプリメント中の
汚染混和物の効果的な同定および定量

Andreas Tei, アジレントグローバル医薬品セグメントマネージャ
Thomas Glauner, アジレントシニアアプリケーションサイエンティスト

大規模農場経営活動において、農薬や肥料等はこれまでにも増して、多くの植物性医療用サプリメントの原料となる農作物の栽培で使用されています。数百種類の農薬類のルーチンスクリーニングおよび定量は、最終製品の安全性を確保する重要な役割を担います。また、有害な雑草や真菌の感染といった汚染によるマイコトキシンやピロリジジンアルカロイドなどの他の有毒な混和物に対応する追加の検査の重要性も高まっています。

植物性医療用サプリメント向け農作物が米国薬局方 USP <561>、<563>、<565> や欧州医薬品庁ガイドラインで定められた最新の規格に適合していることの確認では、液体クロマトグラフィーガスクロマトグラフィー、質量分析、 ICP-OES/MS などの最新機器による各種分析が要求されます。有害な残留農薬類、マイコトキシン類、重金属による汚染の可能性、化学合成された活性化合物が違法添加された粗悪品、そして植物の天然産物であるフィトケミカル化合物などの医薬品有効成分や色素に対し、危害リスクを最小限にし、安全性と品質を確保するためには、高度なワークフローおよび手法が必要です。

図 1. Agilent 1290 Infinity II UHPLC と イオンファネル搭載 6495 トリプル四重極質量分析計 (LC-MS/MS)。

図 1. Agilent 1290 Infinity II UHPLC と
イオンファネル搭載 6495 トリプル四重極質量分析計
(LC-MS/MS)。

図 2. サンプル前処理ワークフロー。

図 2. サンプル前処理ワークフロー。

図 3. ターゲット MRM モードのイオンクロマトグラム。

図 3. ターゲット MRM モードのイオンクロマトグラム。

図 4. 定量イオンとクオリファイアイオンの T/Q 比は、対象化合物の有無の存在確認において、許容範囲内にある必要があります。次の農薬がサンプルから検出されました。A) カルベンダジム (キク) B) MCPA (イカリソウ) C) DNOC (コブシ) D) プロフェノホス (桂枝)

図 4. 定量イオンとクオリファイアイオンの T/Q 比は、対象化合物の有無の存在確認において、許容範囲内にある必要があります。
次の農薬がサンプルから検出されました。A) カルベンダジム (キク) B) MCPA (イカリソウ) C) DNOC (コブシ) D) プロフェノホス (桂枝)

植物性化学物質のフィトケミカル化合物に対するフィンガープリント法に、Agilent Mass Profiler Professional ソフトウェアによる主成分分析などの多変量解析技術が利用できます。中国、韓国、日本などのアジア各国やインドの民族的な伝統薬でよく使用されている植物性化学物質から製造される漢方薬原料の産地判別などにきわめて有用です。

漢方薬 (TCM) で一般的に使用されている 10 種類の薬草をドイツの薬局で購入し、これらの手法を適用しました。農薬類、マイコトキシン類、ピロリジジンアルカロイドを 1 回の分析メソッドでスクリーニングし定量するための新しいワークフローを作成しました。薬草サンプルの分析は、図 1 に示すように Agilent 1290 Infinity II UHPLC と高感度 Agilent 6400 シリーズイオンファネル搭載トリプル四重極 (MS/MS) 質量分析計を使用しました。

優れた夾雑物除去のサンプル前処理法が正確な化合物分析を容易に実現

ワークフローデザインの重要な点は、試料に最適化したモディファイド QuEChERS 抽出プロセスと Agilent Bond Elut EMR キットを使用したクリーンアップステップです。植物原料それぞれ 2 g を 含む各サンプルを 8 mL の超純水で浸潤させ、Agilent Bond Elut QuEChERS EN キットを用い、QuEChERS プロトコルに従って抽出しました。QuEChERS 抽出の後、Agilent Bond Elut EMR キットを使用して脂質や同様のマトリックス成分を除去しました。図 2 にワークフローを示します。ろ過後の試料は、Agilent 2.1 x 100 mm、2.7 µ Poroshell 120 EC-C18 カラムをセットアップした Agilent 1290 Infinity UHPLC システムで分離し、イオンファネル搭載の高感度 Agilent 6400 シリーズトリプル四重極質量分析計で検出し、測定を行います。

LC/MS システムは高速極性切り替えのダイナミック MRM モードを使用します。図 3 に、MRM モードで測定したイオンクロマトグラムを示します。 各化合物について、2 つの MRM トランジションで測定し、クロマトグラフィーの共溶出と定量イオン (T) とクオリファイアイオン (Q) のT/Q比に基づいて化合物を同定し確認しました。図 4 はSANTE ガイドラインで適合要求の汚染混和物の検出例を示します。

Agilent QuEChERS と EMR クリーンナップの組み合わせが、SANTE ガイドラインに適合

全 303 種類の化合物 (農薬類、マイコトキシン類、ピロリジジンアルカロイド) を含む包括的な標準混合液を、植物原料に 10 µg/kg と 50 µg/kg 相当濃度になるようにスパイクし、添加回収率の実験を行いました。無添加の抽出後の試料溶液に同じ濃度でスパイクしたサンプルと比較しました。一般的な QuEChERS 抽出と EMR クリーンアップだけで、スパイクした化合物の 82 % 以上が 70~120 % 以内の回収率を示し、SANTE ガイドラインの要件の範囲内になりました。

Agilent LC/MS/MS が効果的な汚染混和物検出を実現

10 種類だけの薬草の調査ですが、EU の最大残留基準値を超える濃度で農薬が検出されており、医療用サプリメント向け原料となる農作物の安全性にリスクがあることが示されました。植物性医療用サプリメント向けの農作物の安全性を確認するには、含有される可能性のある混和物に対するより包括的な把握が求められるため、GC/MSICP-MS、の分析も必要です。この記事で紹介した実験結果は、 5th Annual Meeting of GP-TCM Research Association-cum-summit on Compendium of Materia Medica and Innovative Drug Discovery in Chinese Medicine.で発表した ポスター に記載されています。詳細については、アジレントにお問い合わせください。