Access Agilent 2016年9月号

高分解能 QTOF LC-MS による、
医薬品からの抽出物および浸出物 (E&L) の分析

Andreas Tei, Agilent Global Pharma Segment Manager

医薬品は、一次および二次包装材からの化学物質によって汚染される場合があります。抽出物および浸出物 E&L の不純物は人体に有害な可能性があるため、米国食品医薬品局 (FDA) は、人用の医薬品および生物製剤のパッケージの容器施栓系 に関するガイダンスを発行しました。アジレントは、信頼性の高い E&L 分析のためのさまざまなハードウェアおよびソフトウェアツールをご提供しています。

複数の手法による幅広い化合物の分析

医薬品の容器密閉物質から発生する混入異物は、物理化学的性質が多種多様であるため、そのすべてを検出することは困難です。この 1 年間で、GC/MS による揮発性および半揮発性 E&L の分析に関するアジレントのアプリケーションノートがいくつか発行されています。

この記事では、点眼液医薬品の非揮発性 E&L の高分解能 LC/Q-TOF 分析について説明します。また、Agilent Mass Profiler ソフトウェアの利点についても説明します。このソフトウェアは、高マトリックスサンプルでもターゲット化合物をしっかり検出できる、最新のデータマイニングツールです。

図 1. LC/MS の分析ワークフローでは、Agilent MassHunter Data Acquisition、Agilent Mass Profiler、および Agilent MassHunter Molecular Structure Correlator ソフトウェアを使用します。

図 1. LC/MS の分析ワークフローでは、
Agilent MassHunter Data Acquisition、Agilent Mass Profiler、および
Agilent MassHunter Molecular Structure Correlator ソフトウェアを使用します。

図 2. 溶出可能化合物と溶媒ブランクの対数アバンダンスを比較した、Agilent Mass Profiler プロット

図 2. 溶出可能化合物と溶媒ブランクの対数アバンダンスを比較した、Agilent Mass Profiler プロット

また、E&L の Agilent MassHunter パーソナル化合物データベースライブラリ (PCDL) を用いた、高分解能質量スペクトルによる化合物の推定方法についても説明します。高感度機器と高度なエレクトロスプレーイオン化技術によって、分析困難な高マトリックスサンプルに含まれる微量の E&L を検出することができます。化合物によっては塩基性ヘテロ原子が含まれず、エレクトロスプレーイオン化の効率が中程度の場合もあります。アジレントはこの技術的な制限に対応するため、Agilent 1290 Infinity LC システムAgilent 6540 Accurate-Mass Q-TOF LC/MS を組み合わせて、感度を最適化しています。

データマイニングソフトウェアによって、
溶媒ブランクに含まれる化合物の検出

通常、不純物のスクリーニングでは、「ブランク」溶媒の容器にもバックグラウンドレベルの E&L が含まれます。ブランク溶媒で検出された化合物を単にバックグラウンドの差し引きで除去すると、サンプルに含まれている E&L の情報も除去されてしまいます。このため、サンプルとブランクでしっかりと比較したピーク強度の差を検出し、サンプルの E&L の情報を得ることが重要です。Agilent Mass Profiler ソフトウェアは、サンプル同士、化合物同士の類似性や差異の解析に役立つ統計ソフトウェアで、この情報の取り扱いに威力を発揮します。図 2 の比較では、化合物のピーク強度の差が 1 倍、2 倍、4 倍の部分が線で表されており、溶媒ブランクよりも多く存在する E&L の化合物が分かりやすく表示されています。

システム適合性テストによる性能の証明

最近の LC/MS 分析では、9 種類の一般的な可塑剤を組み合わせて基本的な LC のメソッドを開発し、1 ppm の濃度でシステム性能をテストしたものを用いています。メソッド開発と結果の詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-6244EN を参照してください。

点眼液を医薬品として使用してテストを行いました。メタノール/水を 1:1 で混合した点眼薬のボトルからサンプルを抽出し、そのボトルを溶媒で 72 時間、55 °C でインキュベーションしました。抽出物はLC/Q-TOF システムに直接注入して、ポジティブイオン化モードとネガティブイオン化モードで測定しました。

浸出物のサンプル測定として、はじめに 1 つ目のサンプルをLC/Q-TOF システムに直接注入して測定しました。もう一つのサンプルは 24 時間、60 °C で薬品容器に保管しました。この処理は、混入異物の溶出を促進するためのものです。

また、ブランク抽出溶媒サンプルを注入して、溶媒に含まれる E&L の濃度を測定しました。

サンプルと溶媒からの混入異物を区別する優れたツール

データ取り込みの後、Agilent MassHunter Profinder ソフトウェアを用いて、データ中のコンポーネントを抽出しました。ボトル抽出物のポジティブおよびネガティブのトータルイオンクロマトグラム (TIC) の組み合わせから、200 種類のコンポーネントを抽出しました。Agilent Mass Profiler ソフトウェアを使用して、溶媒ブランクとサンプル抽出物に含まれるコンポーネントを比較しました。倍率変化 (Fold Change) アルゴリズムによるフィルターで、ブランク溶媒よりもサンプルに多く含まれる 45 化合物に絞り込めました。両者の浸出物のサンプルに同じフィルターを適用して、溶媒からバックグラウンド混入異物の情報を抽出しました。

図 3. フタル酸ジノニルが推定されたデータベースの結果。異性体のフタル酸ジノニルとフタル酸 1-デシル 2-オクチルもターゲットになりうることを示しています。

図 3. フタル酸ジノニルが推定されたデータベースの結果。異性体のフタル酸ジノニルとフタル酸 1-デシル 2-オクチルもターゲットになりうることを示しています。

Agilent Mass Profiler ソフトウェアを使用して、測定された精密質量に基づいて化合物を推定しました。MassHunter ソフトウェアツールを使用すれば、アジレントが新しく開発した E&L PCDL によって、E&L を簡単に推定できます。この PCDL には 1000 種類の一般的な E&L のスペクトルデータが含まれています。また、独自のスペクトルを収載しており、ユーザーの方で簡単に新しい化合物をライブラリにエントリーできます。図 3 は、空の点眼液ボトルの抽出物に含まれていて検出・推定されたフタル酸ジノニルの同位体分布、およびで同定された構造を示すデータベースの例です。E&L PCDLを用いることによって、11 種類の抽出物が同定されました。

スペクトルの一致による E&L の推定

Agilent MassHunter Molecular Structure Correlator を用いて解析した結果、既知および未知の化合物で、MS/MS が理論上最適な構造と一致しました。この方法でライブラリに登録された化合物を確認し、未知の化合物の構造を解析することができました。各 E&L サンプルで、約 50 種類の化合物が検出されました。詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-6828EN を参照してください。

薬剤に接触する容器部品や包装材からの潜在的な E&L の信頼性の高い測定には、薬剤にアジレントの E&L 分析ソリューションが最適です。詳細については、アジレントの担当者お問い合わせください。