Access Agilent 2016年6月号

シンプル設計の新製品 Agilent 8355 SCD による硫黄の正確な分析

Jason Ashe、アジレント GC 製品マネージャ

使用原料の品質管理が進む一方、汚染規制は世界的にさらに厳格化されています。こういった状況への直接的な対策として、分析の上流および下流工程において低濃度硫黄試験が広く導入されつつあります。

業界のエキスパートが認めているとおり、化学発光硫黄検出器 (SCD) は、炭化水素マトリックスに含まれる低濃度の硫黄を正確に測定するには最適ですが、従来の SCD は構造が複雑で、操作も煩雑でした。アジレントは、25 年に渡り業界標準として用いられてきた SCD の設計を一から見直し、SCD のユーザー環境を大きく変えました。その結果生み出されたのが、シンプルなプラットフォームできわめて信頼性の高い結果を実現する製品、Agilent 8355 SCD です。この記事では、新しい Agilent 8355 SCD を、性能および使いやすさという重要な観点から考察します。

GC と SCD により硫黄化合物を迅速に同定・定量

ガスクロマトグラフィーと SCD を組み合わせることで、空気、メタン、プロパン、消化ガス、製油所の燃料ガスなど、天然ガスおよび気体燃料に含まれる硫黄不純物や硫黄由来の臭気物質をすばやく同定および定量することができます。

どんなプロセスにも言えることですが、プロセスを適切に制御しないと、スループットだけでなく、収益性にまで大きな影響がおよぶ可能性があります。化学発光法は、多様な硫黄化合物をきわめて高い信頼性で検出できる分析法として認められています。

世界の試験要件を満たす Agilent 8355 SCD の性能

SCD は、デュアルプラズマバーナー、リアクションセル、および検出器の 3 つの主要コンポーネントで構成されています。優れた堅牢性、使いやすさ、および分析性能を実現するためには、それぞれのコンポーネントが故障なく動作することが必要です。

また、気体燃料の試験に SCD を用いる場合、プロセスで最大限の成果を上げ、かつコンプライアンスを確保するためには、アナライザが、必要とされる高品質のデータを提供できなければなりません。

硫黄の測定方法は多数あり、それぞれに利点があります。Agilent 8355 SCD は、特に以下の点で試験要件を満たすよう設計されています。

  • 直線性のあるレスポンス (表 1)
分析対象成分 9.9 ppm 5.5 ppm 1.5 ppm 0.793 ppm 0.149 ppm R2
硫化水素 4.4 % 1.0 % 0.7 % 5.8 % 6.7 % 0.999
硫化カルボニル 2.3 % 0.4 % 2.4 % 6.0 % 6.5 % 0.9996
メチルメルカプタン 4.6 % 0.9 % 1.7 % 6.4 % 10 % 0.9979
エチルメルカプタン 5.3 % 1.0 % 1.6 % 5.4 % ND 0.9982
硫化ジメチル 4.0 % 0.6 % 1.1 % 4.0 % 9.0 % 0.9997
二硫化炭素 4.2 % 0.8 % 0.6 % 4.2 % 4.3 % 0.9999
2-プロパンチオール 5.8 % 4.3 % 4.9 % 9.4 % ND 0.9753
tert-ブチルメルカプタン 5.7 % 1.3 % 3.3 % 6.6 % ND 0.9976
1-プロパンチオール 9.0 % 5.5 % 4.7 % ND ND 0.9934
チオフェン 4.6 % 1.2 % 1.8 % 4.8 % 3.5 % 0.9999
n-ブチルメルカプタン 4.8 % 0.9 % 1.4 % 3.5 % 4.8 % 0.9998
硫化ジエチル 6.1 % 5.5 % ND ND ND 0.9833
硫化メチルエチル 5.4 % 1.4 % 2.3 % 8.9 % ND 0.9986
2-メチル-1-プロパンチオール 3.9 % 2.6 % 7.6 % 7.8 % ND 0.9979
1-メチル-1-プロパンチオール 5.3 % 2.4 % 3.5 % 9.4 % ND 0.9990

表 1. Agilent 8355 SCD による分析対象成分定量時の直線性のあるレスポンス

  • 検出下限 (LOD) (表 2)
ピーク 分析対象成分 LOD (pg/sec)
1 硫化水素 0.076
2 硫化カルボニル 0.18
3 メチルメルカプタン 0.45
4 エチルメルカプタン 1.0
5 硫化ジメチル 0.19
6 二硫化炭素 0.090
7 2-プロパンチオール 1.4
8 tert-ブチルメルカプタン 1.6
9 1-プロパンチオール 6.2
10 チオフェン 0.21
11 n-ブチルメルカプタン 0.22
12 硫化ジエチル ND
13 硫化メチルエチル 0.39
14 2-メチル-1-プロパンチオール 3.2
15 1-メチル-1-プロパンチオール 2.4

表 2. 硫黄中で一般に検出される多様な分析対象成分の LOD

システムの稼働時間が重視される環境にも最適

システムの稼働時間が重視される状況で問題が発生した場合、できる限り迅速にその問題を切り分けて解決する必要があります。

最初は SCD の問題と思われても、実際にはクロマトグラフィーテクニックの不備や他のシステムの障害 (カラム注入口フィッティングのリークなど) に原因があることも珍しくありません。そのため、まずは注入口、カラム、オートサンプラに問題がないことを確かめてから、検出器のトラブルシューティングに取り掛かります。

これまで、問題がバーナーにあることまではわかっても、その真の原因を突き止めるのは困難でした。アジレントは、お客様からのフィードバックをもとにバーナーを大幅に改良し、堅牢性を高め、容易にメンテナンスできるようにしました。具体的な改善点は以下の 2 点です。

  • より堅牢な接続の実現 — 従来使用されていたダブルテーパーフェラルを標準的なカラムナットとフェラルに置き換えました。
  • ハードウェアコンポーネントの改善 — ヒーターアセンブリを水素炎イオン化検出器 (FID) に近い構造に変更しました。これにより、エレクトロニックニューマティクスコントロール (EPC) モジュールで、上部バーナーと下部バーナーへの水素流を個別に制御できるようになりました。また、水素ラインにろう付け接続部を採用することにより、リークの可能性のあるポイント数が削減されています。

図 1. これまで数時間かかっていた内側セラミックチューブの交換がわずか数分で完了

図 1. これまで数時間かかっていた
内側セラミックチューブの交換がわずか数分で完了

部品およびフィッティング数を半分に削減

Agilent 8355 SCD は、性能およびメンテナンス性があらゆる方向から綿密に調査され、それをもとに最適なユーザー環境が実現されるよう再設計されています。これらの改善の結果、部品およびフィッティング数は従来の半分にまで削減されました。これにより、例えば、従来の SCD 設計では最大 1 時間かかっていた内側セラミックチューブの交換をわずか 10 分で完了することができます (図 1)。

一からの見直しにより生まれ変わった Agilent 8355 SCD

硫黄を正確に測定することは、ビジネスおよび最終的な収益を守るうえできわめて重要です。ラボで使用する SCD は、必要なときにいつでも使用できる状態になければなりません。また、問題が生じた場合は、簡単かつ効率的なメンテナンスにより、最小限のダウンタイムで分析可能な状態に機器を復旧できなければなりません。Agilent 8355 SCD は、クロマトグラフィーシステムに統合して、またはスタンドアロンの検出器として利用できます。現場の成果に直結し、コンプライアンスの裏付けとなるデータが確実に得られます。新しい Agilent 8355 SCD は、フィールドテストによってその優れた堅牢性および信頼性が実証され、業界標準として認められています。

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