Access Agilent 2016年5月号

Agilent 1290 Infinity II 2D-LC ソリューションによる治療用タンパク質の詳細な分析

Gurmil Gendeh, Agilent Director of Biopharma Segment Marketing

モノクローナル抗体や遺伝子組み換えタンパク質などのバイオ医薬品は、がんや自己免疫疾患といった、命にかかわるさまざまな疾患の治療に広く用いられています。タンパク製剤は低分子医薬品よりもはるかに複雑で、この複雑さを解明することが分析の課題です。この記事では、2 つ例を挙げ、 Agilent 1290 Infinity II 2D-LC ソリューション(ATSDR) を用いた二次元液体クロマトグラフィー (2D-LC) が困難な分離に必要な分離能を実現する仕組みについて説明しています。

モノクローナル抗体トリプシン消化物の詳細な特性解析

開発中の治療用タンパク質の詳細な特性評価は重要です。1 つ目の例では、モノクローナル抗体トラスツズマブの同一性と純度を評価するためのペプチドマッピングメソッドについて説明します。このモノクローナル抗体 (mAb) はハーセプチンとして販売され、乳癌の治療に用いられている 150 kDa の分子です。トリプシン消化により、 濃度レベルの異なる 100 種類以上のペプチドが産生されます。この複雑な分析の課題に対処するには最高の分離能力が必要です。

2 つの分離モードが直交し、一次元目で得られた分離が二次元目への移送時に損なわれない場合、コンプリヘンシブ 2D-LC (LCxLC) はクロマトグラフィー分離能を大幅に高めます。強カチオン交換 (SCX) と逆相液体クロマトグラフィー (RPLC) の組み合わせはペプチド分析に適した orhogonality を提供します。 Agilent 1290 Infinity II 2D-LC ソリューションはこの分析に適した最高の性能と信頼性を備えています。

図 1.ストレスを受けていないトラスツズマブと酸化ストレスを受けたトラスツズマブのトリプシン消化物のフィンガープリントである LC x LCの等高線プロットが修飾の位置を示しています。

図 1.ストレスを受けていないトラスツズマブと酸化ストレスを受けたトラスツズマブのトリプシン消化物のフィンガープリントである
LC x LCの等高線プロットが修飾の位置を示しています。

非常に複雑なサンプル中の不純物と修飾の分離

この安定性のある分析において、2D-LC を用いてトラスツズマブの不純物と修飾を検出しました。酸化条件下および高 pH 条件下の両方でトラスツズマブサンプルにストレスを加える強制分解を行い、酸化および脱アミド化処理をしました。図 1 は先発薬サンプルと酸化ストレスを受けたサンプルをダイオードアレイ検出器 (DAD) で検出した結果を示しています。ストレスを受けたサンプルには元のサンプルには存在しないスポットが含まれていることは明らかです。1 つのスポットを LC/MS/MS 同定しました。このスポットはペプチド T41 に由来したもので、このフラグメントに存在するメチオニンが酸化したものです。

このメソッドは純度同定試験についての大きな可能性を示しました。分析精度が優れているため、品質管理や製品バッチ間および先発薬とバイオシミラーとの比較研究に有用です。実験の詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-2880EN および 5991-4530EN でご覧いただけます。

図 2.HIC/RP 2D-LC/MS システムによる mAb B の分析。酸化された mAb の質量は未処理の mAb の質量よりも 64 Da 大きく、4 箇所の酸化部位の存在が示唆されました。

図 2.HIC/RP 2D-LC/MS システムによる mAb B の分析。
酸化された mAb の質量は未処理の mAb の質量よりも 64 Da 大きく、4 箇所の酸化部位の存在が示唆されました。

2 つ目の例では、マルチハートカット (MHC) 2D-LC/MS を疎水性相互作用と逆相クロマトグラフィーを結合して用い、治療用タンパク質を分析しました。疎水性相互作用クロマトグラフィー (HIC) は、mAb の分析によく使用される手法です。分子量確認のために MS を用い実験を行いますが、HIC 分離で使用される高塩条件はエレクトロスプレーイオン化 (ESI) に適していません。マルチハートカット Agilent 1290 Infinity II 2D-LC ソリューションにより二次元目の逆相 (RP) クロマトグラフィーで脱塩/分離行い、TOF MS 測定することが可能です。これらの実験については、アジレントのアプリケーションノート 5991-6376EN に記載されているように、 Agilent 6224 Accurate-Mass TOF LC/MS システムとデュアルネブライザ ESI ソースを用いました。

共溶出したピークの精密質量測定

さらに、mAb B は強制酸化を受け 12.5 分のメイン mAb ピークよりも 0.5 分早く溶出するピークを生成しました (図 2A)。マルチハートカット2D-LC/MS により分子量確認を行いました。予想していたとおり、酸化を受けた試料のピークはメインの mAb ピークよりも大きな質量となりました (図 2B および 2C)。この場合、質量は 64 Da 大きくなり、酸化部位が 4 箇所であると考えられます。これまでの知見から、これらの酸化は mAb 内に存在する 4 つのメチオニン残留物に起こったと考えられます。

分離時間に制限はありません

MHC を用いると、一次元目から対象領域をカットしてプーリングできるため、二次元目の分離を実行するための時間に制限がありません。このことにより、十分な時間をサンプルの脱塩に割り当て、比較的低流量 (0.2 mL/min) で MS に導入することができます。MS 分析のための脱塩が不要な場合でも、MHC- 2D-LC により2D グラジエントに時間をかけることができます。

難しい LC 分離の最適化

Agilent 1290 Infinity II 2D-LC ソリューションにより、タンパク質バイオ医薬品などの複雑なサンプルの分析に必要な究極の分離能が得られます。詳細については、2D-LC についてのビデオをご覧ください。また、治療用 mAb リツキシマブの 2D-LC/MS についての Analytical Chemistry の記事を参照してください。2D-LC の詳細については、アジレントの担当者にお問い合わせください