Access Agilent 2016年3月号

環境汚染が疑われる化学物質の
迅速かつ正確なスクリーニング

Lakshmi Krishnan、アジレントグローバルマーケティングマネージャ - 環境
Craig Marvin、アジレント環境分野マーケティングマネージャ

空気、水、および土壌中の新規汚染物質からの暴露は、国際社会に重大なリスクをもたらすおそれがあります。こういったリスクの懸念から、研究者の間では汚染物質の範囲と汚染源を突き止めようとする動きが生じています。疑わしい汚染物質をノンターゲットでスクリーニングできる革新的な分析手法が求められています。

水やその他のマトリックスに含まれる環境汚染物質をルーチン分析するための標準メソッドは多数存在します。しかしながら、汚染物質は多様化し、規制当局が要求する検出下限はこれまで以上に厳しくなっています。このような状況でラボの競争力維持には、高度な技術を活用することが重要になります。

ターゲット化合物および疑わしい汚染化学物質の迅速かつ正確な同定を目指す分析ラボでは、環境および生物マトリックス中に存在する疑わしい汚染物質をスクリーニングできる、実績あるエンドツーエンドソリューションがなくてはならない存在となってきています。そのソリューションを実現するのが、Agilent GC/Q-TOF システムとや Agilent LC/Q-TOF などの高性能分析機器です。これらの機器の優れた分離能とスペクトル分解能を活用することで、汚染化学物質を確実に同定すると同時に、擬陽性を防ぐことができます。さらに、Agilent MassHunterMassProfiler Professional多変量解析ソフトウェア、豊富な情報が蓄積されている Agilent パーソナル化合物データベースライブラリ(PCDL)をを利用することで、複数のシステムから出されるデータをすばやく、かつ、効率的に評価することができます。

Agilent LC/MS/MS による淡水中の藻類由来毒素の同定

カナダの淡水におけるシアノバクテリア毒素の発生が、環境および公衆衛生上の問題として深刻化しています。カナダの湖で検出されたミクロシスチンは、一般的なシアノバクテリア毒素に分類される強力な毒素であり、真核生物タンパク質ホスファターゼの強力阻害剤として作用します。

Alberta Centre for Toxicology (ACFT) および Vogon Laboratory Services 社により、Agilent 1290 Infinity LCAgilent 6460 トリプル四重極 LC/MS を用いて、標準となっている ACFT メソッドとは異なるリテンションタイムパターンのミクロシスチンの確認メソッドが開発されました。このメソッドによる分析後、Agilent 6540 Q-TOF LC/MS で精密質量を測定し、その結果をもとに未知ピークを脱メチル化ミクロシスチン HtyR として暫定的に同定しました。分離には、Agilent Poroshell 120 SB-C18 LC カラムを使用しました。

図 1. HtyR のイオンおよび未知ミクロシスチンの Q-TOF スペクトル。HtyR 標準物質の分析により、正確な精密質量がわかりました。

図 1. HtyR のイオンおよび未知ミクロシスチンの Q-TOF スペクトル。HtyR 標準物質の分析により、正確な精密質量がわかりました。

精密質量を用いた Q-TOF による未知ミクロシスチン中のイオンの分析から、位置 7 に Dha、位置 2 に Hty が存在することが確認されました。この結果は、未知化合物を dm-HtyR として同定した結果と一致しました。図 1 に示すように、HtyR 中のイオンの精密質量 (上段) は、位置 7 に Hty、位置 R3 に Mdha を持つイオンの質量の計算値と一致していることがわかりました。また、未知ミクロシスチン中のイオンで測定された質量は、位置 7 に Hty、位置 R3 に Dha を持つイオンの質量の計算値とも一致していました。

その他のミクロシスチンについても、Agilent 6540 Q-TOF LC/MS の精密質量から、H+ 付加物の質量にもとづいて暫定的に同定しました。この結果を用いて、Agilent MassHunter PCDL Manager ソフトウェアでパーソナル化合物データベース (PCD) を構築しました。このソフトウェアでは、化合物、精密質量、リテンションタイムなどの情報から、カスタマイズ可能な PCD を作成、編集することができます。精密質量スキャンデータの利点は、このようなデータベースを利用して、採取したデータで新しい化合物をレトロスペクティブ検索できることです。

次に、WHO が提示するミクロシスチンのリストを用いて、52 種類のミクロシスチンの化学式を PCD に入力し、H+ 付加物の精密質量を求めました。その後、Agilent MassHunter ソフトウェアの Find by Formula ツールを利用して、求めた精密質量をサンプルの TIC データファイルから検索しました。これにより、湖 A および湖 B で採取したサンプルで、脱メチル化 HtyR に加え、7 種類の未知化合物を暫定的に同定しました。

これらの結果の詳細については、アジレントのアプリケーションノート (5991-4444EN) をご覧ください。

Agilent GC/MS/MS による浮遊微小粒子中の半揮発性化合物のスクリーニング

半揮発性有機化合物 (SVOC) のスクリーニングは、高度な技術が要求されます。データの解析では、高い選択性と感度、およびノンターゲットワークフローが必要になります。Q-TOF を用いた精密質量アプローチでは、より信頼性の高い同定が可能です。加えて、実質的に無制限数の半揮発性化合物を同時にスクリーニングできるという利点もあります。

復旦大学とアジレント上海の共同研究により、エアロゾル粒子に吸着した SVOC のノンターゲットスクリーニングワークフローが開発されました。このワークフローでは、高分離能の Agilent 7890B GCAgilent 7200A Q-TOF を組み合わせたシステムと Agilent J&W HP-5ms ウルトライナート GC カラム 2 本が使用されています。

図 2. 未知化合物の質量スペクトル (A) と、NIST ライブラリの照合により暫定的に同定した化合物の質量スペクトル (B) の比較

図 2. 未知化合物の質量スペクトル (A) と、NIST ライブラリの照合により暫定的に同定した化合物の質量スペクトル (B) の比較

図 3. MS/MS スペクトルをもとに Formula Generator で生成した分子式 (A) と、MSC ソフトウェアによる分子式 C15H8O2 の半揮発性化合物の構造解析結果 (B)

図 3. MS/MS スペクトルをもとに Formula Generator で生成した分子式 (A) と、MSC ソフトウェアによる分子式 C15H8O2 の半揮発性化合物の構造解析結果 (B)

この分析では、デコンボリュートした質量スペクトルを NIST 質量スペクトル (nominal-mass) ライブラリで検索することにより、該当する化合物を特定しました。また、分子イオンまたはフラグメントイオンの精密質量をもとに、化合物の分子式を確認しました。Agilent 7200A Q-TOF システムには、MS/MS モードでの測定データから未知化合物の構造を推定できるという利点もあります。

クロマトグラムのピークデコンボリューションにより、未知化合物が明らかになりました (図 2)。NIST ライブラリでの検索では、このスペクトルに最も近い化合物がアントラ[1,9-cd]ピラゾール-6(2H)-オンでした。ところが、暫定的に同定したこの化合物は、分子イオンの質量誤差が 48.62 ppm だったことから、質量精度の違いにより候補から容易に除外できました。これが、Q-TOF で得られる精密質量データの大きな利点です。

図 3 は、MS/MS モードと精密質量フラグメントを使用して未知化合物の構造を推定するワークフローを示しています。Agilent MassHunterFormula Generator ツールを使用して、分子イオンおよび主要フラグメントイオンに正確な分子式を割り当てました (推定された分子式の質量誤差と断片化された各フラグメントイオンをランク付け)。その後、スペクトルを MassHunter Molecular Structure Correlator (MSC) にインポートしました。次に、MSC を使用して ChemSpider データベースですべての構造異性体候補を検索しました。この種の確認は完全には確実なものではありませんが、暫定的に同定された O-PAH の補足的な確認として役立てることができます。

この包括的な分析の詳細については、アジレントのアプリケーションノート (5991-5899JAJP) をご覧ください。

アジレントの適用範囲が広い環境汚染物質検出ソリューション

最先端の液体クロマトグラフ質量分析装置、および各種データ解析ソフトウェアなら、アジレントが最適です。アジレントは、環境汚染物質分析で多忙なラボにもご満足いただけるソリューションをご用意しています。これらのソリューションをご利用いただくことで、優れたデータ品質、高いスペクトル分解能、信頼性の高いスピーディで効率的な分析を実現できます。その上、偽陽性の検出を大幅に低減することもできます。疑わしい汚染物質のスクリーニングソリューションの詳細については、アジレントの担当者にお問い合わせください。