Access Agilent 2016年1月号

スピード、コスト、安全性の面で強みを発揮する
新しい多元素原油分析技術を
Chevron とアジレントが共同開発

Wayne Collins、アジレントグローバル産業マネージャ

原油中の元素の濃度は、サプライチェーン全体を通じて、石油業界にとってきわめて重要です。金属の種類と濃度は、貯留層内での原油の移動のモニタリングに使用され、一定量の石油の市場価格を決定する際の係数となります。また、精製中の触媒の効率に影響し、最終製品の品質に必要不可欠です。さらに、金属のプロファイルは、環境に関する事故の発生時に、発生源を特定したり、復旧作業の効果をモニタリングしたりするために、石油の「フィンガープリント」を取得する場合にも役立ちます。

ラボでは、金属の種類と濃度の測定にいくつかの技術を使用してきました。現在、アジレントは Chevron と提携して [1]、もう 1 つの技術としてマイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (MP-AES) を追加しました。この装置が、さまざまな種類のサンプルの多元素分析に、多く使用されているためです。

MP-AES 技法により運用コストの削減と安全性の向上を実現

Agilent 4200 MP-AES では、磁気結合マイクロ波エネルギーを使用して、空気から取得した窒素ガスにより堅牢な安定したプラズマを生成します。これにより、高価なアルゴンガスや、アセチレンなどの可燃性ガスは不要になります。運用コスト低減と安全性の向上は、石油を扱うすべてのラボで最優先事項となっています。空気からプラズマを生成すると、石油会社にとっても大きなメリットがあります。世界のうちで持続可能なガスの供給が限られている辺境地のラボをサポートする必要があるためです。

Chevron とアジレントは、4200 MP-AES を使用して、窒素および硫黄の含有量がさまざまな、API 比重が 7 ~ 38°までの 20 個の原油サンプルを分析しました。サンプル前処理を最小限にした高速で使いやすいメソッドを目標としました。メソッドは、鉱物油、マトリックスモディファイヤ、およびスカンジウムを内標準として含む o-キシレンで ~ 1:10 希釈と簡単に構成されています。元素は V、Ca、Fe、Ni、K、および Na に限られていましたが、他の元素も測定可能です。

より高感度な検量線と低い検出下限

分析の結果から、検量線が向上し、検出下限が低くなったことが分かりました。すべての元素について得られた検量線は、相関係数が 0.99988 ~ 1.0000 という優れた直線性を示しました。メソッドの検出限界 (3σ) は、ブランク溶液を 10 回測定してから 1 ppm の標準溶液を 10 回測定することによって計算しました。両方のメソッドで、すべての元素の MDL は同等であり、1 ppm を下回る数値になりました。

スパイクしたサンプルのテストで良好な回収率を確認

テスト中に、検量線の中間点の濃度 (5 ppm) で、継続検量線確認用サンプルを、7 回分析しました。次に、高濃度でメソッドを検証するため、原油サンプルに 885 ppm の混合標準を添加しました。最後に、燃料油中の微量元素標準物質である NIST 1634c という認定された認証サンプルを、V (認証値、28.19 ppm) および Ni (認証値、17.54 ppm) のみについて 7 回分析しました。3 つのすべてのテストで、回収率は ±10 % の範囲内でした。

原油サンプルのテスト結果の改善

表 1 は、このメソッドを使用して 20 個の原油サンプル中の元素を測定したときに得られた結果を示します。

サンプル Fe SD V SD Ni SD Ca SD Na SD
259.940 nm 311.070 nm 341.476 nm 396.847 nm 588.995 nm
ppm ppm ppm ppm ppm
S1 0.46 0.13 13.86 0.03 9.51 0.05 LDL - LDL -
S2 0.48 0.02 132.42 0.39 33.61 0.06 LDL - LDL -
S3 1.98 0.03 2.14 0.02 2.42 0.03 2.04 0.01 0.52 0.13
S4 8.99 0.14 225.88 0.27 59.55 0.12 0.70 0.01 11.13 0.42
S5 0.55 0.04 2.09 0.02 0.81 0.06 0.06 0.00 LDL 0.08
S6 26.02 0.14 115.09 0.10 87.45 0.28 13.97 0.59 15.62 0.15
S7 23.52 0.11 39.12 0.13 68.56 0.13 1.09 0.09 2.35 0.11
S8 0.01 0.04 15.88 0.08 12.79 0.01 LDL - LDL -
S9 0.25 0.03 24.50 0.05 12.40 0.05 LDL - LDL -
S10 9.65 0.57 0.13 0.03 0.87 0.03 5.05 0.33 5.99 0.39
S11 13.38 0.25 6.02 0.04 5.19 0.05 4.99 0.08 18.57 0.61
S12 0.81 0.08 0.79 0.02 1.23 0.04 0.21 0.01 0.74 0.05
S13 1.27 0.06 2.19 0.01 1.60 0.01 0.25 0.01 0.65 0.09
S14 1.21 0.05 59.63 0.29 20.67 0.03 0.87 0.01 4.54 0.06
S15 2.17 0.05 177.45 0.58 35.86 0.22 5.97 0.02 LDL 0.04
S16 11.89 0.23 2.57 0.02 4.56 0.04 4.01 0.02 44.36 1.56
S17 0.24 0.05 24.83 0.09 12.63 0.03 LDL - LDL -
S18 0.07 0.05 18.80 0.10 12.02 0.03 LDL - LDL -
S19 10.47 0.73 71.05 0.57 28.09 0.19 2.43 0.09 8.39 0.58
S20 130.99 1.05 87.48 0.21 68.08 0.18 58.29 0.27 26.59 0.41
*S20b 130.81 0.86 87.08 0.32 68.15 0.06 59.43 0.62 25.89 0.22

*重複する S20 サンプル
LDL: 検出下限を下回る
表 1. 20 個の原油サンプル中の金属不純物の濃度測定値 (mg/kg、ppm)。[1]

図 1. ICP-MS と ICP-AES の組み合わせおよび MP-AES から得られた原油サンプルの測定値の比較。

図 1. ICP-MS と ICP-AES の組み合わせおよび MP-AES から得られた原油サンプルの測定値の比較。

サンプル分析手法の比較

確立した技術である ICP-MS および ICP-OES との互換性を示すために、同じ 20 個の原油サンプルを ICP-MS または ICP-OES でも分析しました。図 1 では、技法間の良好な相関を示しています。この分析技法比較の詳細については、「Energy & Fuels」の 2015 年 8 月発行分 [1] に記載されています。

成功に導くアジレントと Chevron の連携

Chevron とアジレントは、MP-AES が、原油の元素分析において他のメソッドの代わりに利用できるメソッドであり、前処理の速度、コスト、安全性、および容易さにおいて有利であることを実証しました。この調査に基づいて ASTM 標準の草案が作成されました。これはセクション D02.03 の会合で提案される予定です。アジレントは、業界最先端の消耗品のポートフォリオによってサポートされる精油所の運営向けの分析ソリューションを多数提供しています。アジレントの MP-AES システムと製品について詳しくは、アジレントのウェブサイトをご覧ください。

Reference

  1. Nelson, J.; Gilleland, G,; Poirier, L.; Leong, D.; Hajdu, P.; Lopez-Linares, F. Elemental Analysis of Crude Oils Using Microwave Plasma Atomic Emission Spectroscopy. Energy & Fuels, 10 August, 2015. Reprinted with permission.