Access Agilent 2015年10月号

高マトリックス中の薬物の定量を加速する 革新的な質量分析装置の設計

Craig P. Love, Behrooz Zekavat, and Patty Sun
アジレント質量分析部門

医薬品の創薬プロセスでは、新薬候補物質スクリーニングのために、多数の in vitro および in vivo 分析が行われます。中でも代謝物の in vivo での同定と定量は、多数のマトリックス成分が存在することから、特に困難です。このような分析には、新薬候補物質のハイスループットスクリーニングが可能な高感度かつ堅牢な分析手法が必要です。その最も一般的な分析手法は、トリプル四重極質量分析計をマルチプルリアクションモニタリング (MRM) モードで使用する方法です。ところが、時間の経過に伴ってサンプル中の非揮発性マトリックス成分がイオン源やイオン光学系に蓄積し、システムの分析性能が徐々に低下するおそれがあります。結果として、最適な性能を維持するために、頻繁なメンテナンスが必要になることがあります。

持続的な分析性能

薬物定量という課題について考察するために、Agilent 6470 トリプル四重極 LC/MSAgilent RapidFire 365 ハイスループット MS を組み合わせたシステムで堅牢性を評価しました。Agilent RapidFire 365 は、創薬研究を行う上で最適なシステムです。高容量サンプルの自動分析が可能なため、分析困難な薬物ターゲットのハイスループットスクリーニングにおいて威力を発揮します。また、in vitro での薬物動態学(ADME) 分析など MS ベースの分析では 10 倍の高速スループットを実現します。

一方、Agilent 6470 トリプル四重極 LC/MS ソリューションには、重要となる革新的な技術が採用されています。高マトリックスサンプル中のターゲット化合物を、広いダイナミックレンジにわたって優れた感度、精度、および堅牢性で定量することができます。以下のような革新的技術が搭載されています。

  • 最適化されたイオン光学系とプレフィルタ構造により、イオン透過率を高め、汚染を最小限に抑えます。
  • カーブとテーパの付いたヘキサポールコリジョンセルが、MS/MS のフラグメンテーション効率とイオン透過率を高めます。
  • 高エネルギー変換ダイノードと低ノイズ特性を備えたイオン検出器が、幅広い m/z 範囲にわたって正負両イオンの検出効率を高めます。
10,000 回の注入にわたるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) のピーク面積比

図 1. 10,000 回の注入にわたるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) のピーク面積比(図を拡大)

10,000 回の注入にわたるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) のピーク面積比

図 1. 10,000 回の注入にわたるアルプラゾラム (A) と
クロザピン (B) のピーク面積比

10,000 回の注入の開始時と終了時におけるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) の MRM クロマトグラムの重ね表示

図 2. 10,000 回の注入の開始時と終了時におけるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) の MRM クロマトグラムの重ね表示
(図を拡大)

10,000 回の注入の開始時と終了時におけるアルプラゾラム (A) とクロザピン (B) の MRM クロマトグラムの重ね表示

図 2. 10,000 回の注入の開始時と終了時におけるアルプラゾラム (A) と
クロザピン (B) の MRM クロマトグラムの重ね表示

今回紹介する実験では、Agilent 6470 トリプル四重極 LC/MS と Agilent RapidFire 365 ハイスループット MS を組み合わせたシステムで、アルプラゾラムとクロザピンの混合物とそれぞれの内部標準 (それぞれアルプラゾラム-D5 およびクロザピン-D4) を沈殿処理済みのブタ血漿 5 ng/mL に添加したサンプルを分析しました。ブタ血漿とアセトニトリルを容量比 1:3 で混合し、13,500 rpm で 5 分間遠心分離して上清を回収しました。次に、上清を水で希釈 (1:10) してから、分析対象物および内部標準を添加しました。この血漿サンプルを 96 ウェルプレートに移し、Agilent PlateLoc Thermal Microplate Sealer で密閉してから、RapidFire/MS で分析しました。

Agilent RapidFire 365 ハイスループット MS のパラメータは、以下の RapidFire 洗浄溶媒条件に合わせて最適化しました。洗浄溶媒 1 (緩衝液 A、流量 1.50 mL/min) として、2 mM 酢酸アンモニウムと 0.1 % ギ酸の水溶液を使用しました。 洗浄溶媒 2 (緩衝液 B、流量 1.25 mL/min) として、20 % アセトニトリル水溶液 + 10 mM 酢酸アンモニウム + 0.1 % ギ酸を使用しました。RapidFire Type A (C4) カートリッジからの分析対象物の溶出には、溶出溶媒 (緩衝液 C、75 % 酢酸エチルのメタノール溶液) を流量 1.25 mL/min で使用しました。

このシステム構成で、連続 5 日間にわたってサンプルあたり約 15 秒間、血漿中の低分子医薬品を分析しました (注入回数 2,000 回/日)。図 1 は、アルプラゾラムおよびクロザピン 50 pg の注入により得られた各分析対象物のピーク面積比を RapidFire への注入回数の関数として示したものです (合計注入回数 10,000 回)。この図から、10,000 回の注入にわたって安定したピーク面積比が得られていることがわかります。これは、Agilent 6470 トリプル四重極 LC/MS の優れた分析性能を示しています。

10,000 回のサンプル注入の開始時と終了時における分析対象薬物の MRM クロマトグラムを重ね合わせたものを図 2 に示します。アルプラゾラムとクロザピンのピーク形状とピーク面積 (高さ) は、10,000 回の注入後もほとんど変わっていません。

この結果から、Agilent 6470 トリプル四重極 LC/MS の革新的なイオン光学系の設計により、サンプル蓄積による悪影響が最小限に抑えられたことは明らかです。また、このシステムが、沈殿処理済みの血漿サンプルに含まれるターゲット新薬候補物質の超ハイスループット分析に適した堅牢な分析プラットフォームであることを示しています。

この実験の詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-5953JAJP でご覧いただけます。

アジレントの幅広い分離および検出ソリューション

アジレントは、長年にわたって培った測定の専門知識をもとにして、新たな発見の原動力となる簡素化された分析手法の開発に取り組んでいます。分離および検出における技術革新をもたらす新たな Agilent 1290 Infinity II LCHPLC および UHPLC 分析カラムAgilent 6500 シリーズ Accurate-Mass 四重極飛行時間型 LC/MSAgilent 6495 トリプル四重極 LC/MS などのシステムなどにより、ターゲット化合物のプロファイリング、同定、特性解析、および定量にその卓越した感度とデータ品質を活用することができます。

アジレントの包括的なソリューションは、創薬プロセスを前進させるうえで必要なデータが得られるよう最適化されています。そのデータをもとに、常に確信を持ってプロジェクトの継続または中止を決定することができます。アジレントの創薬、医薬品ソリューションによりもたらされる成果をぜひご覧ください。