Access Agilent 2015年5月号

GC/MSD を活用した機能性食品の分析

John Lee
アジレント食品市場マネージャ

植物製品の多くは、茶葉やカプセル、または錠剤の形状でサプリメントに利用されます。これらのサプリメントは、健康を促進すると考えられており、その機能性は既定の化合物または化合物の類と関連付けられることもあります。しかし、植物には、あまり望ましくない、もしくは健康に対して意図せず悪影響を与えてしまう可能性のある有害な化合物も含まれています。そのため重要となるのは、原料の植物を分析して、この種の有害な化合物が含まれていないこと、消費者の健康を損なわないものであることを確認する作業です。

Agilent 1290 Infinity II マルチカラムサーモスタットのドアフラップは、90 ° に開いて「机」として使用することが可能で、180 ° まで開くとさらに内部に手が届きやすくなります。

R = C13H27 (C13:0)
R = C15H31 (C15:0)
R = C15H29 (C15:1)
R = C17H33 (C17:1)
R = C17H31 (C17:2)

図 1. ギンコール酸の構造

ギンコール酸標準の SIM およびスキャン GC/MS クロマトグラム、およびイチョウ葉のサンプル 15212 を示しています。

図 2. ギンコール酸標準の SIM およびスキャン GC/MS クロマトグラム、およびイチョウ葉のサンプル 15212 を示しています。
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ギンコール酸標準の SIM およびスキャン GC/MS クロマトグラム、およびイチョウ葉のサンプル 15212 を示しています。

図 2. ギンコール酸標準の SIM およびスキャン GC/MS クロマトグラム、
およびイチョウ葉のサンプル 15212 を示しています。

ギンコール酸の EI-MS スペクトル。

図 3. ギンコール酸の EI-MS スペクトル。(図を拡大)

ギンコール酸の EI-MS スペクトル。

図 3. ギンコール酸の EI-MS スペクトル。

この例は、Wang, M. et al. [1] が、イチョウサンプル内のギンコール酸 (GA) を定性的および定量的に分析した結果です (図 1)。イチョウは、世界中で茶葉やサプリメントとして利用されていますが、アレルギー性接触皮膚炎などの副作用を引き起こす可能性があると考えられてきました。今回の GA 分析には、GC/MSを使用しました。このアプリケーションでは、その他の手法よりも多数の良好な結果が得られます。

EI と SIM の利点

電子衝突イオン化 (EI) イオン源では、イオン化のプロセスにおいて、再現性のある化合物フラグメントイオンが得られます。特定の類の化合物を同定する場合は EI が有効です。選択イオンモニタリング (SIM) は、極めて高感度かつ特定のイオンの選択による分析が行えます。ただSIMでは、化合物類から多数の類似体、さらには予期していない類似体までも抽出してしまうこともあります (図 2 のセクション B に示す例を参照)。

高分解能ガスクロマトグラフィーの利点

異なる類似体を検出するには、存在する可能性のある類似体および干渉物質をすべて、バックグラウンドマトリクスから適切に分離する必要があります。植物では、この作業が困難な場合も起こります。HPLC は、GA を評価するのに使用される一般的な手法です。GC/MSD も、ガスクロマトグラフィーで極めて高い分解能と選択性を実現しているため、一般的な手法になってきており、実際に化合物の位置異性体までを分離して、側鎖の炭素数を識別できる十分な性能を備えています。この能力は独自のものであり、ターゲット化合物を正確に定量し、新しい化合物を高い信頼性で検出することが可能です (図 2B を参照)。

SIM/SCAN 収集の利点

分離ピークの同定を確認する方法が確立されていることが大切です。同定済みの化合物の場合、リテンションタイムが標準に対して厳密に一致する必要があります。同定済みの化合物と同定されていない化合物の両方を、詳細に確認することが必要になる場合も多々あります。このため、分析者の多くは、GC/MSD を SIM/SCAN モードを活用しています。このSIM/SCANモードでデータを収集すると、1回の測定で SIM モードの高感度分析が行えるとともに、スキャンモードによるEIスペクトルでの同定も行うことができます。スペクトルをライブラリサーチして、同定を実行します。Agilent GC/MSD ソフトウェアを使用すると、必要な情報が含まれている豊富なライブラリにアクセスすることができ、さらに新たに検出された化合物に対して、ライブラリ登録できます。GA について、この工程を図 3 に示します。

食品安全性評価に使用される GC/MSD 手法とツール

図 2 および 3 は、ミシシッピ大学 NCNPR (National Center for Natural Products Research) の研究の成果です。Agilent J&W HP-88 GC カラムを備えた Agilent 7890B/ 5975C GC/MSD を使用しましたTMSO (水酸化トリメチルスルホニウム) による誘導体化の前処理を行いました。この試薬は注入の前に抽出物に追加する (50 µL) だけで済むため、操作が容易な前処理ですルーチン分析の場合は、7890 オートサンプラを使用して、この誘導体化作業を自動化できます。誘導体化は GC 分離に有効なだけではなく、質量分析法は分子量も大きくなり、フラグメンテーションによる同定でも有用性が生じます。

図 2 は、4 つのギンコール酸標準 (A)、植物サンプル 15212 (イチョウ葉) (B)、およびこのサンプルの全イオンクロマトグラム (TIC) とm/z 161 で選択されたSIMクロマトグラムを示しています。成分ペア C13:0/C15:1 と C15:0/C17:1 は、HPLC では分離が困難ですが、GC/MSDでは分離されました。

図 3 は、5 つの分析済みギンコール酸の電子衝突イオン化(EI)を示しています。この詳細については、アジレントアプリケーションノート 5991-5634EN をご覧ください。

アジレントが提供する食品安全性に対する幅広いソリューション

植物およびサプリメントには、人の健康に対して懸念の対象となる有機化合物が多数存在しています (例えば、農薬残留物など)。GC/MS および LC/MS は、農薬を特定でも利用されています。LC/MS は、植物内のピロリジジンアルカロイドや N-オキシドを確認するのにも使用されます。

これらの手法は、植物内の薬効成分を分析したり、原料である植物の起源の確認の際にも重要になります。アジレントでは、ICP-MSICP-OESMP-AES などのさまざまな原子手法を用いたこれらのアプリケーションも有しています。このアプリケーションでは LC/MS および GC/MS の使用方法について紹介しました。

一般的に、食品は分析が最も困難なマトリクスです。アジレントの業界最高レベルの食品分析ソリューションは、サプリメントなどの機能性食品の分析に対応しています。詳細については、アジレントまたはアジレント販売店にお問い合わせください。

References

  1. Wang, M. et al. J. Agric. Food Chem. 2014, 62, 12103.