Access Agilent 2015年5月号

ヒント: アジレントの AdvanceBio ワークフローソリューションを使用した 糖鎖マッピングの最適化

Andrew Coffey
アジレントアプリケーションケミスト

モノクローナル抗体 (mAb) は、クローン病、関節リウマチ、喘息などの免疫疾患または癌の治療を目的とした多数の製品に使用され、生物製剤市場では主流となっている薬剤です。現在、何百もの化合物に対して、臨床試験が実施されています。ただし、承認済みの mAb の大部分は、ヒトまたはヒト化です。これらは、哺乳類の細胞培養により前処理され、ヒト変異体に相当するタンパク質シーケンスを作成します。発現すると、抗体により、グリコシル化という翻訳後修飾が実施されます。Agilent AdvanceBio Glycanマッピングワークフローでは、最適化されて短時間で実施できるメソッドにより、これらの重要な生物製剤に対してグリコシル化プロファイルを生成します。

グリコシル化の際にタンパク質に付加されるグリカン構造は、生物学的活動に影響を与えるため、特に重要です。免疫反応は、抗体の Fc (結晶性フラグメント) 領域と免疫セル表面の受容体の間の相互作用を基にしています。相互作用は、抗体依存性細胞障害 (ADCC) や補体依存性細胞傷害 (CDC) に関係する他の分子でも発生する場合があります。実際の構造が、相互作用のレベルに影響を与えます。

治療用モノクローナル抗体に由来する一般的な N-グリカン。アジレントのソリューションを使用すると、これらの個体構造生成のモニタリングが容易になります。

図 1. 治療用モノクローナル抗体に由来する一般的な N-グリカン。アジレントのソリューションを使用すると、これらの個体構造生成のモニタリングが容易になります。
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治療用モノクローナル抗体に由来する一般的な N-グリカン。アジレントのソリューションを使用すると、これらの個体構造生成のモニタリングが容易になります。

図 1. 治療用モノクローナル抗体に由来する一般的な N-グリカン。アジレントのソリューションを使用すると、
これらの個体構造生成のモニタリングが容易になります。

ワンベンダーソリューションによるグリコシル化プロファイルの効率的な生成

生物工学的に処理された治療用の mAb の場合、抗体の保存 Fc 領域のアスパラギン Asn297 残留物に対して、最初にグリカンが付加されます。最初にタンパク質に付加されるグリカンは、酵素的に修飾され、さまざまな個体構造を生成します (図 1)。このため、制御されたグリカンプロファイルの生成は、開発時およびその後の製造時の両方において、依然として困難なままです。そこで、この生成を継続的にモニタリングする必要があります。

通常、グリカンの個体構造の識別は、MS ベースの手法に基づいて実施されます。ただし、HPLC を使用して、プロファイリングと定量化を実施することもできます。

Agilent AdvanceBio 糖鎖マッピングワークフローは、以下の処理に対する包括的なソリューションを提供します。

  • N-グリカンの切断
  • グリカンのラベリング
  • HILIC (親水性相互作用液体クロマトグラフィー) による分離
  • メソッド最適化での標準試料の使用

このワークフローを使用すると、単一のベンダーソリューションにより、効率的かつ堅牢な再現性のある方法で、グリコシル化プロファイルを生成できます。

アジレントは、グリカン分析における一般的なワークフローを促進するための包括的なソリューションを提供しています。

図 2. アジレントは、グリカン分析における一般的なワークフローを促進するための包括的なソリューションを提供しています。
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アジレントは、グリカン分析における一般的なワークフローを促進するための包括的なソリューションを提供しています。

図 2. アジレントは、グリカン分析における一般的なワークフローを促進するための
包括的なソリューションを提供しています。

糖鎖マッピング (図 2) は、理想的な形で HILIC 分離に適合しています。N-グリカンは、酵素 PNGase-F を使用して、タンパク質から切断する必要があります。この切断を実施するには、37 °C で 3 時間インキュベーションします。切断後の N-グリカンは、固相抽出 (SPE) により、切断溶液から精製する必要があります。切断後のグリカンの感度を高めて、アノマー化を除去するには、業界標準の 2-アミノベンズアミド (2-AB) によりグリカンにラベリングします。このラベリング反応には、65 °C で 3 時間を要します。2-AB ラベリング済みグリカンは、SPE カートリッジを使用して精製されます。

糖鎖マッピング用の最適なカラム

アジレントは、次の 2 種類の HILIC 糖鎖マッピングカラムを提供しています。それは、全多孔質 1.8 µm カラムと表面多孔質 2.7 µm カラムです。HILIC 分離のメカニズムには、粒子表面の豊富な水分を含んだ環境への分配が含まれています。1.8 µm 物質は UHPLC アプリケーション用に設計されており、Agilent 1290 Infinity LC が必要になります。一方、2.7 µm 物質は幅広いカラム寸法で使用できるため、Agilent 1260 Infinity LC または圧力上限が 400 bar である旧式の機器でも使用できます。サンプル内で 2-AB ラベリング済みグリカンの量が制限され、注入量が少ない場合には、高感度の蛍光検出が必要になります。

HILIC 相はすべて、高有機移動相から低有機移動相の間で作用します。通常、有機移動相はアセトニトリルであり、高純度 (HPLC グレード) で新鮮な溶媒を使用する必要があります。水性相では、強溶媒が形成されます。通常、移動相は 100 mM ギ酸アンモニウム、pH 4.5 です (この移動相は MS と互換性があるため、Agilent 四重極飛行時間型 (Q-TOF) MS と組み合わせて使用できます)。通常、カラムのサイズは 2.1 × 150 mm であるため、デッドボリュームを最小化するために、機器構成を最適化する必要があります。同様に、ナローボア HILIC カラムは簡単にオーバーロードしてしまうことに注意する必要があります。一般的に注入量はわずか 1 µL で、注入量が増えるとピーク形状が悪化し、分解能が低下する場合があります。

Agilent AdvanceBio 糖鎖マッピングの 2.7 µm、2.1 × 150 mm カラムを使用すると、2-AB でラベリング済みの N-グリカンを、高速かつ高分解能で分離できます。

図 3. Agilent AdvanceBio 糖鎖マッピングの 2.7 µm、2.1 × 150 mm カラムを使用すると、2-AB でラベリング済みの N-グリカンを、高速かつ高分解能で分離できます。
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Agilent AdvanceBio 糖鎖マッピングの 2.7 µm、2.1 × 150 mm カラムを使用すると、2-AB でラベリング済みの N-グリカンを、高速かつ高分解能で分離できます。

図 3. Agilent AdvanceBio 糖鎖マッピングの 2.7 µm、2.1 × 150 mm カラムを使用すると、
2-AB でラベリング済みの N-グリカンを、高速かつ高分解能で分離できます。

貴重なサンプルを保護するために最適化されたメソッド

Agilent デキストランラダーおよび IgG N-グリカンライブラリ標準は、貴重なサンプルを分析する際に、サンプル前処理とカラム使用条件の両方を最適化するのに有効です (図 3)。デキストランラダーのリテンションタイムを使用して、ピークの相対「グルコース単位」 (GU 値) を決定することができます。次に、オンラインデータベースを検索して、これらの GU 値に対応するグリカン構造の候補を決定することができます。

高流量 (内径 2.1 mm のカラムで 0.5 mL/min) が一般的に使用されますが、背圧が高くなってしまう可能性があります。オーブン温度を高くすると (40、50、または 60 °C) 溶離液の粘度が下がるため、背圧が下がり、ピーク形状が改善されます。ただし、温度変化により、2-AB でラベリング済みの一部の N-グリカンの選択性が変わってしまうため、注意する必要があります。

最終的に、サンプルのスループットを向上させる必要がある場合は、高速分離用のカラムを選択し、一方 N-グリカンの重要なペアに対して、分解能と分離能を最大にする必要がある場合には、長くて遅いグラジエントで処理を実施します。

生物製剤およびバイオシミラーを使用する際の効率的なソリューション

生物製剤は、健康促進のための大きな可能性を秘めています。この重要な薬効分類が、これまでにない医学上のニーズに対応するために、治療用タンパク質および抗体の承認数は増え続けています。アジレントは、疾病研究から QA/QC、製造までのあらゆる段階で、治療法を適切に市場に投入するうえでのメソッド開発を支援しています。