Access Agilent 2015年4月号

単一粒子 ICP-MS 専用ソフトウェアで より優れたナノ粒子特性解析を実現

山中理子、山中和夫
アジレントアプリケーションエンジニア

板垣隆之
アジレントソフトウェア R&D エンジニア

Steve Wilbur
アジレントソフトウェア製造部長、ICP-MS システム

Ed McCurdy
Agilent ICP-MS 製品マーケティング

ナノテクノロジーの進化は、幅広い業界に大きな影響を与えるものと予測されています。ナノ粒子 (nanoparticles,NPs) は既知の物体にはない物理的特性や化学的特性を持つため、多くは、その環境動態や毒性がまだ解明されていません。このような背景から、さまざまな種類のサンプルに含まれる NP の特性解析や定量に利用できる、高速性、真度、および感度に優れた分析テクニックの開発が急務となっています。ICP-MS では、単一粒子(single particle) ICP-MS (sp-ICP-MS) と呼ばれるテクニックを使用します。個々の NP について、粒径、粒径分布、元素組成、および個数濃度を 1 回の高速分析で同時に測定することが可能です。また、ICP-MS のハードウェアおよびソフトウェアの進化により、このテクニックの性能はさらに向上しています。

魅力ある組み合わせ: 専用ソフトウェアと短いドウェルタイム

アジレントは、ICP-MS MassHunter ソフトウェア用の単一ナノ粒子専用アプリケーションモジュールを開発しました。このモジュールにより、Agilent 7900 ICP-MS を用いた sp-ICP-MS 分析が容易になります。7900 ICP-MS のドウェルタイムは短く (1 ms 未満)、高速時間分析 (TRA) モードを使用するため、1 回あたりわずか 100 µs のサンプリングスピードで元素データを採取でき、セトリング時間も不要です。また、単一粒子からの信号パルスでさまざまな測定を行えるため、複数の粒子の信号が重なってしまうリスクはほぼ解消されます。低いサンプル希釈率でサンプルデータの採取時間を短縮することも可能です。

金および銀 NP 標準物質の特性解析

認証粒子サイズがそれぞれ 30 nm および 60 nm の 2 種類の金 (Au) NP 標準物質 (NIST 8012 および NIST 8013) と、粒径がそれぞれ 20 nm、40 nm、60 nm、100 nm の銀 (Ag) NP サンプル (Sigma-Aldrich より入手) を、Agilent 7900 ICP-MS の MassHunter 単一ナノ粒子アプリケーションモジュールを使用して測定しました (図 1)。すべての標準物質とサンプルは、エタノール 10 % の脱イオン水で 50~1000 ng/L に希釈し、超音波処理によりサンプルを均一に分散させました。Agilent 7900 ICP-MS の全般的な設定の詳細を表 1 に示します。

単一粒子の最終的なバッチ結果は、表とグラフの両形式で自動的にレポートされます。バッチ結果の表でサンプルをスクロールし、個々の結果をグラフで確認できます。必要に応じて、強力な手動最適化ツールを利用することも可能です。

図 1. 単一粒子の最終的なバッチ結果は、表とグラフの両形式で自動的にレポートされます。バッチ結果の表でサンプルをスクロールし、個々の結果をグラフで確認できます。必要に応じて、強力な手動最適化ツールを利用することも可能です。(図を拡大)

単一粒子の最終的なバッチ結果は、表とグラフの両形式で自動的にレポートされます。バッチ結果の表でサンプルをスクロールし、個々の結果をグラフで確認できます。必要に応じて、強力な手動最適化ツールを利用することも可能です。

図 1. 単一粒子の最終的なバッチ結果は、表とグラフの両形式で自動的にレポートされます。バッチ結果の表でサンプルをスクロールし、
個々の結果をグラフで確認できます。必要に応じて、強力な手動最適化ツールを利用することも可能です。

Au NP の粒径分布A) NIST 8013 (公称 60 nm)B) NIST 8012 (公称 30 nm)

図 2. Au NP の粒径分布A) NIST 8013 (公称 60 nm)B) NIST 8012 (公称 30 nm)
(図を拡大)

Au NP の粒径分布A) NIST 8013 (公称 60 nm)B) NIST 8012 (公称 30 nm)

図 2. Au NP の粒径分布A) NIST 8013 (公称 60 nm)B) NIST 8012 (公称 30 nm)

20、40、60、100 nm の Ag NP 混合物の粒子サイズ分布結果

図 3. 20、40、60、100 nm の Ag NP 混合物の粒子サイズ分布結果(図を拡大)

20、40、60、100 nm の Ag NP 混合物の粒子サイズ分布結果

図 3. 20、40、60、100 nm の Ag NP 混合物の
粒子サイズ分布結果

パラメータ

RF 出力

1550 W

サンプリング深さ

7 mm

キャリアガス

0.76 L/min

サンプル取り込みレート

0.35 mL/min

スプレーチャンバ温度

2 °C

ドウェルタイム

0.1 ms

表 1. Agilent 7900 ICP-MS の全般的な設定

Au NP の分析

標準物質中の Au NP の分析により得られた濃度測定値は、公称濃度によく一致していました (表 2)。粒径の測定値 (図 2) についても、透過電子顕微鏡法 (TEM) の参照値に一致しています。

サンプル
(調製濃度)

濃度測定値
(個/L)

濃度測定値
(ng/L)

粒子サイズ
測定値
(nm)

TEM による
参照粒子サイズ
(nm)

NIST 8013
公称 60 nm
(100 ng/L)

5.59 x 107

103

55

56.0 ± 0.5

NIST 8012
公称 30 nm
(10 ng/L)

4.27 x 107

10.5

28

27.6 ± 2.1

表 2. Au NP の分析結果

Ag NP の分析

複数の粒径で構成される Ag NP の分析結果を図 3 に示します。20 nm の Ag NP については、高感度の Agilent 7900 ICP-MS の高い感度により測定が可能です。Ag NP 混合物で測定した粒径分布から、20 nm、40 nm、60 nm、および 100 nm の粒子が良好に分離しているのがわかります。

Agilent ICP-MS で NP の特性解析がさらに容易に

ナノ粒子の測定および特性解析アプローチとして、Agilent 7900 ICP-MS と専用の sp-ICP-MS ソフトウェアの組み合わせがきわめて有効です。このメソッドなら、粒径分布とサンプル濃度情報をあわせて取得できます。これは、他のほとんどのテクニックでは成し得ないことです。

詳細については、アジレントホワイトペーパー「ICP-MS を使用した水溶性サンプル中ナノ粒子の特性解析」(5991-5516JAJP) をダウンロードしてください。また、アジレントのフライヤー「アジレントの ICP-MS によるナノ粒子分析の包括的ソリューション」(5991-5536JAJP) もご覧ください。

Agilent ICP-MS ジャーナル

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