Access Agilent 2015年3月号

Agilent HPLC/ICP-MS システムによる 簡便かつ正確な元素スペシエーション

Eric Vanclay
アジレント分光分析消耗品製品マネージャ

Tetsushi Sakai
アジレント ICP-MS アプリケーションエンジニア

Ed McCurdy
アジレント ICP-MS Productスペシャリスト

ICP-MS は、金属や半金属の微量および超微量を測定するための強力な分析ツールです。ICP-MSは、分離技術 (通常は、クロマトグラフィー) と接続することにより、ハイフネート ICP-MS システムを構築できます。クロマトグラフィーは、サンプル中のさまざまな成分を分離し、リテンションタイムの形で新たな詳細情報を提供します。ICP-MS は、存在する金属 (または元素) を同定します。

スペシエーションは、ハイフネートされた技術が利用される急速に成長しているアプリケーション領域です。HPLC を ICP-MS に結合することにより、LC カラムで元素種が分離して溶出され、高感度での検出と化合物固有の同定が同時に実現できます。LCシステムの接続はシンプルで迅速に実行できるため、特に魅力的な手法です。通常、HPLC 移動相の組成と流量は、ICP-MS サンプル導入システムとの互換性を備えています。

ハイフネーションは、非常に有用でラボでのルーチン手順まで確立された技術です。ラボの技術者は、この技術を使用してさまざまな種類のサンプルに存在する金属種を同定して定量することができます。LC-ICP-MS は、健康上のリスクや生体的な活動、さらには元素の環境循環および汚染物質の変化に関する研究にも有効です。複雑な代謝パスウェイを解明するのにも役立ちます。

4 種の前処理ブランクのクロマトグラムにより、検出不可能なレベルの As 種による汚染を同定 (50 ng/L 混合 As 種標準を重ね書き)

図 1. 4 種の前処理ブランクのクロマトグラムにより、検出不可能なレベルの As 種による汚染を同定 (50 ng/L 混合 As 種標準を重ね書き)(図を拡大)

4 種の前処理ブランクのクロマトグラムにより、検出不可能なレベルの As 種による汚染を同定 (50 ng/L 混合 As 種標準を重ね書き)

図 1.4 種の前処理ブランクのクロマトグラムにより、検出不可能なレベルの As 種による汚染を同定 (50 ng/L 混合 As 種標準を重ね書き)

4 種のリンゴジュースサンプルのクロマトグラム (すべてを同一強度スケールで表示) により、それぞれの As 種の異なる相対的な濃度をハイライト表示

図 2. 4 種のリンゴジュースサンプルのクロマトグラム (すべてを同一強度スケールで表示) により、それぞれの As 種の異なる相対的な濃度をハイライト表示(図を拡大)

4 種のリンゴジュースサンプルのクロマトグラム (すべてを同一強度スケールで表示) により、それぞれの As 種の異なる相対的な濃度をハイライト表示

図 2.4 種のリンゴジュースサンプルのクロマトグラム (すべてを同一強度スケールで表示) により、それぞれの As 種の異なる相対的な濃度をハイライト表示

リンゴジュースに存在するヒ素の形態別分析

最近、欧州食品安全機関 (EFSA: European Food Safety Authority) と FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議 (WHO/FAO Joint Expert Committee on Food Additives and Contaminants) は、食品の無機ヒ素含有量に関する正確な情報の取得について協力を要請しました。これらの機関は、無機ヒ素への食品曝露に関する評価の改善、および選択性測定手法の検証が必要であると結論付けています。例えば、リンゴジュースに存在するヒ素 (As) が、米国環境保護庁 (US EPA) が定めた、飲料水内の As の最高含有量レベル (10 µg/L) を超えている可能性があります。20 世紀ほぼ全体にわたり、収穫前の農薬として、ヒ酸鉛やヒ酸カルシウムなどのヒ素含有農薬が使用されていました。一般の使用は 1970 年代に終結しましたが、この化合物には安定性があるため、その後も長期間土壌に残留し続けています。

この実験では、Agilent 1290 Infinity LCAgilent 7700x ICP-MS と組み合わせて使用し、6 種類の市販のリンゴジュースに含まれる As を分離して測定しました。また、同じようにこの手法にAgilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS も使用してサンプルを測定しました。サンプル前処理はシンプルなろ過と脱イオン水で 2 倍希釈を行いました。種の相互変換を最低限に抑えて、検出限界を可能な限り低くするため、サンプルを強く遠心分離したり、希釈係数を大きくしたりすることは避けました。アジレントの食品/尿用のスペシエーションガードカラムとヒ素スペシエーションカラムを使用して、As(III) と As(V) 種、および有機形態のアルセノベタイン (AB)、ジメチルアルシン酸 (DMA)、モノメチルアルソン酸 (MMA) を分離しました。

メソッドの能力を評価するために、サンプル前処理時に As 種による汚染の可能性について評価しました。4 種類の異なる前処理ブランクサンプルを準備し、汚染の可能性を同定しました。このブランクサンプルには、脱イオン水、ろ過済みブランク、およびメソッドブランクが含まれています (脱イオン水は 2 回ろ過、サンプルについても同じ)。図 1 は、Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS を使用した測定結果で、前処理ブランク内に検出可能なレベルのヒ素は存在していないことが示されています。

毒性のある無機 As 種に対するキャリブレーションを、10 ~ 500 ng/L の間で実施しています。このレベルでは良好な感度と直線性を示しています。図 2 は、Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS を使用した測定結果で、4 種のリンゴジュースサンプルのクロマトグラムを示しています。

表 1 は、Agilent 7700x ICP-MS を使用した測定結果で、ジュース内のヒ素の測定された濃度を示しています (2 倍の希釈係数で補正済み)。6 種類のサンプルすべてにおいて As 種が検出されましたが、As の合計濃度と別の種の相対濃度には差がみられます。As の大部分は毒性のある無機形態であり、すべてのリンゴジュースサンプルに含まれていた合計 As は、US EPA で定められた、飲料水内の最高レベル (10 µg/L) よりかなり低くなっています。すべてのリンゴジュースサンプルにおいて、測定された As の合計濃度 (すべての種の合計) は、5 µg/L を下回っていました。

リンゴジュース

AB (µg/L)

DMA (µg/L)

As(III) (µg/L)

MMA (µg/L)

As(V) (µg/L)

1

0.036

0.189

0.724

未検出

0.651

2

0.026

0.022

0.041

未検出

0.058

3

0.02

0.267

0.883

1.587

0.758

4

0.039

0.208

0.992

1.466

1.958

5

0.043

0.209

1.256

0.785

0.709

6

0.036

0.235

1.098

未検出

0.068

表 1.6 種類のリンゴジュースサンプルに含まれる 5 つの As 化学種の濃度

信頼性の高い化合物の同定と定量

以上の結果は、リンゴジュースなどの飲料や食品に含まれる低 µg/L レベルの As 種の分析においては、ハイフネートされた Agilent ICP-MS が最適であることを示しています。シンプルなサンプル前処理、低希釈、および高速で信頼性の高いクロマトグラフィーによる分離で、As 種をルーチンでモニタリングすることができます。アジレントのスペシエーションカラムが、最も一般的なスペシエーションメソッドにおいて、優れたピーク分離性能と再現性を提供します。アジレントのスペシエーションカラムは、定量と化学種を高い信頼性で同定するのに役立ちます。

アジレントが提供する HPLC/ICP-MS システム

詳細については、『Agilent Metals Speciation Columns and Supplies Flyer』および『リンゴジュース中のヒ素のスペシエーション分析』アプリケーションノート 5991-0622JAJP (Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS) を参照してください。さらに、『アジレントスペシエーションハンドブック』では、環境、食品安全性、石油・石油化学などにおいて、Agilent LC-ICP-MS などの幅広いハイフネートされた技術について説明しています。