Access Agilent 2015年2月号

スケールダウンしたAgilent QuEChERS と 7010 トリプル四重極 GC/MS による 農薬分析の向上とサンプル前処理の最適化

Melissa Churley および Joan Stevens
アジレント シニアアプリケーションサイエンティスト

高度な農薬分析のためのサンプル前処理の改善は、食の安全性を実現するための優先課題です。このようなニーズに対応するため、アジレントはスケールダウンした QuEChERS と、サンプル注入量を 75% 削減することができる Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS の超高感度 EI イオン源を組み合わせることで、サンプル前処理の最適化と食品中残留農薬の確実な分析を可能にしたアプリケーションを開発しました。

サンプル前処理のスケールダウンには以下の利点があります。

  • 使用する溶媒を減らすことができますので、溶媒コストと廃液を削減できます。
  • 測定で必要なサンプル量を減らすことができますので、ラボでの取り扱い、貯蔵、処理が容易になります。
  • サンプル前処理用吸着剤や、内部標準として使用する内部標準物質のコストが削減できます。
  • サンプル量を減らせるため、サンプル量が多いとコストが高い厄介な分析対象物の追加のラベル化合物のコストを削減できます。

以下の例では、アジレントのスケールダウンした QuEChERS システムで測定し、リンゴ、ニンジン、ブロッコリ中の 126 種類の農薬の 95% 以上に対して、10 ng/g 以下という定量下限を得ることができました。標準メソッドの注入量の 25% で、10 ng/g MRL のスレッシュホールド (US EPA、EU、日本で曝露モニタリングに適切とされる) 以下で農薬を検出することができました。注入するマトリックス量が少ないと、稼働時間が長くなり安定して測定できるため、結果的にメンテナンスコストを削減することができます。

スケールダウンしたQuEChERS による農薬抽出

ホモジナイズしたサンプル (リンゴ、ニンジン、またはブロッコリ) を 2 グラム 計量し、2 つのセラミックホモジナイザが入った 15 mL の遠心分離チューブに注入しました。QC サンプルに 1 µg/mL の農薬標準溶液 (126 種類の農薬) を添加し、5、10、50 ng/g の QC サンプルを生成しました。対照用ブランク以外のすべてのサンプルに、内部標準添加溶液 (10 µL の 10 µg/mL パラチオン-d10、DDT、p,p-13C12、TPP) を追加し、各サンプルの濃度を 50 ng/g にしました。次に、1 % の酢酸アセトニトリル (2 mL) を各チューブに追加しました。チューブにふたをして 1 分間撹拌し、1 g の Agilent AOAC QuEChERS 塩を追加しました。最後に、チューブを密閉して 1 分間よく振とうしたのち、4,000 rpm で 5 分間遠心分離しました。1 mL の上澄み ACN 層を、抽出物から Agilent QuEChERS 分散 SPE の 2 mL チューブに移しました。リンゴの抽出物には、50 mg の PSA と 150 mg の MgSO4 を含む Agilent QuEChERS AOAC 分散 SPE を使用しました。ブロッコリとニンジンの抽出物には、25 mg の PSA、2.5 mg の GCB、150 mg の MgSO4 を含む Agilent QuEChERS EN 分散 SPE を使用しました。この測定の詳細については、アプリケーションノート 5990-1054EN5990-5507EN をご覧ください。

0.5 µL の注入量 (n=6) を使用して 1 および 5 ng/g で抽出したリンゴ、ニンジン、ブロッコリに含まれる 126 種類の農薬に対する %RSD 分布。

図 1.0.5 µL の注入量 (n=6) を使用して 1 および 5 ng/g で抽出したリンゴ、ニンジン、ブロッコリに含まれる 126 種類の農薬に対する %RSD 分布。(図を拡大)

0.5 µL の注入量 (n=6) を使用して 1 および 5 ng/g で抽出したリンゴ、ニンジン、ブロッコリに含まれる 126 種類の農薬に対する %RSD 分布。

図 1.0.5 µL の注入量 (n=6) を使用して 1 および 5 ng/g で抽出したリンゴ、ニンジン、ブロッコリに含まれる
126 種類の農薬に対する %RSD 分布。

リンゴ (AP)、ニンジン (CA)、ブロッコリ (BR) に 1 ng/g で添加したデルメタトリンに対する相関係数 (R2) と定量トランジション (MRM)。

図 2.リンゴ (AP)、ニンジン (CA)、ブロッコリ (BR) に 1 ng/g で添加したデルメタトリンに対する相関係数 (R2) と定量トランジション (MRM)。(図を拡大)

リンゴ (AP)、ニンジン (CA)、ブロッコリ (BR) に 1 ng/g で添加したデルメタトリンに対する相関係数 (R2) と定量トランジション (MRM)。

図 2.リンゴ (AP)、ニンジン (CA)、ブロッコリ (BR) に 1 ng/g で添加したデルメタトリンに対する相関係数 (R2) と定量トランジション (MRM)。

5、10、50 ng/g レベルの抽出物を 0.5 µL の注入量で使用した、抽出前添加済みのリンゴ、ニンジン、ブロッコリに対する 126 種類の農薬の回収率分布。

図 3. 5、10、50 ng/g レベルの抽出物を 0.5 µL の注入量で使用した、抽出前添加済みのリンゴ、ニンジン、ブロッコリに対する 126 種類の農薬の回収率分布。(図を拡大)

5、10、50 ng/g レベルの抽出物を 0.5 µL の注入量で使用した、抽出前添加済みのリンゴ、ニンジン、ブロッコリに対する 126 種類の農薬の回収率分布。

図 3.5、10、50 ng/g レベルの抽出物を 0.5 µL の注入量で使用した、抽出前添加済みのリンゴ、ニンジン、ブロッコリに対する126 種類の農薬の回収率分布。

0.5 µL (上) および 2 µL (下) のマトリックス抽出物を 65 回注入した後の GC ライナの残留農薬堆積物 (A)。0.5 µL のマトリックス抽出物を 200 回以上注入した後、堆積物はほとんど見られません (B)。

図 4. 0.5 µL (上) および 2 µL (下) のマトリックス抽出物を 65 回注入した後の GC ライナの残留農薬堆積物 (A)。0.5 µL のマトリックス抽出物を 200 回以上注入した後、堆積物はほとんど見られません (B)。(図を拡大)

0.5 µL (上) および 2 µL (下) のマトリックス抽出物を 65 回注入した後の GC ライナの残留農薬堆積物 (A)。0.5 µL のマトリックス抽出物を 200 回以上注入した後、堆積物はほとんど見られません (B)。

図 4. 0.5 µL (上) および 2 µL (下) のマトリックス抽出物を 65 回注入した後の GC ライナの残留農薬堆積物 (A)。
0.5 µL のマトリックス抽出物を 200 回以上注入した後、堆積物はほとんど見られません (B)。

不活性流路による信頼性の向上

さらに、Agilent J&W HP-5ms ウルトライナート GC カラム (5 m x 0.25 mm、0.25 µm および 15 m x 0.25 mm、0.25 µm (G3903-61005、19091S-431UI))、Agilent ウルトライナート 2 mm ディンプルライナAgilent UltiMetal Plus フレキシブルメタルフェラル を、パージ付き Ultimate ユニオンでバックフラッシュが行えるシステムで、流路の不活性度を最大化しました。

抽出したブランクマトリックス (リンゴ、ニンジン、ブロッコリ) を 1~100 ng/g で添加し、126 種類の農薬および農薬異性体グループの混合物のキャリブレーション標準を作成しました。図 1 に、0.5 µL の注入量における、1 および 5 ng/g でのリンゴ、ニンジン、ブロッコリ中の農薬の再現性を表す %RSD (相対標準偏差)の分布を示します。

次に、6 セットの標準溶液を 6 回連続して注入し、中間セットに対して、重み付け 1/x の線形適合法を使用したキャリブレーションを行いました。メソッドの精度を表すため、残りの 5 セットの標準を QC として指定しました。 結果を図 2 の青色の三角形で示します。検量線は、リンゴ、ニンジン、ブロッコリに添加した 126 種類の農薬の 95% に対して、平均で 0.99 を上回る相関係数値 (R2) が得られました。

1/4 の注入サンプルで最適なクロマトグラフィーを維持

0.5 µL のサンプル注入量で注入した量は 2.5 pg であり、標準の 2 µL の注入量に含まれる 10 pg のサンプル量と比べると、サンプル量が 75% 減少しています。サンプル注入量が減少しても、規定 MRL の半分にあたる 5 ng/g において、分析がきわめて難しい農薬でも最適なクロマトグラフィー性能が維持されています。

粉砕したリンゴ、ニンジン、ブロッコリに、5、10、50 ng/g のレベルで農薬標準溶液を添加して、回収率を評価しました。これらの QC サンプルは、各濃度レベルで 3 回繰り返して、マトリックススパイク検量線に対して定量しました。 1 mL のサンプルを SPE で処理した回収率の結果を図 3 に示します。

注入量の削減によるライナの超寿命化

図 4 は、従来の注入量(2.0 μL)とスケールダウンしたメソッド注入量(0.5μL)をそれぞれで注入した後の GC注入口ライナです。Aの上のライナは 0.5 μLのサンプルを、下のライナには注入量を 2.0 μLに増やした同じサンプルを、それぞれ 65 回注入しています。従来法の 2.0 μL 注入のライナは明らかに堆積物が増加しており、ライナの耐用期間が減少し、スケールダウンメソッドに比べて多くのメンテナンスコストが発生します。B のライナは、スケールダウンメソッドで 200 回を超える注入をしています。このライナは、拡大図ではっきりと見えるとおり、目に見える堆積物がほとんどありません。これにより、ライナの超寿命化が図れて、メンテナンスコストも削減できます。

アジレントのスケールダウンした QuEChERS による食品分析の最適化

QuEChERS 抽出をスケールダウンすることで、溶媒と廃液の量を削減し、必要なラベル化合物の量も減らすことができます。その結果として、サンプル前処理コストが大幅に削減されます。Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS の超高感度 EI イオン源を使用した分析メソッドで、リンゴ、ニンジン、ブロッコリを分析した例では、95% を上回る農薬残留物が規制値である 10 ng/g 以下で定量することができました。

Agilent QuEChERS メソッドの例についての詳細は、無償で提供されている Agilent Bond Elut QuEChERS Food Safety Applications Notebook:Volume 2 をご参照ください。また、農薬分析の詳細は、アジレントの包括的な GC/MS/MS 農薬分析リファレンスガイドに記載されています。このリファレンスガイドの詳細につきましては、アジレントの担当者までお問い合わせ下さい。