Access Agilent 2014年9月号

革新的な Agilent 5100 シンクロナス・バーティカル・デュアルビュー ICP-OESによるアルゴン消費量の削減とサンプルスループットの向上

Ross Ashdown
アジレント ICP-OES プロダクトマネージャー

誘導結合プラズマ発光分析 (ICP-OES) は、確立された主要テクニックとして、世界中の多くのラボで幅広い種類のサンプルの微量金属分析に用いられています。ICP-OES が広く普及しているのは、安定性に優れ、高速多元素分析に対応できることに加え、優れたサンプルスループットが得られるためです。最近では、ICP-OES 使用の柔軟性を高めるために、デュアルビュー (DV) プラズマ光学系が開発されています。こうした開発の狙いは、水平配置プラズマの従来の「ラディアル」ビューを用いて、 測定上限 (直線ダイナミックレンジ) を引き上げ、一部の元素の干渉を低減することにあります。DV プラズマ光学系には、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛といった元素の感度を高めるために、プラズマの「アキシャル」測光も追加されています。

しかし、従来の DV-ICP-OES装置では、特に堅牢性とスピードという点で妥協をする必要がありました。すでに述べたように、たいていの従来型のデュアルビューシステムでは、堅牢性の高い垂直トーチではなく、水平配置のトーチが使われています。そのため、トーチの寿命が短くなるうえに、マトリックスに対するシステムの対応力も制限されます。また、ラディアルビューとアキシャルビューを順次測定する必要があり、1 サンプルあたり最大 4 回の測定が求められることから、スピードという点で妥協が必要になります。

Agilent 5100 シンクロナス・バーティカル・デュアルビュー (SVDV) ICP-OES

図 1. Agilent 5100 シンクロナス・バーティカル・デュアルビュー (SVDV) ICP-OES

サンプルスループットの向上とガス消費量の削減

ダイクロイックスペクトルコンバイナ技術 (DSC) を備えた革新的な Agilent 5100 シンクロナス・バーティカル・デュアルビュー (SVDV) ICP-OES は、全波長範囲のアキシャル光とラディアル光を 1 回の測定に統合することにより、そうした従来の欠点を解消します (図 1)。高速 VistaChip II CCD 検出器および革新的な SVS 2+ スイッチングバルブの組み合わせにより、ICP-OES で最高のサンプルスループットと、1 サンプルあたり最少のガス消費量が実現しています。アキシャルビューおよび冷却コーンインタフェース (CCI) を備えた垂直トーチといったその他の技術も、総塩濃度 (TDS) の高いサンプルを分析できる能力や、優れたダイナミックレンジ (LDR) に貢献しています。こうした性能により、別途サンプルを希釈したり、1 つのサンプルで複数回の測定を行ったりする必要が最小限に抑えられることで、サンプルスループットがさらに向上します。
 
 

困難なアプリケーションに対応する比類のない性能

法規制の枠組みのなかで分析を行うことが求められる多くの食品試験ラボでは、毎日多くのサンプルについて、規制対象となる幅広い元素をモニタリングする必要があります。例として、Agilent 5100 SVDV ICP-OES を用いて、2 種類の食品を分析しました。まず、中国標準メソッド GB 5413.21—2010 に従い、全脂粉乳標準物質分析のためのメソッドを開発しました。NIST 粉乳 8435 標準物質 (SRM) に含まれる微量毒性元素と主要栄養素元素を、イオン化干渉抑制剤を用いずに、1 回の分析で測定しました。検出下限は GB メソッドで求められる基準を上回り、回収率は 92~107 % の範囲内でした。高サンプルスループットが得られ、サンプル測定が迅速化したことで、ガス消費が大幅に削減されました (表 1)。また、サンプルの総塩濃度が高いにもかかわらず、垂直トーチは汚染とサンプル蓄積に対して優れた耐性を示し、安定した堅牢な分析性能が得られました。

元素 (nm)

MDL (mg/100g)

GB 指定の DL (mg/100g)

認定値 (mg/kg)

測定値 (mg/kg)

回収率 (%)

K 766.491

0.17

0.7

13630

13070

96

Ca 315.887

0.01

0.7

9220

9750

106

P 213.618

0.02

N/A

7800

7160

92

Na 589.592

0.01

1.6

3560

3530

99

S 181.792

0.11

N/A

2650

2650

100

Mg 279.078

0.01

0.2

814

749

92

Zn 202.548

0.0006

0.002

28.0

28.9

103

Sr 421.552

0.00005

N/A

4.35

4.37

101

Fe 259.940

0.001

0.003

1.8

1.9

107

Cu 327.395

0.001

0.002

0.46

0.46

100

Mo 204.598

0.003

NA

0.29

0.27

92

Mn 257.610

0.0003

0.005

0.17

0.18

103

表 1. NIST 粉乳 8435 SRM の分析における 3シグマ MDL および回収率。

別の分析では、ウシ肝臓標準物質を分析し、1 回の測定で優れたダイナミックレンジ (微量から Na および K の 500 ppm まで) が得られました。主要元素および微量元素の精度は認定値の 5~6 % 以内で、定量下限を下回る元素について 100 ppb を添加した際の添加回収率は、99~110 % の範囲内でした。

12 時間にわたる長期安定性プロット。

図 2.12 時間にわたる長期安定性プロット。(図を拡大)

12 時間にわたる長期安定性プロット。

図 2. 12 時間にわたる長期安定性プロット。

生産性の向上とコストの削減

水、廃水、固形廃棄物に含まれる汚染物質に関する環境モニタリングでは、多くの場合、 ICP-OES で 1 日に数百ものサンプルを分析する必要があります。そのため、分析性能や使いやすさを犠牲にせずに生産性を向上し、分析コストを削減することが常に求められています。2 つ目の例では、SVS 2+ スイッチングバルブシステムと SPS 3 オートサンプラを備えた Agilent 5100 SVDV ICP-OES を用いて、US 環境保護庁 (EPA) メソッド 200.7 に従ってサンプルを分析しました。1 サンプルあたりの分析時間は 58 秒で、アルゴン消費量は 1 サンプルあたり 21 L 未満でした。このスピードは従来の DV-ICP-OES装置よりも 55 % 速く、1 サンプルあたりのアルゴン消費量は約 50 % 少なくなっています。12 時間にわたって優れた長期安定性が得られ、すべての元素で回収率は ±10 % 以内、分析全体の %RSD は 1.3 % 未満でした (図 2)。

ワークフローを簡略化

直観的な Agilent ICP Expert ソフトウェアと DSC 技術を使えば、どんなユーザーでもメソッド作成を簡略化することができます。独自の Agilent DSC 技術により、アキシャルビューおよびラディアルビューの光が選択および統合されるため、史上はじめて、すべての波長を 1 回の測定で分析し、優れた精度とターンアラウンドスピードを得られるようになりました。5100 の堅牢な垂直トーチにより、高マトリックスサンプルから揮発性有機溶媒まで、分析のきわめて難しいサンプルでも、高い信頼性で測定できるようになります。

Agilent 5100 ICP-OES の詳細については、アプリケーションノート 5991-4821EN技術ビデオをご覧ください。また、オンデマンドウェビナー にご登録ください。

原子分光分析の技術革新をリードするアジレントの装置

Agilent 5100 シンクロナス・バーティカル・デュアルビュー ICP-OESは、原子分光分析の革新技術をリードするアジレントのソリューションの 1 つにすぎません。アジレントの幅広い製品ポートフォリオは、環境、食品安全性、エネルギー、化学、材料試験、半導体分析といった幅広いアプリケーション分野をカバーしています。さらに、すべてのソリューションは、比類のないサービスとサポートに支えられています。