複雑なポリマーの特性解析では、二次元高速液体クロマトグラフィー (2D HPLC) が用いられることがあります。一次元目では多くの場合、官能基、ポリマー鎖末端、ポリマー鎖組成に基づいて溶出させます。サイズや分子量に関するデータも必要な場合は、アイソクラティック条件を用いたサイズ排除クロマトグラフィー (SEC) を二次元目に適用します。どのような 2D HPLC 分析でも、二次元目はきわめて高速にする必要があります。SEC 分離の場合、1 分未満が理想的です。
図 1. Agilent PLgel MIXED-E、10 x 50 mm カラム (6 mL/min、〜0.5 mg/mL、溶離液 HPLC グレード THF、UV 検出 260 nm) を用いて分離した各種ポリスチレン標準物質。(図を拡大)
高速 SEC に適した短く内径の大きなカラム
SEC の分離能は、総ポア容積によって決まります。1 分未満の SEC 分離を実現するためには、長さ 300 mm のカラムを流量 1 mL/min で使用する従来の分離よりも短いカラムと大きな流量が必要となります。この記事では、長さ 50 mm および 100 mm のアジレント製カラムで検証しています。使用したカラムは内径が10 mmで、従来使用される 7.8 mm よりも大きくなっています。これにより、ポア容積がさらに大きくなり、高流量をが可能になっています。粒子経は 3 µm で、溶出容積も小さくないため、低デッドボリュームや高圧対応といった機能を持つ HPLC システムは必要ありません。図 1 は、Agilent PLgel MIXED-E、10 x 50 mm カラムを用いた各種ポリスチレン標準物質の分離結果を示しています。
スピードを 20 倍に向上
図 1 に示すように、このカラムでは 1 分未満の分析時間が実現しているのに対し、それよりも長いカラムでは同じ分離に 20 分かかっています。数平均分子量、重量平均分子量、z 平均分子量の算出値は、2つのカラムを直列させて20分かけて分析した結果の10 % 以内でした。低分子の合成混合物については、オリゴマーの領域で分離能の低下が観察されましたが、2D HPLCで着目する分析の領域は、低分離能が見られた分子量よりも大きいと予想しています。
表 1 は、20 分での分離および高速 SEC 分離で得られた分子量情報を示しています。
Agilent PLgel dimensions |
Mn |
Mw |
Mz |
Mz+1 |
Mn |
Mw |
Mz |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10 x 50 mm |
1.369 |
2.938 |
4.957 |
6.517 |
0.91 |
1.01 |
1.09 |
7.5 x 600 mm |
1.509 |
2.912 |
4.562 |
5.732 |
表 1. 10 x 50 mm および 7.5 x 600 mm の Agilent PLgel MIXED-E カラムで得られた分子量分布の比較。
高速分離を実現する高速高分離カラム
この例では、高効率の 3 µm 粒子を充填した短くて内径の大きなカラムにより、高速 SEC 分離が実現することを実証しています。2D HPLC による複雑なポリマーの特性解析において、十分な分離能が得られました。
この超高速分離には、Agilent 1290 Infinity 2D-LC などのHPLC システムを用いることができます。この2D-LCシステムでは、分離機構の異なる2つの分析を 1 つの分析に統合することで最高の分離能力を実現し、きわめて複雑なサンプルを分離することが可能です。またアジレントでは、 GPC/SEC カラムおよびキャリブレーション用標準物質の詳細もご確認ください。