Access Agilent 2014年7月号

ガスクロマトグラフィーの代替キャリアガス: 1、2… 3?

Jason Ashe
アジレント GC 製品マネージャ

ヘリウムキャリアガスでお悩みではありませんか?ヘリウム価格の上昇のせいで、分析あたりのコストが上昇していませんか?ヘリウムを入手できずに機器を動かせなかったせいで、顧客に分析結果を期日どおりに提供できなかったことはありませんか?そうした悩みを抱えているのは、あなただけではありません。この記事では、ヘリウムをより入手が容易なキャリアガスに切り替え、ヘリウム使用量を最大 30 分の 1 に減らす解決策をご紹介します。

高価なヘリウムキャリアガス、水素、窒素を同じ流量で使用した場合、リテンションタイムの変動はごくわずかです。

図 1. 高価なヘリウムキャリアガス、水素、窒素を同じ流量で使用した場合、リテンションタイムの変動はごくわずかです。
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高価なヘリウムキャリアガス、水素、窒素を同じ流量で使用した場合、リテンションタイムの変動はごくわずかです。

図 1.高価なヘリウムキャリアガス、水素、窒素を同じ流量で使用した場合、リテンションタイムの変動はごくわずかです。

ヘリウムはその不活性と物理的特性から、論理上、ガスクロマトグラフィー (GC) のキャリアガスとしてもっとも適した気体です。しかし、ヘリウムの価格や供給に関する問題を理由に、水素や窒素といった代替キャリアガスを導入するラボが増えています。それぞれのガスで長所や最適なアプリケーションは異なりますが、多くのメソッドでは、この 3 つのガスがいずれも効果的に機能します。Agilent 7890B GCでは、3 つのガス (ヘリウム、水素、窒素) をすべて使用することができます。アジレントの多くのアプリケーションには、各ガスでのパフォーマンスが紹介されています(例として図 1 参照)。

ヘリウムの不足

ヘリウムは不燃性、無色、無味無臭の不活性希ガスで、多くの科学プロセスや製造プロセスで利用されています。多くの産業がヘリウムに頼っているため、生産、不足、価格などに関する問題が生じています。そのため、アプリケーションにヘリウムを使う必要がある場合、様々な影響が生じる可能性があります。米国政府は、全世界の供給量の 75 % を占める量のヘリウムを備蓄しています。しかし米国政府は、そうした備蓄ヘリウムの国による管理をやめる法律を施行しました。備蓄量の大部分が今後 10 年以内に民間企業に売却されることになります。詳細については、H.R.527 – 2013 年ヘリウム管理法をご覧ください。

各キャリアガスの最大効率を示す図。

図 2. 各キャリアガスの最大効率を示す図。(図を拡大)

各キャリアガスの最大効率を示す図。

図 2. 各キャリアガスの最大効率を示す図。

窒素キャリアガスを使用した場合にも、モノグリセリドが十分に分離されています。トータルモノグリセリドで定量するので異性体をベースラインで分離する必要はありません。

図 3. 窒素キャリアガスを使用した場合にも、モノグリセリドが十分に分離されています。トータルモノグリセリドで定量するので異性体をベースラインで分離する必要はありません。(図を拡大)

窒素キャリアガスを使用した場合にも、モノグリセリドが十分に分離されています。トータルモノグリセリドで定量するので異性体をベースラインで分離する必要はありません。

図 3. 窒素キャリアガスを使用した場合にも、モノグリセリドが十分に分離されています。
トータルモノグリセリドで定量するので異性体をベースラインで分離する必要はありません。

Agilent 7890B GC – ヘリウム使用量を大幅に削減する機能を搭載

ヘリウムは依然として、特に質量分析アプリケーションでは最適なキャリアガスです。分析対象化合物との反応性が低く、線速度の範囲が広いという特性を持つことから (図 2)、GC キャリアガスとしても適しています。ヘリウムを使う場合には、Agilent 7890B GC の機能により、少ない使用量で効率的に分析を行い、ヘリウムの使用量とコストを削減することができます。アジレントでは、プログラム可能なキャリアガス切替モジュールと「スリープ/ウェイク」機能を提供しています。この機能を使えば、従来のシステムと比べて、ヘリウム使用量を最大 30 分の 1 に削減できます。

窒素キャリアガス: 最高の効率、限られた平均線速度

窒素キャリアガスでは最高の効率が得られます (図 2)。しかし、最高の効率が得られるのは、きわめて低い平均線速度の場合です。窒素ではファンディムター曲線の勾配が急になります。これは、平均線速度の小さな変化が、効率の大きな変化につながることを意味しています。平均線速度が小さくなるということは、分析時間が長くなります。つまりハイスループットのアプリケーションには適さない可能性があります。また、ピークシグナルが小さくなるため(特にGC/MS分析では)、低濃度分析にも適しません。そうした欠点はあるものの、窒素キャリアガスはアクリレート、BTEX、アルコール、非芳香族化合物、モノグリセリド (図 3)、軽質炭化水素などの分析で効率的に使用できます。

水素キャリアガスで使用するセンサー

広く使われるようになっているもう 1 つのキャリアガスが水素です。しかし、水素は反応性が高いため、使用者の多くは爆発反応に対する懸念を抱いています。水素の分析上の利点は、もっとも広い線速度範囲で最大の効率が得られることです (図 2)。そのため、分析時間を短縮したい場合に適しています。

Agilent 7890B GC では、オプションの内蔵型水素センサーを使用できます。このセンサーは、オーブン内の水素濃度が 1 % に達したら GC をシャットダウンするというものです。大気中 1 % は、水素の爆発下限界 (LEL) の 1/4 にあたります。水素を止めて GC をシャットダウンすることで、爆発の危険がある状況になるのを未然に防ぎます。アジレントでは、既存の Agilent 7890A GC を更新およびアップグレードするためのアクセサリも提供しています。

水素キャリアガスはきわめて経済的で有効な選択肢ですが、いくつかの欠点もあります。水素を使うと、一部のカラムではブリード率が高くなり、カラムの寿命が短くなることがあります。水素は反応性がきわめて高いため、ニトロアニリンやニトロフェノールといった分析対象化合物に影響を与える可能性があります。また、分析流路内で活性点を生じさせることもあります。アジレントでは、システム内での活性化のリスクを最小限に抑えるために、完全なイナートフローパスを提供しています。

もっとも適したキャリアガスは?

ヘリウムはガスクロマトグラフィーではキャリアガスとされており、これまでも多くのアプリケーションで最高のパフォーマンスが得られています。しかし、水素と窒素にもメリットがあり、検討してみる価値はあります。今後のヘリウムのコストや供給の見通しが不透明である現状では、不測の事態が起きた場合に備えて、計画を立てておく必要があります。代替キャリアガスでもメソッドに対応できることをあらかじめ確認しておけば、分析時間のロスやそれに伴う収益のロスといったリスクを小さくすることができます。

選択したキャリアガスに応じてメソッドを最適化する必要があるため、アジレントでは、キャリアガス切り替えの際に必要となる特定パラメータの変更を支援するメソッドトランスレーターを開発しました。

ヘリウム不足に伴うリスクを軽減したい方は、代替キャリアガスソリューションメソッドトランスレーターの詳細をご覧ください。また、Agilent 7890B GCプログラム可能なキャリアガス切替モジュールの詳細もご確認ください。