Access Agilent 2014年5月号

Agilent 7900 ICP-MS による 超高塩濃度マトリックスサンプルの分析を可能にするUHMI 技術

Wim Proper
Eurofins Analytico、オランダ

Ed McCurdy
アジレント ICP-MS 製品マーケティング

アジレントによる新しい誘導結合プラズマ質量分析計 (ICP-MS) 開発段階でパートナーのラボと協力して、実際の使用環境において発売予定のハードウェアやソフトウェアの「ベータテスト」を実施しています。

Agilent ICP-MS パートナーラボの 1 つが、オランダのバルネフェルトにある Eurofins Analytico です。複雑なサンプルのルーチン分析を行うこのラボで、新しい ICP-MS システムが一般発売前に徹底的にテストされています。Eurofins での新しい Agilent 7900 ICP-MS のリリース前テストでは、超高マトリックス導入 (UHMI) システムによる拡張された高マトリックス対応機能に重点が置かれ、最大 25 % NaCl までの超高塩濃度溶液の分析が行われました。

分析の精度を低下させる高塩濃度マトリックス

従来、ICP-MSのマトリックス耐性は、以下の 2 つの要因による制約を受けていました。

  • イオン化抑制に起因するシグナルの低下
  • インターフェースコーンの詰まりによる長期的ドリフト

シグナル抑制は、高マトリックス導入によってプラズマのエネルギーの多くが吸収され、分析対象物の原子をイオン化するのに必要なエネルギーが残らなくなることで生じます。イオン化しやすい元素 (Na、K など) を高濃度で含むサンプルにイオン化しにくい元素 (As、Se、Cd、Hg など) が含まれている場合は、シグナル抑制が特に問題となります。イオン化しやすい元素が遊離電子の大部分に寄与し、イオン化しにくい元素のイオン化を抑制するためです。

同様に、サンプルマトリックスを完全に分解する十分なエネルギーがプラズマにない場合、マトリックスがコーン上に凝縮 (堆積) し、インターフェースコーンの開口部が詰まることがあります。ICP-MS のマトリックス耐性は、ロバスト条件下 (低 CeO/Ce 比) でプラズマを動作させることで向上します。Agilent ICP-MS システムは、常に 1 % 以下の CeO/Ce 比で動作します。7500 および 7700 シリーズ ICP-MS、8800 ICP-QQQ 用の Agilent HMI 技術を使えば、スプレーチャンバからトーチに通過する際にサンプルエアロゾルを希釈し、マトリックスとエアロゾルのロード量を低下させることで、マトリックス耐性を総溶解固形分 (TDS)  2.5 % にまで向上させることができます。

25 % NaCl マトリックス 50 サンプルの内標準シグナル

図 1. 25 % NaCl マトリックス 50 サンプルの内標準シグナル(図を拡大)

25 % NaCl マトリックス 50 サンプルの内標準シグナル
 

図 1. 25 % NaCl マトリックス 50 サンプルの内標準シグナル

さまざまな NaCl マトリックスの添加回収率

図 2.さまざまな NaCl マトリックスの添加回収率(図を拡大)

さまざまな NaCl マトリックスの添加回収率
 

図 2. さまざまな NaCl マトリックスの添加回収率

比類のないマトリックス耐性を実現する UHMI 技術

Agilent 7900 のオプションの UHMI システム (詳細は過去の記事を参照) では、マトリックス耐性がさらに 10 倍向上し、25 % TDS までのサンプルを測定できるようになっています。UHMI は希釈技術ですが、クリーンなアルゴンガスによりサンプルエアロゾルを希釈することで、従来の液体希釈に伴うデメリット (時間、試薬のコスト、誤差や汚染の可能性、廃棄コストなど) を回避しています。この技術により、プラズマロバスト性が向上します。また、ネブライザガスと希釈ガスの流量の調整により希釈倍率が自動で校正され、再現性の高い分析が可能になります。

図 1 では、 UHMI-100 を用いて25 % NaCl 溶液を 50 回分析した際の内標準シグナルを示しています。4 時間にわたる 25 % NaCl 分析の安定性が保たれています。この未補正 ISTD シグナルの優れた安定性は、インターフェースの詰まりが生じていないことを示しています。

25 % 飽和食塩水を分析できる能力は、ICP-MS では他に類を見ないものですが、UHMI を搭載する新しい Agilent 7900 ICP-MS のもっとも顕著な性能上の特性は、さまざまなサンプルマトリックスで一貫した分析結果を得られる点にあります。図 2  は、NaCl マトリックスに微量元素を 50 ppb (As は25 ppb、Hg は1 ppb) 添加した試料を分析した結果です。マトリックスマッチングなしの標準液に対して校正されています。NaCl のマトリックスレベルが 0~ 25 % 範囲のサンプルに標準液を添加しました。添加元素の定量結果は正確で (実際の添加濃度値を左端の点で示しています)、すべてのマトリックスレベルで一貫しています。これは驚くべき結果です。1 ppb で添加した Hg でも、正確 (平均回収率 93 %) かつ安定して (8 種類の NaCl マトリックスレベルの RSD は 6.3 %) 測定されています。

Agilent 7900 ICP-MS の優れたマトリックス耐性の詳細

Agilent 7900 ICP-MS を用いた高マトリックスサンプル分析の詳細については、アジレントアプリケーションノート 5991-4257EN をダウンロードしてください。