Access Agilent 2014年2月号

Agilent イナートフローパスを用いた信頼性の高い農薬分析

Peter Heijnsdijk、Limian Zhao
アジレント GC アプリケーション

フローパスの不活性は、農薬分析の精度に大きな影響を与えます。特に、極性の高い物質や不安定な物質では、その影響は大きくなります。Agilent イナートフローパスは、ウルトライナートカラムおよびライナ、ウルトライナートゴールドシール、不活性スプリット/スプリットレス注入口で構成されています。このフローパスは、フローパス全体で優れた表面不活性を備えているため、分析対象物のレスポンスの低下やピーク形状の悪化を防ぎ、信頼性の高い農薬の定性および定量分析を可能にします。Agilent UltiMetal Plus フレキシブルメタルフェラルや Agilent キャピラリフローテクノロジー装置といったその他の不活性補用品も、複雑なマトリクスにおける農薬分析に最適です。

ここで紹介する例では、いくつかの典型的な農薬を用いて、表面不活性化されている GC フローパスとされていないフローパスを比較しています。詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-1860EN と 5991-1862EN をご覧ください。

極性の高い農薬のレスポンスとピーク形状を向上

農薬化合物の多くは、環境での蓄積を最小限に抑えるために、あえて容易に分解されるように設計されています。しかし、そうした不安定な特性のため、 GC や GC/MS による測定が困難になっています。不安定な化合物を分析する上で 分解や吸着が生じると、定量や定性の結果が不正確になることがあります。

扱いの難しい不安定な化合物の測定におけるアジレントシステムの性能を評価するために、有機リン酸エステル、有機塩素化合物、カルバメート化合物を含む、分析の難しい典型的な 26 種類の農薬化合物を分析しました。

10 ng/mL 農薬標準注入後の Agilent イナートフローパス (上) と標準フローパス (下) のクロマトグラムの比較。

図 1. 10 ng/mL 農薬標準注入後の Agilent イナートフローパス (上) と標準フローパス (下) のクロマトグラムの比較。
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10 ng/mL 農薬標準注入後の Agilent イナートフローパス (上) と標準フローパス (下) のクロマトグラムの比較。

図 1.10 ng/mL 農薬標準注入後の Agilent イナートフローパス (上) と標準フローパス (下) のクロマトグラムの比較。

図 1 では、イナートフローパス (上) および標準フローパス (下) を用いた 10 ng/mL 農薬溶液のマルチプルリアクションモニタリング (MRM) クロマトグラムを比較しています。イナートフローパスのほうが標準フローパスよりも性能が大幅に向上していることが明らかです。特に、アセフェート、オメトエート、ホサロン、デメトン-S、ピラクロストロビンといった活性点の影響を受けやすい農薬で違いが顕著となっています。これらの影響を受けやすい農薬では、分析対象物のレスポンスとピーク形状が大きく向上しています。イナートフローパスを用いた場合、アセフェートとオメトエートのピーク形状が向上し、より左右対称になっています。標準フローパスを用いた場合には、図 1 の低濃度領域で、この 2 つの分析困難な化合物が検出されていません。濃度 500 ng/mL でも、アセフェートとオメトエートのピークはずっと小さく、深刻なテーリングが見られています [1]。

活性部位を減らし、化合物の分解を防止

エンドリンと DDT は、GC 分析、特に注入口において分解しやすい化合物として知られています。GC フローパスの不活性を十分に制御しないと、活性部位が分解を引き起こし、エンドリンがエンドリンアルデヒドとエンドリンケトンに、DDT が DDE と DDD に分解されてしまいます。分解反応のほとんどは、温度の高い注入口表面で生じます。連続してサンプルを注入して測定を行うことで、GC 注入口内部の表面不活性が低下すると、これらの化合物の分解の度合いが高まります。さらに、新たな活性部位が生まれ、エンドリンや DDT の分解反応が促進されます。したがって、エンドリンと DDT の分解は、不活性化処理されたフローパス部品の効率だけでなく、複数回の注入にわたる経時的な表面不活性の安定性を測る有効な指標となります。

Agilent イナートフローパス (緑)、Agilent 標準フローパス (茶色)、他社不活性化フローパス (青) を用いた場合の 200 回注入におけるエンドリン/DDT の合計分解率。

図 2.Agilent イナートフローパス (緑)、Agilent 標準フローパス (茶色)、他社不活性化フローパス (青) を用いた場合の 200 回注入におけるエンドリン/DDT の合計分解率。(図を拡大)

Agilent イナートフローパス (緑)、Agilent 標準フローパス (茶色)、他社不活性化フローパス (青) を用いた場合の 200 回注入におけるエンドリン/DDT の合計分解率。

図 2.Agilent イナートフローパス (緑)、Agilent 標準フローパス (茶色)、
他社不活性化フローパス (青) を用いた場合の 200 回注入におけるエンドリン/DDT の合計分解率。

図 2 では、Agilent 標準フローパス、Agilent イナートフローパス、他社の不活性化コンポーネントを用いて 200 回にわたって注入 (イソオクタン中) した場合のエンドリン/DDT の分解率の合計を比較しています。Agilent イナートフローパスでは、エンドリン/DDT の分解は良好に抑制され、200 回注入後でも、分解率は合わせても15 % 以下となっています。この数値は、エンドリン/DDT 分解の許容基準を満たしています。

これらの結果から、Agilent イナートフローパスソリューションが塩素系農薬の高感度分析に適していることがわかります [2]。

不活性フローパスの実現する高感度分析

Agilent イナートフローパスは、レスポンスやピーク形状、検量線の直線性、フローパス全体の一貫性を向上させることで、分析結果の品質を大幅に高めます。ここで紹介した例は、残留農薬分析において正確で信頼性の高い結果を得るためには、フローパスの活性部位の抑制が重要であることを示しています。最高の分析結果を望むのなら、農薬分析を向上させる Agilent イナートフローパスソリューションの詳細をご覧ください。

References

  1. L. Zhao. “Evaluating Inert Flow Path Components and Entire Flow Path for GC/MS/MS Pesticide Analysis”. Agilent Application Note 5991-1860EN (2013).
  2. P. Heijnsdijk. “Endrin and DDT Breakdown Evaluation Using an Agilent Inert Flow Path Solution”. Agilent Application Note 5991-1862EN (2013).